フレッド・フリス→白洲正子 | なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO

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僕の好きな人物、作品をWHO'S WHO形式でご紹介します。


え~ちょっと今回は書きにくいです。

実は正直言って、僕は白洲正子にほとんど関心が持てないのです。

そうでなくとも今も大型書店に行くとコーナーはあるわ、そうなるとヘソ曲がりの

私は、ことさら冷めていくわけで。だいたいにして、白洲次郎がなんでまた、

あんなに持ち上げられるのかがわからない。だって二重スパイみたいなもんな

わけでしょ、あの人。奥様の力に与るところが大きいんじゃないでしょうか。一時

ちょっとしたブームだったしね。能楽、骨董をはじめ、寺社や和服に至るまで、

なんでも来い、の「和」のカリスマ。もうイッチョカミのご追従者(ありていに言って

「俗物」ね)が出るわ出るわ(俺だ・・・)。いや、「関心が持てない」つっても、ここで

こうやって取上げるからには、何冊か読んではいますよそりゃ。ただあれですよ

それというのも、そろそろ俺もひとつ「和」でもいってみるか、みたいな不純な動機

だったんで。つまり、和辻哲郎「古寺巡礼」ぐらいは読んでおかんとね

みたいなもん。あと、小林秀雄青山二郎→正子というラインですね。

まあ今となっては、「文学史的な」読み方だった、と思います。ちなみに余談ですが

吉田秀和の文章も、「青山学院」のおみそだったというフィルターを通してしか読めない。何様だ。ごめんね。


今にして思うと、彼女のやつで始めに読んだのが「西行」だった、ってのが
まず失敗だったかもです。ちょうど、相変わらず何も言ってない小林の「西行」
相変わらず何を言ってんだかさっぱりわからない吉本隆明「西行論」
を続けざまに読んで、へろへろになってたところに、彼女のやつを読むと、これが
まあわかりやすかった。桜狂いとか「数寄者」として西行を見るとか、歌よりも、
その恋愛にスポットを当てるとか、「人間味」っていうの?面白かったです。決して
読みやすいものではないけど。ただね、「新古今集」はおろか「山家集」
すら読んだことのない門外漢、それこそ西行というと、あのいちばん著名な
願わくば花の下にて春死なん その望月の如月の頃」の一句しか知らない
ような人間が読むもんじゃないですね。なんか敷居が高いなあ、としみじみ思った
ことでした。自分の身の丈に合ったものを読め、とまあ、そういうことです。
辻邦生
とか読んどきゃ良かったんでしょうかしら?


世評の高い「かくれ里」なんかも、銀閣寺より法然院を持ち上げるあたり、
いかにもですが、まあ好きなように書くひとだったわけで、それなり歩き回った
のだろうけれども、なんかあんまり「足で稼いだ」感じがしません。歩きまわり方
だと、僕みたいな人間にとっては、「低徊」というか永井荷風くらいがちょうど
いいかと(まあかくいう荷風は海外さんざん歩きまわってはいる)。これもやはり
好きなひとならグッとくるんだろうけどね。文章を味わう、ということなら私は別の
ひとのを読みたい。「十一面観音巡礼」も同様だ。うー・・・それにしても
無理やり読んだなあ。また、彼女が自分でも舞ったりとか相当に入れ込んでいた
「お能」(「能」でなく「お能」ってのがお嬢だね)に至っては、かつて一回だけ
観に行って「あ、こりゃダメだ」と後悔した私にとっては、まるで読みきれません
でした。なんでこんな思いをしてまで読むのか、と深く自省いたしました。とにかく
もうこんなアホな読書はやめようと。



とはいえ、無視できないのが、「稀代の数寄者」青山二郎との関係です。
「青山学院」入学というか、つまり弟子入りするために、飲めない白洲が酒豪の
青山に付き合って、しまいに入院までした、なんてエピソードは、はっきり言って
どうでもいいんですが、このへんの人間関係のスッタモンダを、学院生徒のひとり
であった大岡昇平「花影」で描いたスキャンダルは、野次馬的にですが
面白かった。これは一種のモデル小説ではあるのですが、この小説に関しての
白洲の批判・異議申立てなどを読むに、大岡の青山に対する相当屈折した思い
(実際、青山に泣かされたとか)や師匠やヒロインのモデルとなった友人に寄せる
彼女の感情が窺え、非常に興味深い。まあそれでも、大岡の代表作のひとつで
あることは間違いないし(合評会でも好評だったのが、合評メンバーのひとりが
ヒロインの愛人で歯切れが悪かった、てのが笑える)川島雄三によって映画化
もされたりとか、一時この主人公はちょっとした有名人でした。むう・・・でもこれは
もはや文学史のエピソードかなあ・・・



もひとつ彼女の場合、青山から薫陶を受けた「骨董」ってもんがあるわけですが、「なんでも鑑定団」
好きな私としては、その関連のもちょいと読んでみました。やっぱ予想通りノリ切れなかったけどね。
しかし、次のこのひとのは別だった。マンガの力は偉大です・・・