私の経験値だけで話すと、選択肢は決してハイグリップではありません。

七面倒なことに、タイヤがグリップを発揮するには条件が必要です。

その条件は

・熱

・荷重

です。

 

だのでハイグリップタイヤを発揮するにしても、当然のように熱が必要です。

具体的には、当然暑い夏の路面でも溶けることでグリップを発揮します。尤も、ケース剛性も失ってグリップがある状態を維持するのは難しいでしょうし、何より良くトレッドがはがれるようになるでしょう。

サーキット走行でよく見かける蚯蚓腫れ、アレは剥がれたトレッドのゴム片です。自分のとは限りません。

 

熱が加わったゴムってのは、粘土がはがれるようなイメージで引きちぎれてしまうんです。

 

さて、それはともかく、ではどういうことかですね。

ハイグリップタイヤはそう言うゴムを使い、溶けやすかったり熱が入りやすかったりして『べたぁ』っと張り付くようになっています。

なので当然タイヤ寿命も少ないんですね。

 
それに比較すると、当然絶対的なグリップは事欠きますが、スタンダードタイヤ自体はそれとは異なるグリップを発揮するように設計しています。
判り易い比較がラリータイヤなんですが……ラリータイヤはコンパウンドはSタイヤと同様で、ケースとトレッドパターンが異なります。
すると、Sタイヤのような貼りつく感じがなくなります。
スタンダードタイヤの場合は、グリップを発揮できる熱はSタイヤよりも高めに設定してある場合があり、やや堅めのトレッドを維持します。まあ、トレッドパターンもブロックサイズが小さく剛性は少ないようになっています。
溶けにくいので当然グリップし辛いのですが。
 
そもそもと言う言い方をすると、ストリートでそこまで荷重を加えられるのは特殊な人種です。
そして、タイヤ寿命を考慮するとそこまで距離を稼ぐのも難しいでしょう。
なので、スポーツタイヤの登場です。
 
セカンドレベルのスポーツタイヤは、2パターンあります。海外製で見かけたのが、ようするにSタイヤより低温で溶けるという恐ろしい代物。無論、食います。
あのショルダーの溶け方は異常でした。
もう一つは全く溶けないというか、ブロックパターンを大きくした、コンパウンドがスタンダード程度というもの。DRBなんかがコレに該当しますね。
スタンダードタイヤやこの手のスポーツタイヤで共通するのが、「とことん荷重をかけてやる」という使い方が推奨されるということ。
 
Sタイヤや、BSのアドレナリンのような良いタイヤの使い方ってのは、殆どのドライバーが知ってますが、スタンダードタイヤでスポーツできないと思われているのか……
 
というかそう言う奇妙なラインを稼いでいた、出来てた理由もあわせて話さないといけないでしょう。
スポーツタイヤ、Sタイヤ級のコンパウンドを使うタイヤだと、当然最高速やサーキットのような高荷重のタイムアタックで使いこなせます。当然、荷重を大きくかけていくようなシーンが多くあるべきです。
それをできないのであれば、ストリートで使っても普通のタイヤです。むしろもったいない。
そこでスタンダードタイヤです。
食わない?食わせるんですよそこで。荷重をがっちりかけて。
サイドウォールがひしゃげるくらい、トレッドどころかショルダーを越えて地面をこじるぐらいに使うんです。そうすれば、面積も増えるし、むしろ高荷重で溶けないので持ちも良い……
 
あのささくれ立ったトレッド、サイドウォールの中央を越えて焼け爛れたスニーカー2、アレを見せられれば有無を言わせない迫力がありましたね。
Sドラは二週間持たない。1週間でアドバンが消えた。スニーカーなら一ヶ月持つとか。
 
まあそう言うおかしな世界でなければ使っていけないわけではないですね。
熱が加わらない状態でも柔らかく、加えてもある程度堅いので、巧く荷重をかけてやればグリップ抜けも良く、小気味良く旋回できます。
機械的なグリップが高いと滑らせることもできません。低いレベルでの荷重旋回を覚えるとも、軽快なステップを踏むにも、スタンダードタイヤというのは面白いのです。
勿論、高い荷重をピンポイントにかけたり、無理矢理ハンドルをこじったり、無理矢理加速するようなシーンでも、Sタイヤより、どっちかというとダートにおけるドリフト状態を……まあ、一部の人はコントロールするんです。
FFで左右旋回の差を見ながらタックインをさせる場合も、低荷重低速でもバランスを見れるんで面白いですよ。
 
慣れれば滑りっぱなしでも何の気なしにコントロールできるようになるんで、私は競技はダートをおススメしています。
すると、そう。
 
スポーツカーでハイグリップを履くなんてのが、どこまで非日常なのか。私は、それは『安全な日常でしかない』と言い切ります。
本当の非日常というのは、スタンダードタイヤがギリギリのライン、車は滑って姿勢を変えていくものであると。
そのためには、荷重を加えることできっちりグリップしつつもすぽっと抜けてしまうバランスのよさが重要なんです。
私の好みはスニーカー。サイドの剛性が高く、ゴムの性能も悪くない。エコスはヨコハマらしいサイドウォールで、高荷重が掛け難い柔らかいタイヤでしたので。
だのでダンロップは実は大好きなんですね。
 
久々のスタンダードタイヤに、わくわくしています。
絶対ビートには、スタンダードタイヤのフィールが合うはず。一応私はドリではなくダート・ラリー屋ですので。