http://number.bunshun.jp/articles/-/140565/第一報を聞いてひっくり返った。
横浜が再獲得したランドルフが1試合も投げずに解雇されたニュースではない。
6月29日、ロッテのサブローと巨人工藤+金銭のトレードの件である。
報道によると、「“低迷する打線のテコ入れを目指す巨人”と“俊足の外野手を求めていたロッテ”の思惑が一致」とのことだったが、こんな理由は、明らかにうわべだけのとってつけた理由であることは誰が見たって明らか。ロッテの大ヒット商品である「ビックリマン」でいえば、“ヘッドシール”と“お守りシール+ウエハース5枚”との交換ぐらいのものであり、プロ野球チップスカードにしたって、こんな取引きは小学生だって成立しないことはわかる。
トレード相手の工藤どうこうの話ではない。
あのサブローなのである。
ロッテの生え抜きスターであり、4番打者であり、選手会長であり、ライトスタンドのファンの大声援を目の前で受け続けていた、チームの心臓ともいうべき特別な選手。
FAで出て行かれるならばまだ諦めもつくだろうが、'09年のオフには「夢」と公言していたメジャー挑戦を封印して「生涯ロッテ宣言」をした選手。それをこんな形でシーズン途中に手放してしまうとは……マリーンズファンの失意たるや、想像に難くない。
慢性的な赤字経営という難しい事情があるのは分かるのだが……。
トレード報道の後に、熱狂的なファン何人かに話を聞いたが、怒りの矛先は当然のようにフロントへ向けられていた。
「意味がわからない。あまりにも露骨すぎるファンを無視したやり方に怒りが収まらない。このままじゃ次は福浦や今江が出されるんじゃないかと不安でしょうがない」(30歳・男性)
「ショックなことは間違いないですが、球団が移転したり合併騒動になるよりはマシと考えるしかない。でもいい加減、こんなことが続くようだと、いつかファンの心が折れると思う」(32歳・女性)
「瀬戸山と石川は●●●●●●●って●ね!」(25歳・男性)
……と、一部過激な表現があったので伏せ字にさせていただいたが、ともあれ、この不可解な放出劇、球団にも斟酌すべき事情があることはわかる。
特に要因のひとつとされる長年解決されずにいた球団の赤字財政は、日本一になった昨年でさえ20億円のマイナスと言われており、球団の方針としてFAは基本引き留めず、高額年俸選手を放出せざるを得ない状況を作りだしてきていた。
ロッテは選手を外に出すのに気前が良すぎるのでは?
数え上げれば、'05年の日本一後には歴史的名遊撃手の小坂を巨人に金銭トレード、'09年には久保を阪神に、昨年はエース清水直行らを今回同様不釣り合いなトレードで横浜へと放出。この間FAでも小林雅、薮田、橋本、西岡、小林宏らがチームから離れていった。
これに加えてサブローなのだから、ハッキリ言って、気前が良すぎである。これではファンがフロントに対して不信感を抱くのも無理はない。
千葉市の財政赤字も相当なものだと噂を聞いているし、今年は球場のネーミングライツを売り「QVCマリン」となっている。震災の影響で収入面も落ちているというし、この不況が長引き口を開けば「経費節減」「経費節減」と世知辛くなった世間の冷たい風を肌身で感じる生活を鑑みれば、わからないでもない……いや、やっぱりわからない。何故ってサブローなのである。
入団当初はイチローのバッタもんと半笑いで見られていた高卒ドラ一の選手が、年月を経る度に成長を遂げ、レギュラーを掴み、つなぎの4番打者となり、日本を代表する選手となり、いまやイチローを連想する人は誰もいない、唯一無二のサブローとなった、あのロッテのサブローなのである。
移籍の処遇を間違えれば、チーム全体を左右する大事にも!?
全盛期より多少力が衰えていることも、高額年俸がネックになっていることもわかる。今季は5月4日に骨折して二軍落ちしていたことも、大松、清田、岡田に加え、ルーキーの伊志嶺が台頭してきたことで、若返りの契機になったこともわかるが、功労者には功労者なりの別れ方があるってもんだ。
何も永遠にスタメンレギュラーで使えというわけじゃない。
移籍というものは、むしろ当該選手の出場機会を増やすこともあり、その移籍市場が活性化することは選手間の競争意識を煽り、球界全体の新陳代謝を活性化したりと、推奨されるべきことであるとも思う。
しかし、日本のプロ野球界は、メジャーやサッカーよりも、移籍に対してより閉鎖的で土着的な文化が強く存在する。特に新人の頃から成長を見続けてきた「生え抜き」に対するファンの思いは特別であり、過ごした年月が長ければ長いほど、思いは積み重なって行くのだから、その処遇を間違えればチーム全体を左右する問題にも発展してしまう。
功労があった選手との別れには、ファンの納得が必要だ。
別れは辛い。
功労者と呼ばれるような愛した選手との別れ際であれば尚更だ。
そんな別れがある限り、球団側はそれ相応の気遣いをしてあげなければ、少しでも別れを納得できる要素を残してあげなければ、ファンはなかなか理解できるものじゃない。
例えば、昨年オフの楽天は、チームの精神的支柱である渡辺直人を放出し、選手・ファンに大きなダメージを与えた。
一方で日本ハムもロッテ同様優勝メンバーをポンポンと気前よく放出している感があるが、こちらは前々々回の記事で取材した日ハムファンの一人に「思い入れのある森本稀哲、高橋信二ら優勝メンバーが移籍したのはショックだったけど、うちにいてもレギュラーは難しいだろうし、それならば他球団で活躍した方がいいと思うし」なんて言わせるように、別れ際の見極めがとても上手な感じを受ける。
だが、ロッテの今回のサブローとの別れは、ヘタクソこの上なし。
トレード後に出た石川球団運営本部長のコメント、
「生え抜きというのは関係ない。チームに変化を与えていかないといけない」
これは、たとえ正論だとしても、360%ファンの神経を逆撫でる。
「ホントに憎たらしい。サブローじゃなくてフロントが退団してほしい」(28歳・女性)
「生え抜きなんていらないって言ってるようでは、今後マリーンズに入団してくれる有望選手もいなくなるんじゃないですか?」(30歳・男性)
「和」になったり「ゴタゴタ」になったり……。
ロッテはホントに不思議なチームだ。
昔からフロントとのゴタゴタがずっとあるくせに、これがまとまったときは'05年、'10年と、奇跡的な力で日本一になっている。
一昨年、バレンタイン解任問題でゴタゴタかと思えば、昨年、チームは現場・フロント・ファンが三位一体となった「和」の力で日本一。そして「和2011」を掲げた今年はまたゴタゴタ。「ロッテ倒すにゃ刃物はいらぬ。フロント暴言すればいい」てな感じだ。
団結した時のマリーンズは本当に強い。そして、他球団のファンすらも羨ましく思うほどの心に響く劇的な野球をやってくれる。
フロントにも事情はあるだろうが、ただただもどかしい。
昨年、激闘のCS、日本シリーズを制した後に、監督だけでなく、オーナーや球団社長が胴上げされ、選手たちがスタンド前で肩を組み、ファンと共に凱歌をあげたシーンは、本当に感動的だった。
なのに、あれから半年でフロントはストッパーの小林宏、1番の西岡、そして4番のサブローまでも放出するなど、どうも信用しきれない軽率な振る舞いをしてしまう。
7月5日、多くのファンの空虚な気持ちを抱えたまま、サブローがいなくなって初めてのマリンでの試合が行われた。もうサブローの名が刻まれることがない4番の座には、昨年横浜に所属したカスティーヨの名が刻まれた。この助っ人がデビュー戦で4打数4安打と狂い咲きの大活躍をし、サブローのいない新しいロッテの歴史がはじまった。
フロントにもいろんな事情があるのだろうが、ただただもどかしい。今回のサブローがいなくなった悲しみを真剣に受け止めなければ、いい加減愛想を尽かすだろう。こんな不幸なことは二度と繰り返してはならない。
それともうひとつ。横浜フロントも、獲得すべきはランドルフじゃなくてカスティーヨだった。こんなことも二度と繰り返してはならない。