僕の日常ブログ

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僕にとって初恋とは全ての恋のことである。

初めてその人を好きになったのだから、それは紛れもなく初恋であり、人生における初めての恋に限らないのである。

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君と出会ったのは、冬季オリンピックが始まったばかりの年で、僕がふいに訪れた沖縄。

ちょうど新年明けの一月だったからか、沖縄でも夜は肌寒くて上着が必要な気温だった。


その日僕が那覇空港に降り立ったのは人生で2回目。

ゆいレールに乗って県庁前で下車し、ホテルにチェックインしたのは15時過ぎのことだった。

フライトの疲れも少しあったので、ラフな格好になりソファでゴロリとし、窓を開けて沖縄の風を感じていた。


その時、ふと、なんとも言葉では言い表せない不思議な感覚を味わった。

旅の時は決まって刹那的に体を重ね、その場だけの感情で自身の欲求を発散してきていた。

今回の旅ももちろんそのつもりでいた。

たが、その時その空間で感じたものは、そんな出会いは今回はいらないと思えるようなふわふわした感傷的な感覚だったのだ。

そんな感情は滅多に感じたことはなかったこともあって、後に起こることの知らせとも気づかず、いつも通りにアプリを開き今夜だけの相手を探していた。


ある一人の男性とやりとりを繰り返し、お互いの意思確認の上ホテルで会うことになった。


彼のメッセージは、初対面とも思えないような人間味のある優しさを持ったものであった。

得てしてこのアプリの世界は、一つの目的のためだけに利用しているユーザ−が多く、メッセージは淡白短文短時間が鉄則だ。

もちろん僕もそのつもりで利用をしているので、その点はまったく厭わない。

だからこそ、そんな分かりきったアプリの世界での彼とのやりとりからは、とても新鮮味を感じられた。


実際会ってみると、笑顔の素敵な好青年。

「僕で大丈夫ですか??」そんなお決まりの挨拶を交わし、暫し会話を楽しんだ。

彼が紡ぎ出す言葉は少しの品と謙虚さがあり、かと言って人との距離感の縮め方がとても自然な感じだった。


彼は彼氏と同棲中だといい、ホテル泊である僕のところに出向いてくれた訳だ。

本当かどうかなんて知る由もないし、僕も適当にその場をやり過ごすための偽りを並べていた。


パートナーがいながら体の関係を外で求めている輩がいることは、大人であれば分かりきっていることであり、それは我々の世界に限ったことではない。

かくいう僕も数年連れ添っている彼氏がいる身なのである。


もちろんどのような状況であろうと、その行為自体は許されるべきではないことくらい、頭では分かってはいるのであるが、麻薬の如く感覚がなくなるのが性欲というものではないか。


我々の目的は一つ。

ただ体を求め合い、その場限りの欲求を満たすのみ。

後腐れなく、一回きりの関係を持つだけのそんな虚しくも正直な感情なのだ。


コトが終わり、シャワーを浴びた彼は明日も仕事ということもあり感謝の意を表した後、足早にホテルを跡にした。


僕自身もいつもの如く、シャワーを浴びて満たされた性欲から解放されていた。


「ブブーッ」

不意にスマホのバイブが鳴った。

アプリの通知音だ。


徐ろにアプリを開くと、さっきの彼からメッセージが来ていた。


コトの後はお決まりの挨拶として、人によってはお礼のメッセージなんかを寄越す律儀な人もいる。


彼「今日はありがとうございました!上手くリードできずにすみませんでした💦」


僕は気にも留めてなかったので、『あー、いつものね』と思いつつ、当たり障りない返信をした。


僕「こちらこそ今日はありがとうございました。楽しかったですよ!」


彼「僕も楽しかったです!こちらこそありがとうございました!」


僕「また近々来るので、よかったら会いましょう!」


普段なら、この後「そうですね!またよろしくお願いします。」で締め括られるはずなのだ。


ところが彼からの返信はこうだった。

「また会ってくれるんですか?僕のことはタイプではないと思ってます💦」


僕はそんなことないですよと伝え、それから数通メッセージのやりとりを繰り返し、また会う約束をした。


彼からのメッセージは僕に好意があるかのような文面であって、刹那的な出会いでそのようなことをされたのが久々であったので、僕も少し舞い上がっていたのである。

それからというもの、徐々に彼のことを考える時間が増えていき、たちまち彼のことが気になって仕方がない自分がいること気がついた。長年彼氏がいる僕にとっては久々の初恋による感情が沸々と湧き起こる寸前だったみたいだ。


たかだか2時間弱しか時間を共にしてない。

人となりも生い立ちも名前も何もかも知らない。

唯一セックスだけは知っている人。


僕が沖縄を跡にした後も、ずっとずっとずっと気になって、頭から離れることがない彼の存在。

どうしたら、彼のことをもっと知れるのだろうと想像を膨らませ、自分の気持ちに拍車をかけ続けていた。

気分が乗ったときなんかは、付き合った場合のシュミレーションなんかしてしまう。

まさに脳内ドーパミン全開の状態である。


気がつけば、もう彼の事を好きになっていた。

今ある自分の環境をかなぐり捨ててでも、彼との歩みを始めたい。

今まで僕が積み上げてきたものを全て崩してでも、この身を彼のために捧げたいとさえ感じるようになった。


頭では『上手くいくはずはない、彼には彼氏がいて僕との関係はその場限りで、出逢い方も正攻法とは程遠いから』とわかっていても、走り出した心は自分の声にも耳を傾けない。

寝ても覚めても彼のことを考え、僕の行動は全て彼基準となっていた。

それからは悶々とした日々を過ごしていた。


そう遠くない翌月に沖縄行きが決まった。

どのタイミングで彼に連絡するのが最適なのか、今の自分ができる最大限の冷静さを保ち必死に考えた。


そして早る気持ちを抑えながら、アプリを開き彼にメッセージをした。


『今月の19日に沖縄にいく予定ですが、ご都合いかがですか?』


自分の感情は文章に乗せず、飽くまでも初めてあった時と同じテンションでだ。


彼からの返信は翌日に来た。

「19日は仕事なので、夜であれば空いてますよ!」


返信が遅く落ち込んでいた僕の気持ちが、今にも溢れそうなくらいの歓喜をあげていた。


「お仕事は何時に終わりますか?」


だか、そのメッセージを送信したまま、彼からの返事はなかった。

彼はアプリにログインはしてはいるが、僕の通知が鳴ることはなかったのだ。

いっそブロックしてくれた方がまだマシだった。

彼からの明確な答えが示されたら、僕の気持ちは諦めがつく。

『彼が会いたいと言ってきたんだから、そのうち返信来るから大丈夫』という気持ち。

『返信が来なかった事が全て。もう忘れよう』という気持ちのせめぎ合いによるモヤモヤの1週間を過ごしていた。


僕はどうしても前に進みたかった。

それは彼との関係を断ち切るための一歩なのか。

未だに諦めのつかない一縷の望みに対してなのか。

このどうすることもできない今にも吐き出しそうな重い重い気持ちとどうにかして折り合いをつけたかった。


僕はアプリを開いた。

『今週末どうしますか?無理ならスルーしてください!』

僕が自分を守るための精一杯の抵抗だった。どうしても相手による結論が欲しくて堪らなかった。


その日彼からは返信がなかった。

心のどこかで、それでいいんだ。そのまま終わりにしてくれとさえ思っていた。


彼に初恋してから、ぐっすりと眠れた試しがない。

寝つきが悪いか、早朝に目が覚めるか。


翌朝も四時に目が覚めた。

メッセージなんて来てないだろうと諦め半分、未だに期待半分でアプリを開いてみると、一通のメッセージが来ていた。彼からだった。


「今週末は厳しそうです。すみません。」

これが彼の答えだった。

悲しかった。苦しかった。僕のこの1ヶ月はなんだったんだと自分で自分を消したくなった。

でも時が経つにつれ、その答えをすっと受け入れられた気がした。

紛れもない僕の初恋だった。


今想えばなぜ彼に夢中になってしまったのかはよく分からないが、僕自身の心の隙間をスッと埋めてくれるような人だったのだと思う。

彼を好きになって気づくことができた、人への優しさ、相手への気遣い。そして人を好きになるということ。

それらは未だに僕自身の中で息づいているのではないかと思い、この刹那的な出逢いにすら感謝をすることで、自分自身の気持ちに折り合いをつけたのだと思う。


また、いつか、初恋したいな。