今宵のお話は、漁の道具の紹介です。
自分はイカの一本釣り漁師になる為に山口県に移住してきました。
今は研修中で4人の師匠に付いて、色々な事を学んでいます。
イカの一本釣り漁に欠かせないのがイカを掛ける針の付いたスッテと呼ばれる疑似餌です。
これがスッテと呼ばれる疑似餌です。
写真下8本が初めて自分で作ったスッテです。
今見ると酷いですね(笑)
このスッテは使っているうちにイカの墨で黒くなったり、イカにかじられて布が切れたりしてきます。
漁師はそれを幾つか溜めてから家に持ち帰り、布を張替え再利用します。
そこで必要になるのがこの通称「パックんちょ」という道具です。
先日これを大先輩現役漁師さんから頂きました。
「おいちのび。少しは慣れたか?儂はこれから散髪に行くんじゃ。
散髪が終わったらスッテを巻かにゃならん。ちのびはパックんちょ持っとるか?」
師匠の船の上で仕掛けを作っていると自転車に乗った大先輩漁師さんが声を掛けてくれました。
「欲しいんですけど漁協で品切れらしく 在庫が無いので注文しています」こう答えました。
すると「儂がやるから散髪終わったころに儂ん家取りに来い、買う事ない」こう言って自転車をこいで行ってしまいました。
大先輩漁師さんの背中に向かって「ありがとうございます!」と大きな声でお礼を言います。
…でも家ってどこだ?それに今日火曜日だから床屋は…
2分程で大先輩漁師は戻ってきました。
「散髪屋は休みじゃった、何でじゃ。儂ん家はあっちの空き家の隣じゃ、表札が出とるからわかるっ」そう言って自転車をこいで行ってしまいました。
空き家だらけでわかんないよ汗。
まっ、何とかなるだろう。早く仕掛け終わらそ汗
それから30分程、ようやく目途がついて仕掛けも残すところ後1つだ。
そう思っている所に向こうから自転車を漕ぎながら大きな声で声を掛けてくる人が…
「結局儂が持ってきてやった。困ったもんじゃ」そう言って大先輩漁師さんがくれたのがこれです。
通称パックんちょ。喉から手が出る程欲しかった涙
師匠が言っていましたが、一昔前で1個7000円位したらしく、今ではもっとするのでは?との事。
プラスティックの素のスッテに 綿と布を巻きこのパックんちょで抑えハンダで仮止め→その後針と糸で縫いあわせる。
こうやってスッテを作っていきます。
何しろこれでスッテが作れます!やった~
師匠でもない大先輩漁師さんが声を掛けてくれ、しかも大切な道具を自分にくれました。
皆に近づけたというより仲間に入れてもらえたような何とも言えない感じで、本当に嬉しいです。
大切にします。
今宵はこれまでにしとうございます。
次回のお話は、……