2022年9月14日 11:57

 

急落したダウ工業株30種平均と日経平均株価(14日午前、東京都中央区)

14日の東京株式市場で日経平均株価が一時前日比800円超安と急落した。8月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが強く、米連邦準備理事会(FRB)が物価の伸び鈍化とともに利上げを緩めるとの楽観論が後退。景気後退による企業業績の悪化が意識されている。6月に続く「CPIショック」が再び発生し、世界で株安が連鎖している。

「FRBが引き締め過ぎに配慮するという市場に広がっていた楽観論が消えた。利上げが予想以上に続く場合の米国企業業績の下方修正リスクを株価は織り込み切れていない。減益決算となってもおかしくない」とピクテ・ジャパンの松元浩運用商品本部シニア・フェローは話す。米主要企業の2022年4~6月期決算は前年同期比8・5%の増益で、業績の底堅さが株価に強気の投資家のよりどころとなってきた。

日経平均は前日の13日までに4日続伸して1200円弱上昇したが、14日の午前だけで一時、その上げ幅の3分の2が消失した。アジアでは香港や台湾が2%安となり、13日には米国が4%安、ドイツで2%安まで下落していた。

起点となったのは13日発表の8月米CPIが市場予想を上回り、インフレへの対応でFRBがさらなる利上げに踏み込むとの懸念が高まったことだ。9月に入り、FRBのブレイナード副議長が「ある時点から引き締めをやり過ぎるリスクが生じる」との発言もあり、ジャクソンホール後に高まった利上げへの警戒がいったん和らいでいたムードが吹き飛んだ。

6月の「CPIショック」はエネルギー価格が上昇し、供給制約も残るなかでおきた。今回はガソリン価格が下落し供給制約も改善されたなかで、なお物価高圧力が強いことが明らかになった。賃金や家賃の上昇を基盤とした、より「粘着性」の強いインフレを退治するには、景気を壊すほどの利上げが必要になると市場関係者の警戒が一気に高まった。

市場ではFRBは来年3月にも3・75%から4%まで利上げし、この水準がターミナルレート(利上げのピーク)と見込まれていた。最大4.3%まで引き上げるとの予測も強まっている。「インフレの継続によって利上げのピークが高くなり、利下げに転じる時期が遅くなるとの両面からの懸念が生じた」とフィデリティ投信の重見吉徳マクロストラテジストは話す。

利上げの終着点が引き上げられれば、金利上昇により景気へ逆風が吹く期間が長くなり、企業業績への打撃となる。国内の個別株でみると、世界景気に連動しやすい景気敏感株の下落も大きい。半導体株のアドバンテスト東京エレクトロン、工作機械のファナックが5%安、産業用ロボットの安川電機も4%安となった。

金利上昇が逆風になりやすい高PER(株価収益率)のソフトバンクグループリクルートホールディングスは5%前後の大幅安となった。

為替市場も大きく揺れた。円相場はCPIの発表前は1ドル=142円前後で推移していた。14日早朝には144円台後半を付ける場面があり、半日で3円ほど円安が進んだことになる。「日米金利差が拡大して円安・ドル高が進みやすく、1998年の安値である147円台を超えて下落する可能性がある」と外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は話す。

焦点となるのは世界の主要な中銀が政策決定会合を開く「中銀ウイーク」となる来週だ。21日にはFRB、22日には日銀、スイス国立銀行、エリザベス女王の死去で延期となったイングランド銀行がそれぞれ金融政策を発表する。投資家が金融政策に敏感な姿勢は続き、当面は相場の変動が大きい展開が続きそうだ。