【ニューヨーク=大島有美子】新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米市場がリスク回避姿勢を強めている。27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比1190ドル95セント安の2万5766ドル64セントで取引を終えた。下げ幅は過去最大を記録した。一方、安全資産とされる米国債や金が買われ、長期金利は過去最低を更新した。米企業が業績予想の未達を相次ぎ公表し、実体経済が停滞する懸念が広がっている。

ダウ平均は6日続落。6日間の下げ幅は3581ドルに達した。12日につけた過去最高値(2万9551ドル)からの下落率は10%を超えた。2019年8月23日(2万5628ドル)以来、半年ぶりの安値となった。

 

安全資産とされる米国債や金は買われた。米債券市場では長期金利の指標となる10年物国債利回りが1.24%台に下がり、過去最低を更新した。金のニューヨーク先物価格は一時1トロイオンス1660ドルを超え、約7年ぶりの高値圏につけた。原油は需要減の懸念から売られ、ニューヨーク原油先物相場は期近の4月物が前日比1.64ドル(3.4%)安の1バレル47.09ドルで取引を終えた。

米企業が新型コロナが業績を下押しすると相次ぎ公表し始めたことも投資家心理を冷やしている。米マイクロソフトは26日、基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」などパソコン関連部門の1~3月期の売上高が従来予想に届かない見込みと公表した。アップルも供給面の遅れから1~3月期の売上高予想が「達成できない見込み」としている。27日にマイクロソフト株は7%、アップル株は6.5%それぞれ下げた。

売上高予想の未達を27日に公表した決済サービス大手のペイパルは、新型コロナで「国をまたいだネット通販の決済が減る」と説明。クレジットカード大手の米マスターカードも、新型コロナが売上高の増加率を2~3ポイント押し下げるとした。

在中国の米国商工会議所は27日、中国に拠点を置く会員企業約170社に対する調査結果を公表した。新型コロナの拡大が8月末まで収束しなかった場合「中国での20年の売上高が半減する」と答えた企業が2割に上った。米ゴールドマン・サックスは同日、新型コロナの広がりが米企業業績を圧迫し、20年の1株当たり利益の増加率がゼロになるとの試算を公表。市場は新型コロナの動向と企業活動への影響を注視している。

欧州市場でもリスク回避の動きから株式への売りが膨らんでいる。27日のロンドン株式市場で、FTSE100種総合株価指数が前日比246ポイント安の6796となり、約1年1カ月ぶりの安値で引けた。鉄鋼や航空会社や旅行など幅広い業種の株式が売られた。

ドイツのフランクフルト株式市場では、ドイツ株式指数(DAX)が6日続落し、前日比407ポイント安の12367で終えた。約4カ月半ぶりの安値で、航空のルフトハンザやドイツ銀行など、構成銘柄のほぼ全てが値下がりした。