喫茶店で滅茶苦茶にされた書類は、何とかまだ効力を持っていて、業務にこれといった支障はありませんでした。客先で若干恥ずかしい思いはしたけど、それでも何事も無く済ませる事が出来たので安心しました。


家に帰ってから私は、昼間に喫茶店でもらった名刺を見て、連絡するか否か迷いました。もうクリーニング代以上のお金は必要無いし、これ以上責め立てるのも面倒だったので、もう私からは連絡しなくていいや・・・と思い、そのまま忘れる事にしました。



翌日の夕方、携帯が鳴りました。知らない電話番号からの着信でした。


「はい?」

「あの、葉月さんでしょうか?K喫茶店のユウキです。」

「あぁ・・・!」

「突然のお電話で申し訳ございません。昨日は大変申し訳ございませんでした。その後、書類の方はどうなったのか・・・心配でしたのでご連絡差し上げた次第です。」

「もう大丈夫ですよ、書類の方も大事にはならなかったし。」

「そうですか、それは安心しました。でも・・・ご迷惑をお掛けしましたので、お詫びをさせて頂きたいと考えています。」

「もう本当に結構ですよ、何も心配はいらないので。お気遣いありがとうございます。」

「そうですか・・・。では、次回ご来店頂いた時にサービスさせて頂きますので、今後ともどうかよろしくお願いします。」


もう二度と行く事は無いと思っていたので、私は社交辞令のつもりで「そうですね、その時はよろしくお願いします」とだけ答え、電話を切りました。