Zホールディングス(HD)がスマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」を軸にした経済圏の拡大へ本腰を入れている。クレジットカードの名称をPayPayカードに刷新したほか、後払いなどの新サービスを矢継ぎ早に投入。金融サービスのブランドをPayPayに統一し、ヤフーや一休などグループ企業のサービスと一体的に事業を拡大する計画だ。

5月10日からアマゾンジャパンの通販サイトでペイペイのポイントが利用可能になった。「ポイントが二重取りできる」。ネット上では買い物をすると、ペイペイとアマゾンの両方のポイントを獲得できることが話題となった。

ZHDはグループ内にヤフーショッピングやPayPayモールなどのEC(電子商取引)事業を抱え、アマゾンとはしのぎを削る関係にある。競合企業同士の連携に業界関係者からは驚きの声も多かった。

急速に拡大するPayPay経済圏。「私たち自身もここまで盛り上がるとは思っていなかった」。PayPayの中山一郎社長は4月下旬に開いたメディア向け説明会でこう語った。

 

PayPayの決済取扱高は2022年3月期に5兆4436億円と前の期より67%増加した。ユーザー数も4700万人を超え、「22年度の早い段階で5000万人を超えるのではないか」(中山社長)と予想する。小売店の店頭などのオフライン、ネット通販などのオンラインの両面で伸びているのが強みだ。

2月に始めた後払いサービス「PayPayあと払い」は、開始から3カ月足らずで登録者数が100万人を超えた。PayPayアプリ内でボタンを押すだけで、従来のPayPay残高を使った支払いと後払いが簡単に切り替えられる。与信方法などはクレジットカードと同じ仕組みで、後払い利用分は翌月に銀行口座から引き落とされる。

支払いの際の操作はアプリでバーコードを表示するかQRコードを読み取るかで、PayPayとほぼ同じ。クレジットカードとバーコード・QRコード決済を足して2で割ったようなサービスで、新たなユーザーを掘り起こしている。

 

ZHDは20年から金融サービスの「PayPayブランド」への統一を進めている。分かりやすい名称にし、グループの各事業との連携を深める狙いがある。21年4月にジャパンネット銀行をPayPay銀行、10月にはワイジェイカードをPayPayカードに社名変更した。

12月にカードの名称もPayPayカードに変更して発行を開始。カード事業はこれまでもヤフーショッピングとの連携などを軸に利用を増やしてきたが、21年度の取扱高は2兆9000億円と14兆円を超える楽天カードと比べるとまだ少ない。ブランド統一を機に販売促進費も投下して認知度向上を図る。

グループのサービスでたまる各種ポイントもPayPayポイントに統合。22年10月以降にはポイントの外販にも踏み切り、加盟店企業などが顧客に独自のキャンペーンなどでポイントを付与できるようにする。共通ポイントのプラットフォームとして、楽天ポイントなどの競合のサービスを上回る成長を目指す。

 

「銀行や証券、保険などすべての金融サービスがPayPayで完結する『オールインPayPay』を目指す」。Zフィナンシャル副社長やPayPayカード社長を務める谷田智昭氏はこう語る。

カギとなるのは「シナリオ金融」と呼ぶ、サービスやモノの提供に金融サービスを組み込んでいく考え方だ。グループ内で相乗効果を出すには、EC(電子商取引)や旅行などグループ内のサービスと絡めて金融を提供していく必要がある。ポイント外販や加盟店拡大など外に向けた施策と、グループ内の連携強化。PayPayブランドの確立には、内外両面での施策が必要となる。