祝!「サマーウォーズ」DVD/BD発売!


 というわけで別に祝う根拠はないですが、この映画が楽しかったから僕の今日の映画趣味が出来ているので、その意味で僕自身にとっては非常に大切な作品。これは祝わずにはいられませんよ。

 昨年のMy映画ランキングでは、「WALL・E」に次ぐ2位に入っています。しかし「WALL・E」と「サマーウォーズ」の高順位は意味合いがまるで違うんですよ。「WALL・E」は非常に緻密なスキのなさに感服したのに対し、「サマーウォーズ」は色々とツッコミを入れたい場所がありつつも、それらが気にならないくらい響いてくるものがあった。思い入れでは「WALL・E」よりも強いと言っていいです。


 では、あらすじとかは省いて感想だけを書いていきます。作品を見ていないとわからない内容というか、「これを読んで見たくなった」という類の記事ではありませんし、ネタバレもありなのでご注意を。ていうか見てない人はぜひ見てください!




 さて、この映画は「家族の絆」とか「ネット社会のあり方」とかの論点で語られることが多いと思うんですが、それらの要素を通じてある一つの大きな問いを立てていると僕は思います。それが「現代において人の役割・存在意義はどこに生じるか」という問いです。


 そしてこの作品が「家族の絆」と「ネット社会のあり方」を通じて示す回答は、「自らに課せられた守備範囲を全力で守る」ということではないでしょうか。そこにこそ、現代における人の存在意義が生じてくると。


 冒頭、健二と佐久間がバイトで担当しているのが「OZの末端の末端の末端」でした。この「末端」を守るということが作品全体の内容ともつながっていて、「サマーウォーズ」は健二や夏希や佳主馬が自らの属する「末端」を守り抜く話だと言えるわけです。

 健二は、数学オリンピックで日本代表になれなかったというコンプレックスを、暗号解読の失敗によって加速され、自分が世界にとって唯一無二の存在ではないことを突きつけられます。それでも彼はあの瞬間・あの場所に自分しかいないということを自覚し、自分に出来ることをやろうとします。

 夏希もまた、家族の中で花札が一番強いというわけではなくても、残るメンツの中では一番強いという役割を全うします。佳主馬はOZ内最強の格闘チャンピオンですが、その戦う理由は「母と妹を守る」というパーソナルなものでした。


 こうした人たちの「末端」を守ろうとする小さな努力が、世界を救う大きな力となっていきます。それを可能にするのがOZ=インターネットの存在です。

 インターネットの登場によって、様々な分野で「小さな力が集まって大きな力となる」現象が起きています。オープンソースのソフトウェア開発や、複数の小さなメディアによるジャーナリズムなど。こうしたインターネット社会の特徴を踏まえて、「末端」にいる健二や夏希や佳主馬の小さな努力が大きな力となって世界を救うという物語が可能になります。


 逆にOZが機能停止した際には、「末端」とは対極の「ハブ」である栄おばあちゃんが活躍します。人のつながりをまとめあげ、大きな力を発揮する「ハブ」としての個人の存在。

 やがてOZの復旧とともに栄おばあちゃんが亡くなり、そのことで「ハブ」としての人の生き方が終焉を迎えたことが示されます。代わりに突きつけられるのは、「末端」としての人の生き方です。そして先に書いたように、健二や夏希や佳主馬はその「末端」にいるものとしての役割を全うするわけです。


 では、そうした「末端」にいるものが守るべき守備範囲とはどこか。それが「サマーウォーズ」の場合は「家族」なのではないでしょうか。

 一人一人が家族を守り、また家族の問題を自分たちで解決すること。それぞれの家族という「末端」を守ることです。



 「末端」にいる人々が、自らに課せられた守備範囲=家族を全力で守る力。それがインターネットを通じて集まり、大きな力となります。この連鎖こそが「家族の絆」と「ネット社会のあり方」を通じて描かれる、現代における人の役割・存在意義なのではないでしょうか。

 そのことがまさしく物語の中で結実するのが、例の花札勝負の場面です。世界中にいるそれぞれの家族が、「わたしたちの大切な家族」を守りたいという意志で集結し、巨大な力を発揮します。


 インターネットが開く「世界の広さ」に直面して、自分の価値を低く見積もってしまうという認識を、主人公である健二が体現します。そして彼の行動と成長をもって、そのような世界における「末端を守る」という生き方を示してくれるのが「サマーウォーズ」なのではないかと僕は思います。




 ネットの普及によって直面せざるを得ない「世界の広さ」のようなものにはかねてから個人的な興味がありましたので、「サマーウォーズ」はその点においてものすごく入れ込んでしまう映画なわけですよ。健二と栄おばあちゃんの花札シーンとか、健二のコンプレックスが透けて見えて号泣ですよねー。

 最初に書いたとおり、色々とツッコミどころもありますし、アニメアニメしていて人によっては見るのツラいだろうなぁと思う部分もあるんですが、そういうところを差し引いても(むしろそういうところがあるからこそ?)愛すべき作品だと思います。


 ちなみに、一番好きなキャラは佐久間です。彼がパンを食べているあの短いカットにも号泣ですよ。彼だって戦いをともにする家族の一員なんだ!