「すみません。夏樹といいますが、今日M先生に見ていただける事になっているんですが?」

1週間後、自分の脳のCT写真をもってM総合病院にいった。
彼はは早速連絡を取ってくれて、僕の行ける範囲で神経内科の権威であるM総合病院の院長を紹介してくれた。

4階に上がって、第2待合室で待った。
人の見舞い意外に大きな病院なんて来た事がなかった。
待合室が2つもあるのに驚いてた。でも、気分はそんなに重くはなかった。

(どうせ、たいした事ないだろう。いい加減医者というのは大袈裟すぎるからな)
あれから何日か経って、気分もだいぶ落着いてきた。

『左半身不全麻痺の疑い』この難しい名前に少しビビッていただけだった。
しかも、「疑い」だもんな。

しばらく経って、スピーカーで名前を呼ばれて診察室に入っていった。
まず、問診。
一通りの事を聞くと、神経の反射テストや力比べみたいなもの等...。
ベッドに横になり、いろいろ言われた通りの行動をしてみる。

痛みからなのか、力が入らないからなのか、明らかに今迄自分の行動とは違っていた所もあった。
(やっぱり、おかしい...)

いろいろな検査を行って一番明らかにわかったことは握力検査だった。
左の握力が右の握力の半分以下だった。
素人の自分でもわかる。

(そんなはずはない。これじゃ、女の子の握力だろう!)

やはりその時も、病名は『左半身不全麻痺の疑い』だった。
これが、これから先、2年以上にわたる戦いの幕開けだとは夢にも思わなかった。

その時は、次の検査の時にX線とMRIを取る予約をして帰った。
(もしかしたら...)

嫌な予感が帰りの電車の中でずっと頭をよぎっていた。
と同時に、あの医師なら信用できるとも思った。