「二次会は側にいないようにしますから 」
「どうして?」
「あんまり他の人を刺激したくありません」
そんな話をしていた。
仕事で関わる人が増えてくると私を理解してくれる人も増えてくる。事務局長が、彼の言うところの「仕事のできない役職持ち」と切り捨てる、いわゆる「長」のつく人たちもそれぞれの懐に入れば部署ならではの視点や考え方を教えてくれた。理解出来るできないは、現場で一緒に患者さんを介して動くからだと事務局長には言わないこともあった。
「婦長さーん」と事務局長とは違うところで支えて貰える。裏での相互協力がしやすい状況を意図的に作ることの大事さもまた学んだ。
・・・ならば自分の部署も。
なかなかそれは難しくて一対一の険悪度合いはさらに深まるばかりだったけど。
でも、それよりしんどかったのは事務局長にな人たちの扱いだった。
フロッピーディスクのデータを書き換えられたりとか(詰めが甘いからパソコンの履歴で解るんだけど)白衣が切り刻まれて栄養科の残飯箱に捨てられていたり靴が無くなったりと、事務局長も思わず絶句するそれらは、表向きに波風を立たせない年の功ゆえか現場を押さえることも出来ず。
絞りきれない「誰?」は疑心暗鬼にもなり、メンタルに堪えた。また最も疑う相手への評価が事務局長と食い違うことにも苛立った。事務局長は彼女から恋われていることに気づいていた。関係を進めないという大前提はあっても、突き詰めようとしない態度や発言は私の根底を揺さぶる。
「私の傍らに居ることの様々に耐えられる、その覚悟が君にありますか?」
今にして思えば
事務局長もまた、己の自己評価の低さ故に「果てしなく愛を乞うひと」であったのだろうと思う。
私を解るが故に私を確かめたくなる「これでもまだ好きでいられるのか」という無言の問いに、その時の私はまだ魔法がかかったように向かっていく、チクチクはしながらも。天秤にかけたとしたらまだまだ私の気持ちのほうが断然重いと思っていた。
二次会の会場に歩きながら向かう時だった。
少し離れて歩く私に賑やかな集団が近づく。
そのまま軽い調子で私に近寄ると笑みを浮かべ小さく囁いた
「二次会の場でアイツが隣に来るようであれば、どうしようか。出禁にでもするか」
「え!?」