2023年12月16日(土)第1部、第2部
2023年12月23日(土)第3部
12月の歌舞伎座、断トツで素晴らかったのが松緑の俵星玄蕃の初演。松緑も漸く自分の当たり役を忠臣蔵中心に見つかったのではないでしょうか?昨年は荒川十太夫で大当たりし、今回も忠臣蔵外伝の形での俵星玄蕃、講談師の神田松鯉の監修で台本化されましたが、物語の流れもスムーズ、無骨な人物像が松緑に完全に合っています。坂東亀蔵も、なかなか主役級の役に恵まれないですが、ここでは松緑に真っ直ぐ勝負しているのが清々しい。何とも心持ちが良くなる芝居でした。
天守物語は玉三郎が冨姫を七之助に譲り、自身は妹分の亀姫役で出演。図書之介は虎之介が抜擢されていました。七之助の冨姫、虎之介の図書之介は、中村座の姫路公演で白鷺城(姫路城)で組み、玉三郎が演出しており、それを歌舞伎座での上演となtったもの。虎之介も本格的な主役級の役では歌舞伎座初出演でしょう。実は天守物語自体は一寸苦手、見所、聴きどころが色々ありますが、意外に緊張感が続かない場面があり、その辺りで意識が飛ぶことが正直あります。が、今回は芝居の流れが良いものとなっていました。それにしても玉三郎が登場した瞬間、舞台の空気が変わるのは流石ですね。
2部の爪王は、七之助の美しいこと!3部の猩猩は主役二人よりも種之介のセンスの良さが光っていました(それにしても種之介は器用な役者ですね)
1部は岡崎猫は巳之助が化け猫もので、初めて観ましたが、なかなかに面白い芝居で、8月の歌舞伎座公演で上演されるようなものでした。話題の初音ミクの千本桜、満杯の観客でいつもの歌舞伎座とは別世界。NTTの技術で意外なほど初音ミクの登場シーンは自然でした。獅童もこの6年ほど様々な劇場で上演してきて歌舞伎座でということで相当気合が入っていたのでしょう。新しい観客を歌舞伎の世界へという意味では成功だったと思います。しかし・・・流石に付き合うのは今回が最後かな。ヘイ、ヘイと手拍子を求めたり、スタンディングさせてペンライトを振らせたり。何よりも視覚的な意味以外はストーリーがあまりにないことには閉口してしまいました。が、無碍に否定はしません、歌舞伎も多様性があるのですから。同じ新作でも2部の俵星玄蕃とは全く異なる訳ですが、8月、12月は色々と挑戦の公演月としていくのでしょう、では。