真夜中 | 水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

「もう・・・」

 

抱いている腕は緩み、こぼれた声は疲れを食んだように気だるげに響いた

 

やれやれもう・・・

 

やんわりと向けてきた目は、まだ浮遊したままで。

 

 

私をそこまで焚きつけるから

そう思いながら、さっきの苦し紛れの雅治の顔をにんまり思い出す。

 

 

雅治の頬にふれ

ゆっくりと見つめ合えば

熱が冷め、さっきより随分と優しくなった目が私を包んだ

 

まだその目にドキドキする

たぶん、これは死んでも変わらないだろうけど

 

 

 

そっと私から唇を合わせれば

それもまた、嵐の抜けた静けさで

 

ゆっくりと身を任せた

くるりと巻きつく腕は優しく

 

このまま少し眠るはず、で

仰ぎ見て、目を閉じる

 

勝った・・・いや勝ち負けじゃないけど

 

 

 

 

「ん・・・え?んんっ?」

 

 

 

賢者タイムで眠たいはずの手は、するりと私の中に滑り込み、さっきの名残がまだ残る場所をなぞり始めた

 

 

「んっ!!」

 

「うん?」

 

「何・・で」

 

「何が?触っちゃいけない?ここに」

 

「え、だって」

 

「sanaはまだ欲しい・・・ここはそう言ってるけど」

 

 

「違・・んんっっ!!違う、待ってっ」

 

 

 

種火が残ったままに熱を帯びていた身体は

息を吹きかければすぐに燃え上がる 

 

 

 

攻守が変わり

さっきの私の充足をここから一気にひっくり返されるのは

もう明らかで

身体を引こうとした私の動きは、足も手もすでに封じられている

 

 

 

「終わった後は賢者タイムって、言うじゃない」

 

「無いよ、そんなの」

 

「えっ!」

 

「しちゃいけない?sanaが満足するまで。満足させられるかどうかわからないけどね」

 

 

「もう!ちょっとダメ、待っ・・・!!」

 

 

 

私が満足するまで

 

じゃない

私が動けなくなるまで、

まだ残る痙攣を引きずり戻した

 

さらに何回も来る痙攣を、抱え込んで止めてはまた揺らし

やがてぐったりと力が入らなくさせて

 

触れられなくても身体が反り返り

思いだしの痙攣を起こすまで

 

それから

その手に、何度果てたか

気がつけば、眠り込んだこともわからないほどに堕ちて

 

 

目が覚めたのは真夜中をとっくにすぎた時間

 

 

 

 

傍らには

私に腕枕をしたまま、透き通るように眠る雅治がいた

 

 

 

 

 

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