だりや荘
夫と妻、そして妻の姉。
亡くなった両親が残した民宿だりや荘で、
3人の関係は、密やかに、濃密に絡まりあっていく。
人を愛するということは、
多かれ少なかれ、その人に絡めとられることだと思う。
絡められることが喜びであり苦しみなのだ。
迅人に一目ぼれをして、体当たりのようにぶつかっていく杏。
迅人はその杏のまっすぐさに惹かれる。
同時に、はかない妖精のような姉の椿にも、また。
迅人のシンプルな思考には尊敬の念さえ抱く。
子供のように率直で、自信家で、ゆるぎなく、バカな男なのだ、迅人は。
そして姉妹はそんな男をどこまでも赦す。
時には心の中で叫びながら、涙を流しながら。
不思議なのは、ここにいる誰もが実は自由であるということだ。
自由であるのに、不自由極まりない関係から飛び出そうとはしない。
(もがくけれども)
最後は「え。うそ。そうきたか」という感じだったが、
でも私もやはり杏と同じことをしてしまうかもしれない。
読み終わった後、あきらめと哀しみと不思議な満足感の残るお話でした。
あれ。ずっと「だりあ荘」だと思ってました。
「だりや」でしたね。写真みて気づいたー。