【空飛ぶ広報室】 有川 浩
*注意* ネタバレあり
主人公は空井大祐(そらいだいすけ)。航空自衛隊の戦闘機パイロットになり、ブルーインパルスに入るのが子どもの頃からの夢だった。
道のりは長く険しくはあったが、順調にその夢に手が届いたとき、交通事故にあった。
彼には何の落ち度のない事故だった。
歩道で信号待ちをしていたところへ、大型トラックが突っ込んできたのである。
重傷一名、軽傷八名。事故の規模から考えれば、奇跡としか言いようがない被害。
右足の骨折は手術とリハビリの結果、日常生活に支障がないほど回復したが、
戦闘機パイロットの職務を全うするには足りなかった。
パイロット資格剥奪…。降りかかった運命に呆然としたまま一年が経ち、転勤した先は、『防衛省---航空自衛隊幕僚監部広報室』だった。
この小説は空井を始めとした広報室での出来事が描かれている。
取材でやってきたテレビ局の女性は、自衛隊を毛嫌いしている様子。理解していないうえに、いちいち噛み付いてくる。
「画になるようなお勧めの題材はありますか。」 と問われ、
「戦闘機パイロットはいかがですか」 と答えると
「だって戦闘機って人殺しのための機械でしょう?」 と言われ空井はキレてしまう。
先輩につまみだされ、その後、室長へ報告に行くと、広報の基本を説かれることになる。
「自衛官やってりゃ、何でこんなこと言われなきゃならないんだと思うことはいくらでもある。
そんなことを言われるのは俺たちのせいだ。
広報は自衛隊を理解してもらうために存在している。」
わたしたちの知らないところでの自衛官の仕事を、知ることができます。
この本は最初、2011年の夏に出る予定でしたが、東日本大震災が起き、そのことに触れずに出版は出来ないと、予定を一年遅らせて、『あの日の松島』が加えられています。
自衛隊の取材を積み重ねて、これまでにも何冊もの作品を生み出している有川さんの思いが、流れている作品だと思いました。
