【北京=川手伊織】中国国家統計局が16日発表した2021年1~3月の国内総生産(GDP)は物価の変動を除いた実質で前年同期比18.3%増えた。新型コロナウイルスのまん延でマイナス成長となった前年の反動で、四半期の成長率として記録がある1992年以降で最大の伸びとなった。輸出や投資など企業部門が堅調だった。

 

成長率は、日本経済新聞社と日経QUICKニュースが共同で実施した市場調査の平均(17.9%)を上回った。

 

 

20年の1~3月の実質ベースでのGDPは、前年同期比で6.8%減だった。21年1~3月のGDPは19年の同期実績を10.3%上回った。

 

20年1~3月のGDPは前期比での伸び率は0.6%だった。20年10~12月(3.2%)より減速した。先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は2.4%程度となる。当局が春節(旧正月)休暇を前に帰省や旅行を自粛するよう呼びかけるなど新型コロナを警戒した行動制限が、消費回復の重荷となった。

 

景気の実感に近い名目GDPは前年同期と比べて21.2%増えた。

 

16日はGDPと同時に他の統計も公表した。マンションや工場などの固定資産投資は1~3月に25.6%伸びた。このうち民間投資は26.0%増えた。20年はインフラ投資を担う国有企業がけん引役となったが、民間の設備投資も持ち直している。

 

不動産販売も大幅に伸びた。1~3月の販売面積は63.8%増となった。大都市で住宅ローンの厳格化など取引規制の公表が相次ぎ、購入を急ぐ動きが広がったとの見方がある。

 

輸出(ドル建て)は前年同期を5割上回った。マスクやパソコンなど新型コロナ関連のほか、衣料や玩具など伝統的な輸出品も好調だった。輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は前年同期の9倍に膨らんだ。

 

1~3月の生産は前年同期比24.5%増えた。輸出や投資など需要が堅調だった。多くの工場労働者が春節時に帰省せず勤務地に残ったため、休暇後、工場を早めに稼働できたことも生産を押し上げた。

 

企業部門とは対照的だったのが個人消費だ。

 

百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売などを合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は前年同期比伸び率こそ20年の反動で33.9%の大幅増となった。ただ1~3月各月の前月比をみると、1月は0.92%減少した。

 

例年、春節前後は消費を刺激する効果に期待が集まる。今年は巣ごもり消費でネット販売は好調だった半面、農村を中心に実店舗を通じた消費は勢いを欠いた。

 

中国政府は21年の成長率目標を「6%以上」と掲げた。新型コロナの発生源となった中国は20年1~3月にマイナス成長を記録したのち、早期に感染を抑え込み4~6月からは経済の正常化が進んだ。21年4~6月以降の前年同期比伸び率は徐々に鈍化していく公算が大きい。