あんにん出演ドラマの原作 | シシュフォスの休息

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『64(ロクヨン)』 横山秀夫 著 (文春文庫)

4月18日からドラマ放送も始まる横山秀夫の話題作が文庫化されたので、読みました。


主人公・三上義信は、D県警の広報官。しかし、長年刑事畑を歩んできた経歴から広報室に本籍があるとは感じていない。刑事部に戻る間の短い期間と思いながらも広報室改革を試みた三上だったが、失踪した娘の捜索を警察組織に委ねたことをを境に上司の意向に従順にならざるを得なくなり記者と対立するようになる。

そんな折、”64”への警察庁長官視察が決定する。”64”―昭和64年に起きた未解決の「翔子ちゃん誘拐殺人事件」を指す符牒である。

被害者遺族からの訪問拒否、記者たちの長官取材のボイコット、長官視察の真相をめぐる刑事部と警務部の全面戦争・・・。三上に次々に困難が襲いかかる。

そして、長官視察の前日、”64”をなぞった第2の誘拐事件が発生する―――。



横山秀夫、7年ぶりの長篇ということですがさすがに読みごたえがありました。刑事部からも警務部からも完全に身内とは思われていない三上の組織内での葛藤が描かれる前半は、面白いながらも少し重たい感じなのですが、第2の誘拐事件が発生してからは、怒涛の展開。食事の時間を惜しんでページを繰りました。そのエピソードまで伏線だったのかと圧倒的な構成力に脱帽。ドラマも映画も期待できそう。


ただ、思わせぶりに登場する過去作の主人公・二渡の役回りが予想したほどには重要ではなく、これなら新しい登場人物でよかったかな。



ところで、ドラマ『64』には、入山杏奈ちゃんの出演が発表されているわけですが、主人公・三上の娘あゆみ役とのこと。

原作の主要登場人物に若い女性は、2人しかいないので、ある程度は予想していたこととはいえ、それでも驚きがあります。


というのも、あゆみは刑事らしい強面の父親似の顔の醜さにコンプレックスを感じていて(醜形恐怖・身体醜形障害と診断される)、整形を父親に頭ごなしに反対されたことをきっかけに家出するという風に描かれているからです。


そんな、人物を「美少女」の誉れ高きあんにんが演じるとは!


ただ、少し翳のある人物を演じるというのは、あんにんが今後女優として進むためには、避けて通れないところでしょうから、女優としての飛躍のきっかけになるよう期待しましょう。



64(ロクヨン) 上 (文春文庫)/横山 秀夫