2023年10月1日(日)新国立劇場 14時開演

2023/2024シーズン
ジャコモ・プッチーニ
修道女アンジェリカ<新制作>
Suor Angelica / Giacomo Puccini
全1幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
モーリス・ラヴェル
子どもと魔法<新制作>
L'Enfant et les Sortilèges / Maurice Ravel
全2部〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉
予定上演時間:約2時間(休憩含む)

 

先日の庄司のコンサートの選曲センスも素晴らしいものがありましたが、新国オープニングのダブルビル、母をテーマにした対照的な作品を組み合わせたもの。何よりも新国の舞台装置機能を存分に使っての演出、トスカとキース・ウォーナーのTOKYOリングあたりでしか有効活用されていませんでしたが、今回は非常に効果的。

 

先年ザルツブルク音楽祭でグレゴリアンがプッチーニ3部作のすべてに出演するというものがあり、Youtubeで抜粋など観ましたが、修女アンジェリカも心打たれる歌唱でした(来年5月の東京リサイタルは行きます!)。今回のイゾットンも強さと哀しみを見事に表現、人によっては強過ぎると感じられた方もおられたかもしれませんが、小生にはストレートに伝わってきました。新国でのトスカも評判でしたが、イゾットンやるな!また出演して貰いたいものです。急遽代役の公爵夫人役の斎藤も低音が響きこの役柄に必要な格も確り。この役はスペードの女王と並んで、嘗ての名メゾが出演する機会が多いものですが、かなり以前にオブラスツォワの公爵夫人を聴いて腰を抜かすほど驚いたことを想い出しました。

 

後半のこどもと魔法、ラヴェル好きには堪らない曲。ダフニス、マ・メール・ロワ、感傷的ワルツなどの要素が散りばめられ、くすっと笑える引用もいくつか。ブリオのこのこども役を得意にしていて、ミッコ・フランクの同オペラのCDでもこの役を歌っていました。流石に手の内に入った役で、歌詞はともかく、歌唱自体は極端なテクニックは必要ないのですが、作り過ぎず、かといって流しても面白みがないこの役を等身大で表現してしました。駄々っ子、やんちゃ、度が過ぎた悪戯、素直に反省できないもどかしさ、後悔、そして優しさ、最後は皆に囲まれて、ママ、の一言でオペラはクロージング。何度聴いても最後の、ママ、で完堕ちです(笑)。衣装も素敵でした。

 

沼尻はこの種の音楽を演奏すると上手いし、東フィルも良く応えていたと思います。ここ数年、東フィルは以前よりもヒット率が高まってきているような気が、、、また言い過ぎるとガッカリすることも多いので、これ以上は封印(笑)。由来が修道院で作られたビールであるベルギーのCHIMAYを幕間に美味しく頂きました、では。

 

 

【修道女アンジェリカ】夕暮れの修道院。礼拝を終え修道女たちは、アンジェリカは面会を待ち続けているのだと噂する。ついに面会の夫人が訪れる。アンジェリカの叔母の公爵夫人である。夫人はアンジェリカの妹の結婚のため、両親の遺産を放棄し妹へ与えるようにと遺産整理の手続きに来たのだ。アンジェリカは未婚の母であり、そのために7年前、子どもと引き離され修道院へ入れられていた。妹の結婚を喜び、わが子の様子をおずおずと尋ねるアンジェリカに、公爵夫人が子どもは2年前に亡くなったと伝える。悲嘆にくれるアンジェリカ。深夜、アンジェリカはひっそりと薬草を煎じて毒薬を作り、息子のもとへ旅立とうと毒をあおるが、すぐに自殺の大罪を犯しては天国へ行けないことに気づき絶望する。罪を悔い、聖母マリアに祈りを捧げるアンジェリカに奇蹟が起こり、天使の合唱の中、アンジェリカは息子に導かれ息を引き取る。

【子どもと魔法】宿題がいやで文句だらけの男の子。お母さんは怒って、味気ないパンと苦いお茶をおやつに置いていく。男の子はポットやカップを割ったり、リスや猫をいじめたり、暖炉をかき回してやかんを引っくり返したり、壁に落書きしたり、時計を壊したり本を破いたりと暴れ放題。すると椅子が動いて「乱暴な子はまっぴら」とダンスを始める。時計も怒るし、ポットもカップも脅かすし、「悪い子を焼き殺そう」と火まで追いかけてくる。壁紙から落書きの羊飼い、破れた本からおとぎ話のお姫様、そして教科書から算数の問題を出す妙なおじいさんまで登場。男の子が庭に逃げ出すと、寄り掛かった木が「お前がつけた傷だ」とうめくのでびっくり。トンボやこうもり、カエルと、いじめられた生き物たちも次々に集まる。男の子が思わず「ママ」と叫ぶと、生き物たちが仕返ししようと飛びかかって大騒ぎに。怪我してしまったリスを男の子が手当てすると、生き物たちは子どもの優しいところに気づいて、気を失った男の子を助けて家まで運んで「ママ」と声をかけ、「坊やはいい子になった」と言って消えていく。月明かりのもと、目を覚ました男の子が「ママ」と呼びかける。