【ワシントン=河浪武史】世界経済の勢力図の優勝劣敗が鮮明になってきた。国際通貨基金(IMF)の予測では中国は2021年に8%成長に戻り、米国との経済規模の差が25%まで縮まる。先進国、新興国の優劣を分けるのは、徹底した新型コロナウイルス感染抑制と、財政出動を可能にする財政の健全性がカギになる。

8日まで約1週間続いた中国の国慶節(建国記念日)を祝う大型連休。南部リゾート地の海南島では、免税店が旅行客でにぎわった。中国税関総署によると、連休中の免税品購入客は前年同期比44%増えた。同時期の国内旅行者数は6億人強と前年の8割に回復した。

 

 

新規感染者数がほぼゼロまで減った中国はいち早く危機を封じ込めた。経済は4~6月期に3.2%成長と復調し、7~9月期の予測は5%強。4~6月期の実質国内総生産(GDP)はドル換算で3.3兆ドル(約350兆円)となり、年率換算で30%超のマイナスだった米国(4.3兆ドル)との差を23%に縮めた。

中国の回復が目立つのは、製造業の比率が高いためだ。サービス業中心の国で外出規制の影響が長引くなか、製造業はコロナ危機の打撃が比較的小さい。中国のGDPの約4割は製造部門で、輸出は9月に前年同月比9.9%増と1年半ぶりの高水準となった。

IMFの予測通りに推移すれば、米国のGDPは単純計算で21年に21.2兆ドル、中国は15.8兆ドルとなる。中国の経済規模は金融危機の08年時点で米国の31%だったが、21年には75%に迫る。

 

 

19年時点で世界経済に占める先進国の比率は43%で、新興・途上国は57%だった。IMFは先進国の成長率を20年はマイナス5.8%、21年はプラス3.9%と予測し、新興・途上国はマイナス3.3%、その後はプラス6.0%と見込む。回復の早い新興・途上国の比率は一段と高まる。

コロナ危機後の勝ち組の条件は「感染抑制」と「健全財政」。成長のけん引役と期待された新興国も濃淡が分かれる。

ベトナムは1~9月期の経済成長率が前年同期比2%と、プラス圏を維持する。累計感染者数がわずか約1100人で、GDPに占める工業・建設業の比率も3割超と高い。東南アジア諸国連合(ASEAN)各国が軒並みマイナス成長の見通しのなか、経済規模で上位のタイやシンガポールとの差が一段と縮む。

財政余力が乏しい国は、巨額の財政出動に動きにくい。ブラジルは感染封じ込めに失敗し、20年は5.8%の大幅なマイナス成長となりそうだ。通貨レアルは対ドルで年初から2割も下落し、財政不安で低所得者への現金給付を白紙撤回した。南アフリカやトルコも通貨下落による財政不安で成長加速の道筋が描けない。逆に外貨準備の豊富なインドネシアは大規模な財政出動もあり、20年の成長率はマイナス1%前後にとどまりそうだ。

先進国でも優劣は明らかだ。米国は中国の追い上げを許すものの、21年に3.1%の経済成長を見込む。巨大IT企業はコロナ危機による在宅勤務などがむしろ追い風で、米アップルは4~6月期の売上高が前年同期比11%も増えた。トランプ政権はGDP比15%にあたる3兆ドルの財政出動に踏みきり、20年のマイナス成長幅は当初の予測より大幅に縮小した。