11月17日と18日、池袋シアターグリーンBOX in BOX THEATERであった「貘の皮を剥ぐ」初日と2日目昼の公演に行ってきました。あわせて、21日の千穐楽公演は配信で視聴しました。

メイホリックの舞台は7月の「愛を探す怪物」(浜浦彩乃主演)以来の2度目になりますが、若手の女優さんだけでの演劇ということもあって、注目していました。今回が6回目の公演で、高羽柊奈さんが卒業して、岡本芽子さんが主宰として活動しているとのこと。
今回は、ハロプロ研修生時代から応援していて勝手に「運命の推し」と思い定めた田辺奈菜美ちゃんの舞台、しかもONEPIXCEL解散後最初の活動なので、一にも二にもなく参加しました。

まずは、公式に掲載されたあらすじを掲載しておきます。
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わたしになった夢を
私が見ているのか

私になった夢を
わたしが見ているのか

「美人」と書いて「ミト」と読む名を与えられた一人の女性は
その名に似つかわしくない容姿を与えられて生まれてきた
しかし彼女は、自らの皮を剥ぎ継ぎ接ぐことで、名前の通りの「美人」へと生まれ変わる

「整形」に心も素顔も縛りつけられた彼女は
華やかな現実と、目眩がするような夢の世界とのはざまを彷徨い歩き、
そして「わたし」へと堕ちていく

棘をまとった言葉で彩る
美しくも残酷な"オンナノコ"の物語

--だれかおしえて、わたしの愛し方を--

これを読むだけで、不穏な空気を感じますね…
今回は現代劇で、「整形」を主題にしたなかなかヘビーなお芝居でした。
社会よりも自分の内側にベクトルが向かっていく感じで、自己肯定感やルッキズムの問題につながる若い世代の「今」のストーリーだと感じました。
初日を見た時は正直、重い荷物を背負ったような感覚にとらわれ、アフタートークショーでの役を離れたキャストのみなさんのお喋りでやっとリセットできた感じがしましたが、出演メンバーが変わっての2日目、千穐楽の配信と見ていくうちに、とても面白い演劇だなと感じるようになりました。
複数回見たからか、ダブルキャストだからか(おそらく、その両方)、見る度に違った感じ方、違った印象を受けた台詞やシーンが多数あって、ここが生の演劇の面白いところだと思いましたし、変則ダブルキャストにして大成功だったと思います。

基本は「針」と「糸」の2チームで、私が見たのは初日と千穐楽の針、2日目昼の糸チームの初日です。その限りでの私の感想ですが、
主役ミトについて、針の福緒唯さんは信頼される仕事ぶりのたおやかな美人OL、糸の夏目愛海さんは頼られる仕事ぶりの凛とした美人OLという印象で、ストーリーが進むにつれて崩れていくわけですが、福緒ミトは狂っていき、夏目ミトは壊れていく感じ。
そして、ミト、りの、世良の三角形で見た時に、針は山﨑悠稀さんのりのが、糸は広瀬ゆうきさんの世良が「立っている」(これはどちらが良いとかそういうことではないので、念のため)ので、まさに「針」は突き刺され、「糸」は縛られていく感じがしました。

(千穐楽は鷲見さんがりの、桜田さんが世良でしたが、配信だとカメラワークも含め視点が主役に集中することになるので、多角的に見るのは難しいですね)



さて、田辺奈菜美ちゃんですが、主宰の岡本さんはじめ何人かいるうちの全公演通し(シングル)での出演でした。
ななみんが演じる仁菜はミトに憧れる職場の後輩で、サバサバして、ちょっとガサツという設定ですが、他の登場人物がそれぞれに葛藤や闇を抱える中で、主人公の傍らにあって「普通」を感じさせ、緊張感がある物語の中でホッとさせる存在でした。ポニテにミニスカートが可愛く、とりあえず、アイドルのななみんを応援してきたファンとしても安心して見ていられました(笑)。
普通の女子並みに美容には関心があり、先輩のミトに何気なく「こんな顔になりたかった」「なりたい顔の代表です」と言う仁菜ですが、それが「整形」や他の登場人物の「ミトが好き」という言葉と地続きなのか、飛躍があるのか、と考え始めると、仁菜がこの芝居の中で持つ意味も少し違って見えてくる気がします(仁菜の仕事のフォトレタッチも「バーチャルな整形」と見ることもできますね)。
2日目のアフタートークイベントに出演した時に、役作りについて質問されて「自分と正反対の役なので、苦労した。演技指導で『もっと、ギャルっぽく、雑にやって』と言われた」と答え、特に玲さんに「バ○ァ!」と言うところで指導された言っていました。「ななみん、きっと普段は言わないだろうなぁ…」と思うのですが、以前の「清らかな水のように」の進藤ありさといい、なぜかそういう役がきますね。

初日のアフタートークイベントで、役作りのこだわりやポイントをキャストが質問されて、ミト役の福緒さんが、お母さんから受け継いだイヤリングをつけて舞台に立ったというエピソードを紹介し、ミトと両親の関係性に触れていました。
年齢柄、どうしても最後は親目線になってしまいますが、親は誰しも子どもの幸せを願って名前をつけるので、ミトの場合もそうだと思います。実のところ、彼女は本当はそれほど醜いわけではなく、整形しなくても年頃になれば、それなりにきれいになり、可愛くなったと思うのですが、中学生の時にいじめを受けたことで、名前が「呪い」になってしまったのだと思いました。それを修復するのもまた、人との関係だと思うので「ラストのミトは幸せだったのか」ということを考えたお芝居でした。

 


 

追記
同じ建物のBIG TREE THEATERでは、ハロプロ研修生が演劇女子部「図書館物語 ~3つのブックマーク~」 を演っていました。