それからはもう大変だった。


僕は動揺してしまって何も出来ず

テヒョニヒョンは

ヒョンたちを呼んでくると言って

走って行った。


ホビヒョンとジンヒョンは

ミナのそばに膝をついて

ミナが抱え込んでいる

スケッチブックと色鉛筆を離そうとしてた。


「…やだ…」


ミナはぼんやりしたまま

それをしっかりと抱えていて

なかなか離そうとしない。


聞き分けのないその様子は

明らかにこれまでのミナと違っていて


「ミナ、これ離そう」


「…やだ…」


「ミナどこか痛いの?」


首を横に振っている。


「…やだぁ…」


もしかしたら熱のせいで

何かを持っていないと不安なのかも


「ミナを抱っこしたいな」


「だからテーブルに置こうね?」


ようやくそれを離したけど

今度は泣き叫ぶように


「うーちゃんいないよっ…うーちゃんっ」


「ミナっ、ちゃんと持ってきたよっ…ほらっ」


ミナにぬいぐるみを持たせると

安心したみたいに胸に抱えた。


そしてぼんやりと涙目で僕を見ながら

小さな声で


「…グゥ……グゥ……」


「ジョングガ、抱っこしてあげて」


ミナを抱き抱えると

確かに体が熱かった。


具合の悪い子供を見るのは初めてで

しかもそれが…ミナだ。


自分が子供の頃は

病気になると

オンマが甘やかしてくれたから

なにも不安に思ったことなんてなかった。


僕を呼び続けるミナの不安定な様子を見ると

どれだけ不安なんだろう。


どうしてこんなにも

つらい思いをさせてしまうんだろう。


もしも代われるなら

僕が代わってあげられたらいいのに。


「ミナ…寒くない?」


うんっていうように首を動かして

ダルいのかクタっと体を預けてきた。


ジンヒョンが毛布を持ってきて

僕ごと包んでいる。


「…グゥ……グゥ……」


「ごめんねミナ…ごめん…ずっとそばにいるからね…眠かったら寝ていいよ…ミナ」


そう言うと

すぐにうとうと…と目を閉じた。


「ジョングガ…ミナは大丈夫だよ。おまえが悪い訳じゃないんだ…泣くなよ」


ミナを抱っこしながら

涙が滲んでいた僕に

ジンヒョンが小さな声で言って

頭を撫でてくれた。


そうやって甘やかされている自分が

ひどく情けなかった。


「ジンヒョン…僕はミナの保護者失格だ」


「何言ってるんだマンネが。僕たちは何年おまえを育ててきたと思ってるんだよ。昨日今日で合格も失格もあるわけないさ」


「でも…」


「ミナは誰を呼んでた?おまえだろ?自信持って…しっかりしないとね」


そうだ

ミナはこんな僕を頼ってくれたんだ。


僕が弱音を吐いていてどうする。


ミナが不安にならないように

いつでも無条件で受け入れて

甘やかしてあげる。


僕たちが家族でいたらいいんだ。




そのまましばらく様子を見ながら

ミナを抱っこして

完全に寝入った様子になってから

ソファーにそっと寝かせた。


「大丈夫だと思うよ。熱はそんなに高くないし、疲れたのかな…。ジミナもよく熱を出したりするけど、薬を飲んで寝るとすぐに治るからね…。なんとなく熱があるときのジミナに似てたんだよ」


ホビヒョンがジミナのルームメートで

本当に良かった。


でも、また…僕の知らないジミナだ。


あんなに一緒にいても

大切な人の全てを知ることは出来ない。


きっとジミナは自分の弱い部分を

見せないように

知られないように

うまく隠している。


だから

どこかで何かを間違ってしまって

こうなってしまったのかな。