【ニューヨーク=斉藤雄太】外国為替市場で急速に進む円安に対し、海外投資家の関心が高まっている。28日には一時、約6年半ぶりとなる1ドル=125円台を付け、ここ3週間で10円もの円安・ドル高が進んだ。ユーロやポンドなどの主要通貨に対しても円は独歩安の様相をみせる。世界的な金融引き締めの波が広がるなかでも日銀は緩和継続姿勢を堅持し、さらなる円安を見込む声も広がりつつある。

28日はロンドン市場で対ドルの円相場が急落し、1ドル=125円台を付ける場面があった。日銀が上昇圧力の強まる長期金利の一段高を防ぐため「連続指し値オペ(公開市場操作)」と呼ぶ無制限の国債購入策を発表したことが引き金になった。高インフレ定着を警戒する米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の急速な引き上げを進める構えをみせるなか、日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いが進んだ。

 

円は対ユーロでも一時、1ユーロ=137円台まで下落し、約6年半ぶりの安値水準になった。対ポンドでは1ポンド=164円台と約6年ぶりの安値を付けた。欧州の中央銀行も英イングランド銀行が利上げを進めているほか、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和の縮小を急ぐなどインフレ対応の引き締めモードに傾いている。ここ3週間でドルは対ユーロで一進一退の動きをみせ、外為市場の目線が「ドル高」というより「円安」に向かっている様子がうかがえる。

「かねて円安進行を見込んでいたが、さすがにピッチが速すぎるのでこの相場では(円売り)ポジションをいったん閉じた」(米大手金融機関の市場部門責任者)。市場では急激な円安・ドル高へのスピード警戒感も出ており、28日のニューヨーク市場では1ドル=123円台とやや円高方向に戻す動きもみられた。

ただ「為替のトレーダーはFRBと日銀の進む道が異なることに注目しており、それはすぐには変わらない」(米オアンダのエドワード・モヤ氏)と円売り圧力の継続を見込む声はなお多い。「過去にも円安が進むときは急激に動いたことを考えれば、1ドル=150円もあり得なくはない」(ソシエテ・ジェネラルのアルバート・エドワーズ氏)といった見方も出てきた。

「(物価変動を加味した)米実質金利がなおマイナス圏にあることなどを考えれば、FRBの利上げ織り込みがピークを迎えたとみるのは時期尚早だ」。JPモルガンのマルコ・コラノビッチ氏らも28日付のリポートで「米金利上昇のモメンタム(勢い)を考えれば、ドル高・円安は続く」との見通しを示した。

同時に日銀の黒田東彦総裁が1ドル=125円程度まで円が下落した15年に一段安をけん制した「黒田ライン」を引き合いに出し、125~126円台では日本の政策当局が対応に動く可能性があるとも指摘。輸入物価の上昇など円安の副作用も意識する当局側が口先介入やそれ以上の対応に出てくるかどうかを市場関係者は注視している。