定期的に支払いが発生し、暮らしの「固定費」として無視できないのが光熱費や水道代などの公共料金。最近は口座振替以外にも払い方が多様化し、クレジットカードやスマートフォン決済を使えば効率よく還元を受けられ、節約につながる。料金の上昇が目立ってきた今こそ、賢く払うコツを知って家計の一助にしたい。

電気代やガス代の支払いは銀行口座から自動で引き落とす口座振替が一般的だ。コンビニエンスストアで現金払いをするより手軽なうえ、事業者によっては一律の割引制度もある。東京電力や東京ガスでは毎月55円(税込み)、東京都水道局では毎月50円(税抜き)安くなる。都内の大学院生(24)は「忘れっぽいので引き落としが向いている」と話し、光熱費の支払いに口座振替を使う。

最近は原油価格の上昇などで電気・ガス料金が上がる傾向にあり、暖房使用が増える冬場は家計への影響も気になるところだ。世帯人数が多く使用量の多い家庭は、ポイント還元を受けられるクレジットカードなどを使った方が得になるケースが多い。

たとえば東京電力と契約していて月々の電気代が5500円を超えている家庭は、還元率1.0%のカードで払った方が口座振替より節約効果が大きい。カードブランドによってはさらに高い還元を受けられるものもあり、たとえば「リクルートカード」は還元率が1.2%に設定されている。

 

 

口座振替は電気やガス、水道などで支払日が異なるのに対し、カード払いなら引き落としが毎月決まった日に集中するため管理がしやすい。一方でカードの支払額が増える点には注意が必要。急に大きな出費が発生すると、利用限度額に近づいてしまうこともある。

最近は税金のカード払いも普及しているが、多くで決済手数料が発生する。所得税や贈与税といった国税の支払いの場合、1万円までの支払いでは税込み83円、1万1円から2万円までなら同167円かかる。手数料の水準によっては還元効果が損なわれてしまうこともあるので注意しよう。

少しでも料金を節約したい場合に選択肢になるのが、請求書のバーコードを読み取って払うスマホ決済だ。特定の条件を満たせば高い還元率を狙える。

たとえば「PayPay(ペイペイ)」の「請求書払い」は通常の還元率が0.5%だが、支払金額や回数が所定の条件を満たし、さらにネットサービスのアカウントと連携させれば最大で1.5%になる。「auペイ」の「請求書支払い」も特定のクレジットカードでアプリに入金(チャージ)して使えば、通常0.5%の還元率が1.5%に上がる。

 

都内の男性会社員(55)はペイペイの請求書払いで、固定資産税や都市計画税といった都税を支払っている。高還元の条件の一つである「月に5万円以上の支払い」を達成するため「年間12万円ほどの都税を4回に分割して支払っている」という。スマホ決済は自動車税などの地方税の支払いも基本的に手数料がかからない。2022年12月には国税でも使えるようになる予定だ。

スマホ決済のデメリットは、通常、支払うたびに請求書を読み込む作業が必要になることだ。月払いの電気代などは毎月処理しなければならず、自動で払う口座振替やカードに比べて手間がかかる。

支払先の企業や自治体がスマホ決済に対応しているかも確認しよう。ペイペイの場合、10月時点で1787の地方公共団体・事業者と232の電気・都市ガス事業者の公共料金の支払いに対応している。導入する企業や自治体は増えているが、決済サービスによっては使えないものもある。

公共料金を安く抑える方法は決済手段以外にもある。前払いや一括払いで割引を受けられるのがNHK受信料。「6カ月前払い」「12カ月前払い」を選択すればそれぞれ4.6%、7.2%ほど安くなる。ケーブルテレビの利用料と一緒に払う「団体一括支払い」でも割安になる。

 

ファイナンシャルプランナー(FP)の丸山晴美氏は「国民年金保険料も前納でまとめて払えば大きな節約になる」と話す。口座振替で2年前納を選択すれば1万5850円の割引になる。電気やガスについては「価格比較サイトを活用して割安なプランを探すのも一案」という。

公共料金は生活の基礎となる大切な支出だ。払い忘れたり滞納したりしないよう、自分に合った方法を選ぶことも重要になる。