川場フィッシングプラザ (群馬県) | 小久保領子 読み物ブログ

川場フィッシングプラザ (群馬県)

「カワバ」の見城社長。

「川場フィッシングプラザ」代表取締役 見城光男


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今や、ルアー&フライフィッシングが楽しめる管理釣り場は、全国で150件を超す数が存在していると言われている。そんな中でも、屈指の人気を誇る釣り場が群馬県にある。土日はもちろんのこと、平日でも「今日は祝日か?」なんて、思わず錯覚を起こしてしまうほどに、常に多くのアングラーで賑わっているのである。実際私も、何度か取材でお邪魔させていただいているが、その混雑ぶりに毎回びっくりぎょうてんなのだ。関東近郊では、大型のルアー&フライフィッシングが楽しめるポンドを持った釣り場は、ココが初というその釣り場とは、川場フィッシングプラザである。今回は、こちらの釣り場の見城社長にインタビューを行った。
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釣り場に到着すると、見城社長を初めとしたスタッフ皆さんが、トビキリの笑顔で迎えてくださる。ハツラツとしたスタッフ皆さんの笑顔は嬉しいもので、自然と心が弾みだす。釣り場全体にも明るい雰囲気はたち込めていて、何と言ったらいいのだろうか、釣り場全体が明るいオーラに包まれていているような活気に満ちている。釣り場全体を取り巻く、このみなぎるパワーは一体何なのだろうか? そして、人気の秘密は? 見城社長のお話を伺っていくうちに、それは次第に紐解かれてゆくことになる。

1953年生まれの見城社長は、現在54歳。群馬県の昭和村で生まれ育ち、自然が豊かな環境で育ったせいか、近くの川へ行っては、魚と触れ合っていたという。釣りも当然のように、幼いころから慣れ親しんできた一番の趣味。

結婚と同時に、砕石業の会社を立ち上げた。20歳で自分の会社を持ってしまうほどのやり手社長は、じきに経営を軌道に乗せることにも成功する。「きっと人の巡り合わせが良かったんだよね。みんなが手助けしてくれた。みんなの協力があって今がある」と語るように、従業員や旧友の協力と力添えで、会社はみるみるのうちに大成功を遂げ、約5年という短期間で、ある程度の経済的な余裕を掌握することになる。そこでふと、見城社長の脳裏に浮かんだものは、童心を夢中にさせた夢の続きであった。
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「小さい頃から、魚を飼うこととか釣りが好きだったから、初めは、こう考えたんだ。ここには、近くに川も流れてるし、宿泊施設を作って、お客さんを呼んで、渓流釣りを楽しんでもらえたら良いな、って」。

だが、宿泊施設の建造は、想像以上の予算がかかることが分かって断念。そこで思考を変換し、養魚場と餌釣りのできる池を作ることにした。これが、見城社長25歳、川場フィッシングプラザが産声を上げた時である。養魚のノウハウはもちろんゼロ。技術を学ぶため、水産試験場へ出向いての勉強に没頭し、養魚に必須な諸々をマスターした。

釣り場を作ったは良いけれど、初めからお客さんが来てきれるものだろうか。そんな甘くないハズだが。そんな私の単純な疑問に対して、見城社長は楽しげに破顔して、

「ありがたいことに、昔の仕事仲間や友人が遊びに来てくれたんだよね。やっぱり、(俺の)人間性だよ!ハハハッ!」

なんて冗談をおっしゃっていたけれど、まさにその通りだと私は思った。だって、人間性が良くなければ、周りに人が集まってくるハズがないもの。多くの良い仲間に囲まれているのは、見城社長の磊落な人間性ゆえなのである。
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お話を伺ってゆくうちに、その人となりはもとより、人気を保っているヒントが垣間見えたような気がした。それは、見城社長の探究心と向上心、そして行動力。「良いモノを作れば、自然とお客さんは来てくれる」という考えだ。当たり前のことかもしれないが、この「当たり前」が一番難しい。より良い釣り場を作っていくためには、改良が必要だろうし、増設も重要な課題としてのしかかってくる。それなりに多額の資金が必要で、大きな賭けというほかはない。簡単には踏ん切りがつかないほどの大金に、普通なら失敗を恐れてしまうところだ。しかし、見城社長はこう言う。

「失敗なんて考えたことがないよ。そうじゃなきゃ投資ができないしね。失敗ってどういうこと?俺は今まで失敗したことがないよ。投資して良い物を作れば、お客さんが付いてきてくれると信じてるしね。もし自分が思い描いたような展開になりそうもなかったら、その現状を生かせるような方向に変えていけば良いだけじゃん。そしたら、失敗はしない。思ったときが吉日で、自分の信じたことをとりあえずやってみる。釣り場に限らず、何でもそうだと思うよ」。

見城社長の豊かな発想、そして、たとえ負の方向に向かったとしても、それを跳ね除けてしまうほどのパワーとポジティブな考えに、胸を衝かれるような思いがした。それは、養魚にも及んでいる。
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「人がやらないようなことを考えて色々やってみるんだよ。昔と同じ養魚の仕方をやっていても、進歩がない。昔からのやり方が100%なのか、って言ったら分からないし、もっと良いやり方もあると思うんだよね。自分で知恵を絞って、ダメでも自分の手間を損するだけだし、その時は、自分のやったことがマッチしなかったんだな、って思えばいい。そうすれば、また次のアイデアが出てくるしね。実践してみて、成功したら、そのやり方を人にも教えてあげてさ。そうすれば、みんなが良くなるじゃん」。

決して自分だけではなく、回りの全ての人たちまでをも思う見城社長の広く優しい心と器の大きさ、そして、探究心と行動力には脱帽ものである。なるほど。釣り場を覆う明るいオーラは、常に前向きでポジティブな考えと、人柄の良さが、そのまま表れているからなのだと納得できた。
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さて。この釣り場の一番の目玉は、何と言っても“イトウ”だろう。毎日のように、それも大型のイトウが釣り上げられている釣り場は、他にないといっても過言ではない。更には、“良く釣れる”と、すこぶる評判。大物釣りも、数釣りも楽しめるとの好評価を得ているその裏には、果たしてどんな秘密が隠されているのか。
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 まずは、魚。こちらの釣り場では、買い付けている物もあるが、見城社長自らが育てた魚たちを放流している。自分のところで魚を育てている分、より多くの魚をお客さんに提供できるわけだ。

イトウに関してもそう。当初は、買い付けていたのだが、その前からニジマスやイワナ、ヤマメなどの多魚種を養殖していたことから、餌が同じなら自分で飼えると、イトウの養魚を開始したという。多い時には、それを一日30~50匹放流することもあるというから驚きである。これも、見城社長自らが養魚をしているという強みだろう。続いて、「良く釣れる」秘策について。この釣り場のルアー&フライ専用ポンドは、見城社長ご自身が重機を操作して掘ったもの。手作りポンドは、良く釣れるように、全てが計算しつくされている。上も下も、クリーンな水がきちんと循環し、魚がベストな状態で住めるような環境を作るため、深さはもちろんのこと、ポンドに入ってくる水の量を計算しつつ、生きた水の維持をしっかりと心がけている。よって、魚はポンドの中をまんべんなく回り、どのポイントでも釣れるといった仕組みなのだ。

また、その日その日のお客さんの入り具合いによって、お客さんみなさんの釣果がよくなるようにと、放流の仕方にも工夫を凝らしているという。

紹介してきたこれらの手法は、魚の性質、ポンドの中を魚がどのように回るのかなど、ポンド制作も養魚も全てをご自身の手で行っている成果であり、更には、餌釣りから、テンカラ、フライフィッシング、ルアーフィッシングまでと、あらゆる釣りに精通し、そのノウハウを研鑽熟知しておられる見城社長だからこそできる技。このように“良く釣れる”裏には、全てが計算しつくされた社長の、努力の賜物が存在しているのである。
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今後、どんな釣り場を目指してゆきたいとお考えなのか、見城社長にお聞きした。

「誰にでも来てもらって、誰でも気軽に楽しめるのがベストだよね。絶対に。お互いに教え合って、釣れるようにね。だって、釣れないとつまらないじゃん。だから、教え合ってさ、みんなが釣れるように。

また、釣り場をやっていて色んな人と出会えるのは、自分にとっても良いことだけど、それだけじゃない。色んな人と話すことができると、お客さんが今どんなことを求めているのか、っていう話も聞ける。それで、出来る限りお客さんの求めていることに近づけていきたいって思うよね。遠いことろからざわざわ来てくれるお客さんがいるんだから、その分の魅力を作っていかなきゃ」。

お客さんからの情報を聞き入れ、それに自分流をプラスして、より良い釣り場作りのために走り続ける社長の企業努力には、到底頭が上がらない。しかし、これだけでは終わらず、見城社長はこう続けた。
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「例えば、釣り場だけじゃなく、経営状態の厳しいお店は、その窮状が経営者なり従業員の顔に出てる。暗い顔になっちゃうよね。そういうふうにならないように、努力をして、笑顔でお客さんを迎えられる釣り場を作っていきたいよね。花だってさ、太陽のある方向に向いて咲いてるじゃん。日陰の花にはなりたくないだろ?ハハハッ!」。
 こんなことをサラッと言ってのけてしまう見城社長の、どこまでも前向きなパワーに圧倒された。

川場フィッシングプラザが誕生してから、約30年。新しい管理釣り場が次々と誕生している今も、絶大な人気を誇っている秘密は、もう十分にお分かりいただけたことだろう。今後も、更なる進化を遂げてゆくであろう川場フィッシングプラザ。目玉となっているイトウは引き続き、現在は、イワナにも力を入れ始めているとか。また、バリアフリーにしたいという思いから、追々設備を整えてゆきたいともいう。見城社長の企業努力は、留まるところを知らない。
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※上記の文章は、2007年7月末に発売された「Fishing Area News vol.26」に掲載されたものに、加筆したものです。

  写真=加藤康一・Freewheel Inc.

 

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