【ベルリン=石川潤】欧州連合(EU)統計局は30日、2021年4~6月のユーロ圏の域内総生産(GDP)が速報値で前期比2.0%増になったと発表した。ロックダウン(都市封鎖)の緩和で経済の正常化が進み、3四半期ぶりのプラス成長となった。7~9月も力強い成長を予想する声が多いが、新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)の拡大が先行きに影を落としつつある。

 

欧州は1~3月まで2四半期連続のマイナス成長だったが、厳格なロックダウンとワクチンの普及で新規感染者が急減。春以降の経済再開による個人消費の増加が成長を加速させた。年率換算の成長率は8.3%で、4~6月だけに限ってみれば、巨額の財政出動でアクセルを踏み込む米国の6.5%を上回るペースの成長となった。

 

 

国別ではドイツが前期比1.5%増、フランスが0.9%増、イタリアが2.7%増だった。ユーロ圏以外の加盟国も含めたEU全体では1.9%増だった。地域によって強弱はあるが、欧州全体で回復基調が再び強まっている。

 

英IHSマークイットが23日公表したユーロ圏の7月の購買担当者景気指数(PMI、総合)が21年ぶりの高水準になるなど、成長の勢いは7月に入っても衰えていない。EUの欧州委員会が7月初めに発表した夏の経済見通しによると、7~9月も高成長が続き、21年は通年で5%近い成長となる見込みだ。

 

この見通しによると、ユーロ圏のGDPがコロナ危機前の水準を回復するのは21年10~12月となる。4~6月に水準回復を果たした米国と比べれば遅いが、22年初めという予想だった春時点に比べれば、回復のペースは速まっている。

 

問題は、足元で急速に広がるデルタ型のウイルスがユーロ圏経済に与える影響だ。ワクチンの普及で重症者や死者の数は今のところ抑えられている。それでもフランスやイタリアなどは行動制限の強化に動いており、成長の足かせとなる可能性がある。

 

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は「デルタ型がサービス業の回復を鈍らせかねない」と警告する。独Ifo経済研究所の7月の企業景況感指数が6カ月ぶりに悪化するなど、先行きの楽観論は後退しつつある。