12月5日、CBGKシブゲキ!!であった「AI懲戒師・クシナダ」千穐楽の公演に行ってきました。

まずは、公式に掲載されたあらすじを掲載しておきます。
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伊藤靖朗が贈る天才少女・クシナダサホが駆け巡るSF冒険活劇、開幕!

近未来、世界は盤古共和連合とエレミア経済圏の二つに分断され、激しい紛争が繰り返された後、一時的に停戦の時期を迎えていた。
そんな中エレミアの支配下となり主権を失った旧・日本ナカネ区で、一人の孤児・クシナダサホが15歳となる。
サホはリアルが苦手で、世界に氾濫するAIたちと密かにオンラインで交流を重ね、天才プログラマーとして成長、極悪ハッカーや暴走するAIを華麗なスキルで撃退する日々を送っていた。
しかしそんなサホを見かねた施設の園長・宇賀野タマエの勧めにより遂に学校に通うことになるが、その初登校がその後に訪れる人類を巻き込むAI事変の始まりとなることを、サホはまだ知る由もなかった…


近未来の架空世界を舞台に、謎解きあり、アクションあり、学園ものの要素もあり、ちょっと社会性もあって、面白いエンターテイメント劇でした。観劇後の後味も良かったです。
インプラント(体内への埋込み)でAIにアクセスしてシンクロさせ、バーチャル空間でAIが擬人化する世界。
企画・制作の株式会社CRESTはアニメやゲームなどのコンテンツを扱っている会社とのことで、とてもアニメっぽい設定を、役者さんたちのキャラが立ったカッコいい演技とプロジェクションマッピングで見事に表現していました。
そこに、学園生活を舞台とした恋や友情、成長といった青春のエピソードが絡む展開は、個人的にはちょっとハリーポッターを連想しました。
また、ヒルコやカロンなどの「AI」の描き方が、物語が進むにつれてとても自然な存在に見えてきました。

大国同士の戦争で戦場になり、一方に併合されて植民地のようになった国。進化して感情を持つに至ったにもかかわらず、人間に奉仕する道具であることを求められるAI。利権や生い立ち、親子の葛藤、主人公が通う学校の規則も含め、登場人物たちを拘束するものと、それぞれにとっての「自由」が物語のテーマになっていると感じましたが、そうした世界で、勝気で自由奔放だけど一本気、そして優しい主人公の櫛名田サホを、太田夢莉さん(元NMB48のメンバーとのこと)が活き活きと魅力的に演じていました。
完全オリジナルの脚本だそうですが、壮大な物語の導入部分という感じなので、今後の展開が気になります。

この演劇を見に来たのは、元ONEPIXCELの鹿沼亜美ちゃんがアンサンブルとして出演していたからです。
アンサンブルなので、サホたちの学校の生徒をはじめ、電車の乗客、ICMA(国際人工知能管理委員会)の職員など、いろんな場面に登場しますが、中でもICMAに「おとうさん」を連れていかれた「子どものAI」役がセリフもあって、印象的でした。
この劇の中で最も哀しい役柄でしたが、その孤独や不安、悲しみ、怒りの演技に説得力がありました。亜美ちゃんは小柄だし、舞台演劇での子どもの役はよく似合うと思います。女優志望は口にしていない亜美ちゃんですが、この舞台は今後の活動につながるのではないかと思いました。
ところで、はっきり描かれていませんでしたが、「子どものAI」というのは、「子ども」としてキャラクターづけられたAIならともかく、もし、文字通り「おとうさん」の「子ども」だとすれば、AIが「子孫」を残す術を持ったということなので、ますます人類にとって脅威です。そう考えると、その存在はさらに哀しい…

あと、観客が入ってから開演前に、キャストがステージに登場してストレッチや発声練習をしたり、自由に話したりする時間があるのは初めて見ましたが、俳優さんたちの素顔や楽屋での雰囲気が伝わってきて楽しいと思いました。
この日は、ミカゲが劇場に入って来るシーンをみんなで順番にやってみせたり、八岐ヨシゾウ役の野田孝之輔さんを中心に記念写真を撮ったりする様子を客席で共有させてもらいました。他のキャストさんたちと楽しそうに、和気あいあいと話している亜美ちゃんを見られてよかったです(…と、すっかり親目線w)。
カーテンコールの時に、脚本・演出の伊藤靖朗(舞台芸術集団地下空港)さんは座組の仲が良い方が良い演劇ができるという考えを持っていると太田さんが言っていましたが、そんな座組の様子を垣間見ることができた時間でした。