【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権は29日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため新たな旅行制限を実施すると発表した。イランに過去14日間滞在した外国人の入国を拒否するほか、韓国とイタリアの一部地域への渡航を中止するよう米国人に勧告した。米国内では初めての死者も確認した。米国経済や金融市場への影響が一段と広がる可能性がある。

 

トランプ大統領らがホワイトハウスで記者会見して明らかにした。国務省によると、渡航中止勧告は感染者が多い韓国南東部の大邱市、イタリア北部のロンバルディア、ベネトが対象。両国の警戒レベルは4段階のうち上から2番目の「レベル3」とした。中国とイランはレベル4で全土への渡航中止を勧告済みだ。

入国規制については、2月上旬から中国に過去14日間の滞在歴がある外国人の入国を拒否しており、イランも対象に加えた。トランプ氏はメキシコとの南部国境でも入国規制を実施するか問われ「検討している」と答えたが、後で「議論していない」と修正した。

米国での初の死者は西部ワシントン州の50歳代で、持病を抱えていたという。トランプ氏は女性と発表したが、同州当局者は男性と指摘した。外国への渡航歴や感染者との接触は確認されていないという。

トランプ氏は11月の大統領選を控え、国民の不満が政権に向わないよう神経をとがらせている。「今後、感染例がさらに増える可能性が高い」と指摘しつつも「健康な人は完治する」と冷静な対応を呼びかけた。経済や株価への影響を抑えるため、米連邦準備理事会(FRB)に利下げするよう改めて圧力をかけた。3月2日には製薬会社と会議を開き、ワクチン開発について話し合う予定だ。

米国内でもアジアに近い西海岸を中心に新型コロナの感染例が増えており、トランプ氏によると22人に上る。ワシントン州当局者は29日、州内の養護施設で感染拡大の兆候がみられると明らかにした。西部カリフォルニア州でも感染経路が不明な「市中感染」の可能性がある事例が見つかっている。