ある程度補助剤の知識がある方はこのような事を聞いたことがあると思います。
「中国選手は無機の補助剤を使っているので大会の検査の時にバレない」
割とネットではあたかも基本事項であるかのようにかれこれ数年言われているようです。
中には有機溶剤と無機溶剤の区別どころか有機物と無機物の違いすら勘違いしている文章も多々見受けられ、これには呆れるしかありません。さらに言ってしまえば本当に無機補助剤が存在するのか僕には疑問です。なぜなら無機補助剤であると化学的に証明されている補助剤を僕は見たことがないからです。
海夫の無機補助剤グルーなんて言われてたものが数年前に存在していたのは事実ですが、接着能力を持っている点やニオイが強い点などを考慮すると有機補助剤、いや、有機溶剤のグルーと考えるのが妥当です。
無機補助剤グルーと言われていたボトルの画像を見る限りでも無機という文字は見当たりません。誰が無機って言ったんですかね?
ここで一旦有機物と無機物、有機溶剤と無機溶剤の違いを確認しておきましょう。
【1】有機物
有機物とは炭素を含む化合物のことを指します。ただし、一酸化炭素や二酸化炭素、炭酸カルシウムや炭酸水素ナトリウムのような炭酸塩や炭酸水素塩、シアン化水素やシアン化カリウムなどのシアン化合物を除きます。炭素によって分子の基本骨格が形成されている化合物が有機物です。
化学的に言えば炭素原子の最外殻L殻の4つの不対電子を用いて他の原子と共有結合を形成する化合物です。
ガソリンや灯油などの炭化水素、オリーブオイルなどの油、砂糖、紙、糸、ビニールやナイロンなど実に多くの物質が有機物に該当します。
【2】無機物
簡単に言えば有機物以外の全ての物質は無機物です。酸素や水、金属、塩、ガラスなどが身近なものでしょうか。有機物以外の全ての物質というとものすごく種類が多いように感じますが実際には有機物のほうが圧倒的に多くの種類があります。
【3】有機溶剤
他の物質を溶かす物質を溶媒、溶媒に溶かす物質を溶質と言いますが、有機物の溶媒が有機溶剤と呼ばれます。例えば、トルエンに生ゴムを溶かした場合、トルエンを有機溶剤、生ゴムを溶質と呼びます。オリーブオイルに何かしらの物質を溶かした場合はオリーブオイルも有機溶剤ということになります。
【4】無機溶剤
溶媒が無機物である場合は無機溶剤と呼びます。例えば水に塩を溶かした場合は水が無機溶剤、塩が溶質ということになります。有名な無機溶剤としては水の他に硫酸や硝酸なとが挙げられます。
なるべく簡単な説明をしたつもりですがどうでしょうか?有機物の説明には一部高校化学の用語を使いました。
以前販売されていた補助剤であるエコロエクスパンダーは鉱物油=炭化水素=有機物でしたし、スピードグルーの主成分であったトルエンやヘプタン、ゴムのりの主成分であるノルマルヘキサンや酢酸ブチルはどれも有機溶剤であり、無機溶剤を使った補助剤は僕は見たことがありません。タオバオなどで補助剤を探してみると確かに無機って書いてあるものがあるのですが果たして本当なのかは大いに疑問です。
では無機の補助剤は存在し得ないのか?
それはなかなか微妙なところです。
シリコーンオイルというのをご存知でしょうか?シリコーンオイルとは基本分子骨格がケイ素と酸素でできたオイルでそこにメチル基(炭素原子に水素原子が3個ついた基)が基本的についたオイルで、基本分子骨格がケイ素と酸素である点は無機物と言えますがメチル基がついている点は有機物ともとれる有機物と無機物の中間のようなオイルです。中にはメチル基ではなくフェニル基や水素原子のついたモノもあり種類が豊富なのですが、これらを無機物とすれば無機補助剤も存在する可能性が出てきます。シリコーンオイルで補助剤効果が出るかはある程度推測することはできますが実験していないのでまだなんとも言えません。シリコーンオイルで補助剤効果が出るのなら無機補助剤と言えるのではないか、そう考えたワタクシでございました。
実際どうなのでしょうかね?
では、今日はこの辺で!