11月29日と12月4日、Theater Mixaで上演された「放課後戦記2022」に行ってきました。


公演期間は11月29日~12月4日、「Team Pink 」「Team Blue」の2チームダブルキャストでの上演でしたが、田辺奈菜美ちゃんがいるTeam Pinkの初日と千秋楽の2公演を観劇しました。
隠された設定の核心部分を書かずに感想やレポを書くのは難しいので、以下、完全にネタバレしています。千秋楽は終わりましたが、再演の可能性もある演劇のようなので、今後、見る予定のある方は見た後でお読みいただければ幸いです。
まずは、公式ページ掲載のあらすじ等を載せておきます。
----------
企画・制作;(株)TUFF STUFF
原案/オクショウ 脚本/桃原秀寿 潤色・演出/奥村直義(BQMAP)

見慣れない空間・・・ 知らない壁・・・
檻みたいな部屋には・・・ 血の様な・・・
赤い夕陽が差し込んでいた・・・

その狭い世界の中心には・・・

閉じ込められた少女の名は・・・・ ”門脇瀬名”

その名前すらも・・・ 少女は身に覚えがなかった・・・
少女は・・・ 記憶を失っていた・・・

檻の外は・・・ 非日常な世界・・・
殺し合い・・・ 鉄の匂い・・・ 誰も信じられなかった・・・

彼女が信じられるのは・・・
その部屋から救った・・・ ”護華養子”だけ・・・

部屋の入り口には・・・
擦れた文字で・・・ 「ヒトゴロ・・・ シ・・・ ノブ」

そう書かれているように見えた

高校の部活動で、全ての部活がガチで殺し合いをしたら 最後まで生き残るのはどこの部活か?? 放課後戦記は2016年10月に初演を迎え、2017年に再演、2018年に映画化され全国ロードショーされ、2020年再々演、2021年にはスピンオフ舞台が上演された市川美織主演の人気舞台です。2022年新たなキャストとともに蘇ります。

生徒会の指示によって、女生徒たちが学校の中に閉じ込められ、「1つのクラブだけが生き残ることができる」というルールのもと、クラブ対抗で殺し合うという設定で物語が進行します。生き残るために積極的に他の生徒を襲撃するクラブもあれば、何とか脱出を試みようとする生徒もおり、助け合ったり、裏切ったりという展開で物語が進んでいきます。
主人公の門脇瀬名は記憶を失っており、同じテニス部の部長だと言う護華養子と一緒に、脱出しようとする生徒たちのグループと合流しますが、いきなりゲームの期限が短縮されて急展開していきます。
最大のネタバレになりますが、作家志望の求邑知歌が『放課後戦記』と名づけるこの殺し合いは、実は門脇瀬奈の心の中で起きている出来事です。現実の瀬奈は解離性同一症を患っており、登場する女生徒全員が分裂した瀬奈の多重人格です。女生徒が殺されることで人格が統合されていき、全員いなくなれば解離性同一症が治癒することになる、その治療行為が瀬奈の中で『放課後戦記』という形をとっているのです。
「女生徒たちが殺し合う」というダークで異様な設定が、このオチがわかることで、最後に「なるほど」と思わせる結末に転化し、作品の印象がガラッと変わります。
そうすると、病院で目覚めた瀬奈の周りに女生徒たちが集まってくるラストシーンには、むしろ暖かな感動がありました。
2度目の観劇になった千秋楽に「種明かし」を知って見ると、冒頭のシーンや劇中のあちこちで出てくる謎めいた台詞の意味がわかり、伏線回収の楽しみを味わいました。

今回、ななみんが演じたのは闘鷹争(とうたか あらそ)、軽音楽部の部長で影のあるイケメン女子をカッコ良く演じていました。
闘鷹は一言で言えば瀬奈の「トラウマ」。幼い頃から父親に性的虐待を受けて極度の男性不信に陥っていた瀬奈は、ある女生徒に恋して拒絶された経験を持つようです。「自分は普通じゃない」と言い、「おかしい、気持ち悪い」と叫び、瀬奈に「こっちへおいで」と呼びかける闘鷹の容姿は、おそらくその女生徒を投影したもの。色欲を表すダンス部の鴇色摩緒が絡みついているのも、非常に意味深です。現実の瀬奈の自傷行為や、さらには父の殺害をも象徴すると考えられる彼女に「闘争」の言葉が割り振られているのも深い意味があるように感じました。
登場シーンはさほど多くありませんが、きわめて重要で複雑なこの役を、ななみんは説得力を感じさせるリアルな演技でしっかり演じていました。この役を演じるために、髪(インナー)を染めたそうです。
登場シーンで歌う「グリーンスリーブス」のアカペラは、ゾクゾクするほど素晴らしく、最初と最後に見せるキレキレのダンスも良かったです。本編終了後の挿入歌「月光速」ではペンライトを振っての応援が呼びかけられていたので、かなり久しぶりに、黄色いペンライトを振らせてもらいました。

主演の市川美織さんは『放課後戦記』に翻弄され、記憶を失った不安で頼りなげな様子を演じ、小柄な容姿ともあいまって門脇瀬名にピッタリでした。むしろ、これは市川さんありきのお芝居のようで、座長としての最後の挨拶でも「出演者がこの作品に出られて良かったと言ってくれてうれしい。また再演したい。60歳になってもやりたい」という趣旨のことを言っていました(余談ながら、もし、最後のシーンで60歳の瀬奈が登場したら、劇の味わいがさらに変わる感じがします)。AKBのことは詳しくないのですが、前説や挨拶を聞いていると、お茶目でチャーミングな人だと言う印象を受けました。
「日之出神社に夜は来ない」でななみんと共演した相沢奈々子さんが空手部部長の戯女遊鎖役でした。最初はソフトボール部に襲われ、そこから狂った破壊者になる役を迫真の演技で見せていました。追い詰められた瀬奈の悲しい破壊願望を象徴する重要な人格だったと思います。戯女の悲しみを受け入れたことで瀬奈は前に進めたのでしょう。
「箱庭同窓会」で共演した熊沢世莉奈さんが演じた情報科学部部長の都解未明は、ちょっとコミカルな物知りキャラ(なぜか土佐弁)。「この世の理」を知ろうとする彼女は、最後にそれを知ったわけですが、これまで何度も行われては失敗していたことがうかがえる『放課後戦記』(=治療)を成功させた要素の一つは、彼女が「この世の理」を知ったことではないかと想像しました。そんなことを考えると、やはり重要な役だったと思います。
元PiXMiXの響野こひめちゃんが、中間派のダーツ部部員、新得姑獲鳥役で出演していました。普通の女子高生っぽい役でしたが、異色のキャラが多い中で、ホッとさせる登場人物の一人だったと思います。
その他の女優さんも、それぞれに特徴的で難しい役を演じていて印象的でした。

(Team Pink)
市川美織 篠原望 田口華 熊沢世莉奈 相沢菜々子 川本紗矢 小林萌夏
星乃まりな 市島琳香 田辺奈菜美 相沢菜月 涼雅 星名美雨 吉冨さくら
響野こひめ 佐藤遥 両羽ももか 渡辺磨玲 木保英里香 桜田アンナ
堂ノ下沙羅 山本芽生 黒木百花 漆畑瑠菜 中里ゆい