2022年9月22日 12:50

 

日銀は22日の金融政策決定会合で、長短金利を低位安定させる金融緩和政策の維持を決めた。米連邦準備理事会(FRB)が21日、大幅な追加利上げを決め、金利面から円売り圧力がかかりやすくなっているが、長期金利(10年物国債利回り)の容認上限を0.25%にするなどの緩和政策を続ける。

円の下落や資源高を背景に8月の消費者物価上昇率(総合)はついに前年同月比3.0%に達し、日銀目標の2%を大きく上回った。だが、コストプッシュ型の物価高は持続的ではないと判断する日銀は、金利の引き上げによる円安防止より、金利を低位安定させ景気を刺激することを優先したといえる。

こうしたスタンスはさらなる円売り圧力をかけやすいだけに、それをいつまで続けるのかといった点について、午後3時半から開く予定の記者会見で黒田東彦総裁がどんな説明をするかも注目される。

物価高は長続きしないと見る日銀

日銀は22日、政策の方向性を示す指針(フォワードガイダンス)に関しても、長短金利が現在の水準、あるいはそれを下回るレベルで推移する展開を想定するという内容を維持した。利上げと距離を置く対応であり、これも円売り圧力をかけやすい。

最近の急速な円下落について、財務省は懸念を強めており、円買い介入について「やるときは間髪入れずに瞬時にやる」(鈴木俊一財務相)と強調する。介入の実行部隊となる日銀も、市場参加者に相場水準を照会する「レートチェック」を実施するなど円安けん制姿勢を示す。それでも、現時点で金融政策の修正で円売り圧力を和らげる対応とは距離を置いた。

物価の上昇圧力が強まっているのは事実だ。8月の消費者物価上昇率は生鮮食品を除くコア指数でも2.8%となり、エネルギーも除いた「日銀版コアコア指数」も1.6%となった。後者は日銀が物価の基調を判断する上で重視する指標であり、これも目標の2%に接近している。それでも日銀が静観するのは、今の物価高はコストプッシュ型であり、長続きしないと見ているため。需給ギャップがマイナスで推移する中、経済・物価情勢を改善させるための金利面からの支援は依然必要だとするのが日銀の判断だ。

こうした金融政策運営が続くなら、円売り圧力は弱まりにくいといえる。

日銀、政府要請なら政策修正との見方も

そもそも、日銀が国債を買って金利の上昇を抑える一方、政府が円を買うという「ダブル介入」は、前者が円安圧力、後者は円高圧力を生むためあべこべという印象が否めない。問題はどちらが強力かという点。答えは前者だ。

自国通貨で国債を買い支える日銀の債券市場介入は事実上無制限なのに対して、外貨準備(約1.29兆ドル=185兆円程度)を原資とする円買い介入には限度があるからだ。

外貨準備のうち約8割は外貨建て証券で運用しており、その多くは米国債とみられる。介入の元手となるドルを手に入れるため米国債を一気に売れば、米金利に上げ圧力がかかり、それ自体が円売り材料と見なされかねない。それでは円安防止効果を相殺してしまうため、介入規模の実質的な上限は外貨準備を下回るとの指摘もある。

こうした状況下では円の下落圧力は弱まりそうになく、家計や経営を苦しめる物価上昇圧力は強まりそうだ。「今後コアの消費者物価上昇率も3%になりそうだ」と第一生命経済研究所の新家義貴氏。食品値上げなどの動向次第では、早ければ9月分でそうなる可能性があるという。

それでも、日銀が当面政策を修正するとは考えにくいとの見方は市場に多い。ある日銀OBは「動くとしたら、円安を問題視する政府側が働きかけた場合だけだろう」と語る。