静かだなと思って見ると


さっきまで歌を歌っていたミナが


ウトウトしていた。


「あれ…?ミナ眠いの?」


「う…ん…」


「シートを倒して寝かせてやれ」


シュガヒョンに言われたとおり


シートを倒してブランケットをかけると


すぅすぅ寝息が聞こえた。


「昨夜あんまり眠れなかったのかな」


「いや…疲れてきてるのかもな」


「疲れてる?」


「元々大きな体を小さくしてるんだ。相当エネルギーを使ったはずなんだよ。それにジミナのことも受け入れてるようだし、少しずつミナが眠りにつこうとしてるんじゃないか」


穏やかな顔で眠っているミナ。


本当に残された時間はわずかなんだ。


どれだけミナを幸せにしてあげられるのか。


「時間が足りない」


「何の?」


「ミナをもっと…」


「充分に満たされたんじゃないか?」


「そうかな」


「ジミナ以上の人見知りで、周りの顔色ばかり見て何も言えなかったのが、だいぶ子供らしくなったよ。言いたいことを言えてるし、特におまえには甘えてるだろ?」


「うん…」


「特別なことは必要ないんだよ。おまえと一緒にいるとミナは幸せそうだ。だからただ寄り添ってやればいい。ミナの感情はジミナにも影響あるかもしれないけど、それがいい感情なら悪いことにはならないだろうよ」


僕とジミナにとって


一緒にいることは当たり前のことだった。


でもミナと一緒にいることは


僕にとって特別なこと。


だからこそ今日一日を


もっとスペシャルにしたい。


「おまえ、何かしようとしてるのか?」


「うん」


「もしかして、それで夜中忙しくしてた?」


「うん」


「ふーん。まぁ聞かないよ。サプライズなんだろ?ミナに」


「うん」


「そうか…楽しみにしてるよ」


ミナは喜んでくれるかな。


また泣いちゃうかな。


でもこのサプライズは


子供のミナには


一番必要なことだと思ったから。


ミナの楽しかったことが


一つ増えてくれたら


それでいい。


元に戻ったジミナが


例え忘れてしまっていても


幸せだったことは


これから先に


またつらいことがあっても


きっと立ち上がる力になる。




「それにしても寝顔が赤ちゃんだなぁ」


シュガヒョンが優しい顔で笑いながら


ミナを携帯で撮っていた。


仕事以外で撮っているのは


すごく珍しい。


僕がじっと見ていたら


「何だ?悩みでもあるのか?」


「ないよ」


「オレにとっちゃ、こいつもおまえも赤ちゃんだぞ。抱っこしてやろうか?」


「ふふっ…僕はもう赤ちゃんじゃないよ。僕を抱っこしたら、シュガヒョン潰れちゃうよ」


ちょっと考え事をしていただけなのに


こうしてふざけて楽しくしてくれる。


僕がいつももらってきた思いやり。


うれしくてくすぐったくなるから


思わず笑顔になっちゃうんだ。




みんなが僕を助けてくれていたように


今度はジミナのわずかなサインも


絶対に見逃さない。


僕はもう間違いたくない。


“ホームアローン”を見て


涙を流していたジミナが頭から離れない。


あの時こうしていればなんて後悔は


もうしたくない。


だからいま僕に出来ることなら


全力でやるだけだ。