前回からの続きです!
「よっと。そろそろ帰ろうかな」
チラシをカバンにたたんでおさめ、席を立った。
ガラ、とドアが開く音がきこえ、ドアのほうへと顔を向ける
ドアから顔をのぞかせたのは日向だった。
「あ、日向、部活は?」
とうの昔に体育館に向かったはずの日向が顔を出した。
「あぁ、いや・・・いよいよ文化祭二週間前だよな」
なぜか照れくさそうな顔をする日向
「う、うんそうだけど・・」
「頑張れよ!・・・・その、歌・・・応援してるからよ」
にかっと笑う日向
「もしかして、それ言いにきたの?」
とからかうように微笑む私
「・・・う、うるせえな!
これから部活で、お前と放課後話せる機会もなくなるし
・・・お前のことだからどうせまだ教室残ってるかなと思ってきてみたら
案の定・・・・」
顔を真っ赤にする日向。
これは・・夕焼けのせいで赤くみえるだけなのかな。
「まったく。人を放課後いつも残ってるさみしいやつ見たいに言わないでくれる?」
私も照れ隠しなのか、そっぽを向いてしまった
「そ、それだけだから・・んじゃあな!」
「ちょ・・!」
まるで逃げるかのように教室を出ていき、ぱたぱたと廊下を走る音が鳴り響いた。
「なんだったのよ・・・・」
そうだよね・・・・
歌・・・頑張らなきゃ・・・
皆に聞いてもらうんだから・・・
肩にかけたカバンをふたたび机の横にかけ、私はスマホに保存していた
文化祭で披露する曲をイヤホンで流した。
放課後、誰もいないし、少しだけ歌の練習するかな。
自分の椅子に腰かけ、私は教室の中でひとり、歌の練習をはじめた。
「わ、わあ・・・」
時間が知らぬ間にずいぶん経ってしまったのか、あっという間に外は真っ暗になっていた。
「まずい・・・・」
恐る恐るラインを開くと、影山くんからラインがきていた。
”教室の電気がついてるぞ”
”まだいんのか”
「ば、ばれてる・・・・・・」
バレー部はまだ練習するだろうし、はやいとこ帰ろう・・・・・
私は教室の電気を消し、鍵を閉め、鍵を返却しに職員室へと向かった。
このタイミングで影山くんにあったら、早く帰れって言っただろ。とか説教くらいそう!
さっさと帰ろ。。
職員室へ向かい、鍵を返した後、そのまままっすぐ校門へと向かった。
その時、角からぬっと人が出てくる
「わっ?!」
その人影とぶつかり、驚いて声をあげる
「おい、どこ行く気だ」
立ちはだかるその人の声を聴いて私は誰か察する
「か、影山くん・・」
「いつまで教室に残ってんだ
早く帰れっていつも言ってるだろ」
凄い怒ってる・・・・・
「そ、そんなの影山くんに関係ないでしょ」
私は影山くんのすぐ横を通り過ぎようとする
その時、がっと腕をつかまれ、足が止まる
「な、なによ」
「俺が送る。部活が終わるまで待ってろ」
「はああ?!」
無表情で当たり前のことかのように言う影山くんに私は声を荒げる
「ごめんなさいね私ひとりでも帰れるので。」
つんけんとした態度で私はまたあゆみを進めようとする
「ぜんっぜんうごかない・・・」
さすが男の子。全然ちからでは勝てない
「分かったらおとなしくついてこい」
ぐい、と手を引っ張られ、どこかに歩いていく影山くん
「ちょ、ちょっとまってよ!
ほんとに大丈夫だから・・・!」
「大丈夫な保証なんてどこにもないだろ」
どんどんと歩くスピードが速まる影山くん
「このまま体育館に連れてって練習が終わるまでお前は待ってろ」
「迷惑になるし、恥ずかしいし、いいって!!」
「?・・・なんで迷惑になる」
きょとん、とした顔をする影山くん
「大体、なんでそこまでして送ろうとするのよ
こんな強引なやり方・・・・・
正直・・・・迷惑なのよっ・・・!」
はっ・・・
言った後私は、なんてこと言ってしまったんだろうと後悔した
すぐに影山くんの顔のほうへと視線を向けた
少しだけ悲しそうに見えたような気もした
すると、影山くんの手の握る力が弱まり、私の腕は自由を取り戻した
「ご、ごめ・・・っ」
すぐに謝ろうとしたけど
「そうか・・・・迷惑・・・だったか。
そうだよな・・・・悪かった」
影山くんは私から背を向け、そのまま歩みを進めた。
私はその場に一人残された
私・・・・・・最低だ・・・・・・・
そのまま、二週間が過ぎ、私と影山くんは一言も会話をすることなく文化祭当日を迎えることとなった。
私のクラスは、タピオカカフェという出し物で、女子はメイド服、男子は執事の服を着て接客することになっている
私はキッチン担当だったので、ジャージにクラスTシャツだ
休憩に入り、休憩室でタピオカを飲んでいた。
すると、執事の恰好をした日向もやってきた
「おつかれ。休憩?」
「おう!っはぁー疲れたー」
日向はその場にあった椅子にどすん、と腰を落とす
「ホールは大変そうねー
私はタピオカ作ってるだけでらくちん!」
他人事かのように私はタピオカを味わう
「ずりぃーなぁキッチンばっかりよー」
「いいじゃん!日向ホール向いてる!」
「そうかぁ?
でも俺は・・・正直、お前のメイド服も見てみたかったなぁーーなんて・・・」
「はぁ?」
私が不機嫌そうにそういうと
「な、なんでもない!はは!
俺じゃあちょっとホールいってくるわ!」
「はやくいってこーい」
私がやる気なさげに手をふると
「あ、今日、歌楽しみにしてるからな!
絶対見に行くからな!!」
満面の笑みで日向はそう言って、休憩室を飛び出していった。
「。。。ありがとう」
誰もいない休憩室でそうつぶやいた。
影山くんは・・・・聞きに来てくれるわけ、ないよなあ
「はは・・・っ」
自分にあきれてつい笑いがこぼれる
なんであんなこと言っちゃったんだろう
なんで私ってこんなにバカなんだろう
涙で視界が曇るのが分かる。
二週間前のラインを見返す。
影山くんの
”教室の電気がついてるぞ”
”まだいんのか”
というメッセージに既読をつけたあと、私は怖くて返信できなかった。
私たちの会話はここで止まっていた。
最悪だ・・・・・
ようやく、好きって気づけたのに・・・・
スマホ画面にぽたぽたと雫が零れ落ちた。
本番までにはあと一時間もある。
練習と準備でもしに行こうかな・・・
重たい腰をあげたとき、アナウンスが鳴り響く
「軽音部の一年、ボーカル担当____
今すぐ校庭の舞台袖に来るように
繰り返します_____」
「へ?!
わ、私・・・だよね・・・
急にどうしたんだろ・・」
とにかく急ごう
全速力で校庭へと向かう
舞台袖に軽音部の先輩が見えた
「っはぁ・・はあ・・・・お、おくれました・・・・」
膝に手をつき呼吸を整える
「あっ来た来た!ごめんね急に呼び出しちゃって~!」
先輩が慌てた様子でこちらに声をかける
「そ、その、どうしたんですか・・・急に」
「それが・・・私たちより前に出し物やってたグループが予定より早く終わっちゃって
今実行委員がつないでくれてるんだけど、15分が限界だって言われて」
「うそでしょ・・・・・」
「あと10分もないから・・・その、急いで本番に向けて準備するよっ」
「分かりまし・・・た!!」
全然心の準備もできてないし、心臓もばくばくだし、合わせも今日は一回もしてない・・・
でも仕方ない・・・やるしか・・・・
大きく深呼吸する。
先輩たちがチューニングしてる間に私は歌詞にもう一度目を通す
「それでは続いては・・・軽音部のみなさんです!!」
実行委員のその声とともに幕が上がる
歓声があがる。
注目・・・・されてる・・・・
手が震え、足も震える
先輩が軽音部の挨拶をしているうちに落ち着くんだ・・・
握っていた歌詞カードをポケットにしまう
胸に手を当て、何度も、何度も、深呼吸をする。
「えー・・それでは、ボーカルにマイクを返します」
先輩にマイクを渡される。
「えっと・・・・・その・・・・
この高校に入学してはじめての文化祭で歌うことができて
本当に光栄です・・・・
本番まで、ほんとに大変なことがいろいろあって・・・・」
私は観客席を見回した。
「へっ・・・・・」
マイクを通して変な声がでる
少しざわつく観客席
うそ・・・・うそでしょ・・・・・・
影山くんがいた。
観客席で
まっすぐこちらを見ている影山くん
その横でぴょこぴょこと飛び跳ねているオレンジの髪の毛は日向・・・かな
きて・・・・くれたんだ・・・・
影山くんの表情は、怒っているのか、それとも緊張してるのか、なんなのか
それでもうれしくて涙があふれそうになる
「っ・・・す、すみません」
急いで涙をぬぐう
「それで・・その・・・今から歌う曲は、とある女の子が片思いをしている曲です
片思いをしている男の子は少し鈍感で、まったく気持ちに気付いてくれない
そんなもどかしい思いを綴った曲です」
そして私は視線を影山君だけに向ける
「私には・・・・・好きな人がいます
彼は・・・素っ気ないけど、不器用なやさしさがあって、鈍感で・・・
そんな彼が私は・・・・・・す、すきです・・・・・
この歌が、鈍感な彼に届くように精一杯心をこめて歌います。
聴いてください______」
あっという間だった
本当にあっという間に曲は終わっていた。
観客席に深くお辞儀をした後に顔をあげると、もうそこには影山くんはいなくなっていた。
届かなかった__かな。
「よかったよ~~~!すごい良かった!」
先輩にばんばんと背中をたたかれる
「あ、ありがとうございます・・・」
「来年の軽音部もあなたに任せたよ」
先輩はそう微笑んだ。
「あー喉乾いたー」
先輩たちはぱたぱたと顔の横で手を仰ぎながら、舞台袖から去っていった。
ふと横に視線を戻すと、実行委員の数名が軽音部の機器の片づけをしていた。
「あ、私手伝いますよ」
実行委員の一人の女の子に声をかける。
どうせ、戻ったって、キッチンで重労働するだけだし、失恋したし・・・・
はは・・・
「あ、ありがとうございます!!
でも、大丈夫ですよ!
歌、素敵でした」
そう優しく笑うと、その子は機器を抱えて立ち去った。
「あ・・・ちょ・・・」
暇になっちゃったよ・・・・
できれば今は物事を考えたくないのに・・・・
「おい、何してる」
すぐ後ろで声が響く
「はっ・・・!?」
振り向くと大きな影
ずっと、聞きたかった声が響く。
「か、げやまくん・・・・・」
「ちょっと来い」
また、あの日のように腕を強引に引っ張られる
「ちょ・・まっ・・・」
どうして?なんで?
私のこと振ったんじゃ・・・・・
ていうか・・・うれしい・・・・
うれしすぎて顔が熱いし、恥ずかしいし、心臓うるさいし・・・
私の腕に触れてる影山くんの手のひらの熱が熱い・・・・
「あっわ、わりぃ・・・
痛い、よな」
ぱっと手を離す影山くん
「だ、だいじょうぶ・・・」
するとすぐに私の手を握る影山くん
「えっ・・・なっ・・!?」
わざとなのか、無意識なのか、私にはわからない
恥ずかしくて目がぐらぐらする
「これなら痛くないだろ」
とやさしく微笑む影山くん
そのまま、私にあわせた歩幅で影山くんは歩き始めた
「ど、どこにいくの」
「どこでもいいだろ。とにかく来い」
「この前は・・・ひどいこと言ってごめん・・・
ごめんね・・・・・」
「いい。別に気にしてない」
気が付けば、ひとけのない廊下に出てきていた。
「ど、どこまでいくのよ・・・」
「あ、あぁ・・・ここでいいか」
少しきょろきょろしたあと影山くんは立ち止まり、私と向かい合って立つ
「な、なに?」
「歌、よかったぜ」
ニッと笑う影山くん
「ありがとう・・・聴きに来てくれないと思ってたから
驚いちゃった・・・」
私は下を向く
「あぁ?何で聴きにいかないと思ってたんだよ」
不満そうな声がきこえる
「だ、だって・・・ひどいこと言っちゃったし」
「だから何だよ。お前の歌、俺はずっと楽しみに・・・・・・」
言いかけたところで影山くんは顔を真っ赤にする
「ちょっと・・・自分で言って恥ずかしくなんないでよ」
私は横を向く
多分私も顔真っ赤なんだろうな・・・・
「そんなことより、曲が始まる前にお前が言ってた
好きな人って・・・・」
わ、忘れてた・・・・っそんな恥ずかしいこと言ったっけ私・・・やばいやばい・・
「誰のことだ?」
うそでしょ・・・
ありえないことが目の前でおきて私は驚いて声もでない
「え・・・・・っ誰のことって・・・・」
あんたの目を見ながら思いっきり言ったでしょ!!!
バカじゃないの!?!
と心の中で怒鳴るが、なんとも気が抜けてそんな力も出ない。
「お前に好きなやつがいたとは知らなかった・・・・
それが事実なら、今こうして俺と二人でいることは
お前にとって迷惑なことなのかもしれない・・・・
だからやめようと思ったんだ。こんなこと。
お前を執拗に心配したりするのはやめようと思ったんだ。」
「影山くん・・・だから、それはっ・・・・・・」
「分かってる。お前にとっては迷惑なことだってのは・・。
でもどうしてか、お前を心配する気持ちは抑えられないし、
お前に好きなやつがいるって聞いて、俺はどうしようもない気持ちに駆られた。」
とまっすぐ私を見つめる
「えっ・・・・」
「俺はお前が、ほかのやつを好きでも・・・
俺は、お前のことが・・・好き、だ・・・・・
何よりも・・・・大切だ・・・・」
嘘・・・・・・でしょ・・・・・・
こんなうれしいことがあっていいの・・・?
「ぷっ・・・あははっ」
安心して笑いがこみ上げる
「なっ・・!俺は真剣に言って・・・」
「そうだね・・真剣なのは分かってるけど・・・・
本当に影山くんは鈍感だね」
「はぁ?俺のどこが鈍感なんだよ・・・」
「なんでわかんないかなぁー
素っ気なくて、不器用なやさしさがあって、鈍感・・・な、影山くん」
「は・・?それってお前が好きなやつじゃ・・」
私は影山君に一歩近づいて顔を寄せる
「そうだよ。私の好きな人は、影山くん。あなただよ」
「は・・?」
驚いて固まる影山くん
「これで分かってくれたかな?
私、影山くんのことが好き・・・だよ」
また一歩身を引いて影山くんの目を見つめる
「はぁ・・?そんなの言ってくんねえとわかんねえだろバカ」
「だから散々歌う前に言ったじゃ・・・」
言いかけたとき、腕を引き寄せられ影山くんの腕の中へと入る
強い力で抱きしめられる
「・・・・・・まじで、不安だったんだぞ・・・
振られる覚悟もしてたんだよこっちは・・・・」
それは影山くんが鈍感なせいじゃん・・・
と思いながらも私もうでを影山くんの腰にまわした。
「私たち、今日から恋人・・・・でいい、よね?」
「ああ。
お前は俺のものだからな」
「ばか、恥ずかしいからやめて」
「あ、あぁ悪い」
そうして、私たちカップルは、文化祭で公開告白した女と、告白された男として
しばらく学校中で話題になったとさ