山が動く | 水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

動きがあったのは2日後だった。

 

各部署の所属長や今回の流れを一緒に動かしていた若手の職員から、事務局長のもとへ、どうしてsanaちゃんが動かず上司が動いているのか、と話が入った。

 

私は一切の動きを上司にも、また水面下で事務局長にも止められていたから部署の外に出ることもできなかったし。

 

 

 

「ちょっといい?聞きたいことがあります」

 

ノックもなくいきなりドアを開けた事務局長は、私にちらっと視線を送ると上司を連れて出ていった。

 

 

 

しばらくして帰ってきた上司は、苦虫をかみつぶしたような顔で私を見ると、私の目の前でデータ全てにかかっていたパスワード(ご丁寧に全部違った)を解除していった。

 

「はいよ。これで文句ないでしょう」

 

 

「は?」

 

 

「まぁ、えらくあちこちに味方をつけたようで。事務局長から言われましたよ、この仕事は任せたほうがいいんじゃないかとね、まぁ私にも何か重要で荷の重い仕事を振るみたいな話をしてましたけど」

 

 

「どういうことですか」

 

 

「・・・人件費のこともありますからねって。事務局長が」

 

 

上司は人件費という言葉から、早計に「この部署に要らない人材はどちらか」という風に捉えたようで。

 

 

負けて勝つ、勝って負ける 自分にとっての「勝つ価値」は何か

上司はじわじわと、いろんな方向でいろんなことを私に対して始めるようになる

 

 

今から20年も前だから、セクハラもパワハラもモラハラも規制どころか言葉もない頃。

 

とりあえず始めた嫌がらせの一発目はデスクに春画やヌード絵画を飾ることだった。

通りざまにも目に入るそれらは明らかに不快で、職場にあることを到底容認できるものではなくて。

 

「私のデスクに何を飾ろうと個人の自由でしょう」

「嫌なら、見なくて済むところに行ったらいいでしょ」

 

にやにやと、私の嫌がる反応を面白がる。

 

そして部屋の蛍光灯にぶら下がる紐に、どこで見つけてきたか、真っ赤な裸体の人形をつるした。

 

「紐だけだとひっぱりにくいから。女の子だから名前を付けようか、sanaちゃんとかどう?」

 

握りしめてひっぱる。その気持ちの悪さに吐き気を覚えるほどだったけど、そのうちちぎれた。

捨てると、今度はゴミ箱から拾い上げ頭に五寸釘で穴を開け、ビニール紐を通し元通りにつるし、

 

「これならもう外れない、切れたら直さなきゃ、せっかくsanaちゃんて名前つけたのに捨てたら可哀想でしょう」

 

 

 

上司もその当時40代、だったかな。・・・なんかね爆  笑

 

40を超えた今ならば一緒に面白がるとか、人形を徹底的に切り刻んで、ろうそくでも立てて上司の机に積み上げるとか、するでしょうけど。

若い女の部下への嫌がらせ、娘もいるくせに、よくそういうことを思いつくなぁと思ったりもしますが。

 

 

いやー、あの当時の私には、徹底耐えられるモノではなく。
女子会をわざわざ探し当てて「sanaちゃんの上司です」みたいに偶然を装って現れてみたり。

嫌いどころか、もう気持ち悪くて大っ嫌いになりますわ、ねウインク

 

 

 

 

 

 


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