世界で株式や商品の相場が急落し、節目となる水準を相次いで割り込んでいる。23日の米国市場では米ダウ工業株30種平均が3万ドル、原油価格は1バレル80ドルを下回った。世界の中央銀行が大幅利上げを続け、企業業績の悪化や商品需要の減少につながるとの見方から、投資家の間でリスク資産を売る動きが広まった。世界景気の先行き不安は一段と色濃くなっている。

23日の米ダウ平均は前日比486ドル安の2万9590ドルと急落し、3カ月ぶりに3万ドルの節目を割り込んだ。エネルギー問題を抱える欧州でも22日、主要株価指数(ストックス600)が1年8カ月ぶりに節目の400を下回った。

世界の市場で株価指数などが相次ぎ節目を割り込んだのは、欧米での歴史的な利上げによる景気不安が一段と強まっているためだ。

「景気後退は避けられない。企業業績が悪化する懸念が高まっている」。米ブライトン証券のジョージ・コンボイ会長はこう話す。米企業では高インフレで調達コスト拡大が続き、ドル高による収益圧迫が響く。

米フォード・モーターは2022年7~9月期の調達関連費用が想定より10億ドル(約1430億円)かさむという。金融大手UBSは22年の米主要企業の1株当たり利益予想を3%引き下げた。米国の購買担当者景気指数(PMI、速報値)は好不況の分かれ目となる50を下回ったままだ。

企業の生産活動が停滞し、部品などに使う素材の需要が減るとの見方から商品相場も急落している。原油先物の国際指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は23日、1バレル78.74ドルと1月以来の80ドル割れとなった。

銅も国際指標の英ロンドン金属取引所(LME)3カ月先物が2カ月ぶりの安値を付け、節目の1トン7500ドルを割り込んだ。アルミニウムは約1年半ぶりの安値だ。減産基調が続く自動車向けの落ち込みで部品メーカーの在庫が増え、「急いで新規に買う状況にはない」(大手商社)

市場の動揺を招いたのは金利だ。米連邦準備理事会(FRB)は21日、政策金利を23年に4%台後半まで引き上げるシナリオを示した。金融引き締めの長期化懸念から、米2年債利回りは4%を超え、一時15年ぶりの高水準となった。主要通貨に対するドルの総合的な実力を示す「ドル指数」は02年5月以来の高値を付け、節目の110を上回った。

ドル高は新興国の通貨安を招く。韓国ウォンは1ドル=1400ウォン台まで下落し、09年以来の安値を付けた。インフレが加速し、一段の利上げを迫られる可能性がある。

金融政策を巡る政府と中銀の方向性の違いも市場を揺らす一因だ。英国では23日にトラス政権が大規模な減税策と国債の増発計画を打ち出した。英イングランド銀行(中央銀行)が22日に利上げを発表したが、政府の積極財政は高インフレを加速させかねない。英国でも2年債利回りが4%を超え、08年10月以来の高水準になった。

26日の東京株式市場も混乱が予想され、日経平均株価が2カ月ぶりに節目となる2万7000円を割り込むとの見方がある。野村証券の池田雄之輔氏は「中国景気の回復も鈍く、22年7~9月期は日本企業の業績下方修正が広がるとみられる。日本株の調整は避けられない」と話す。