2023年6月10日(土)歌舞伎座

猿之助があのようなことになり、壱太郎が代演となった6月大歌舞伎。詳細はわからないので軽率なことは言えませんが、またいつか観たいと思っていた黒塚はもう永遠にその機会はないのかと想うと、兎にも角にも残念です。

 

傾城反魂香の又平のやくどころは、御浜御殿の助右衛門と並んで、一寸過剰演技気味の傾向がある中車には合うのでしょうね。中川右介などは酷評でしたが、一般的には壱太郎の熱演もあって好評でした。たしかに松竹新喜劇的なところはありましたが(笑)、結構楽しめました。続いての浮世又平住家は初めて観ました。又平が描いた絵が飛び出して躍動し始める舞台で、続けて観るとおまけ的な感じがして楽しめました。児雷也は、正直印象に残らず。扇獅子は左團次が亡くなり差し替えられた演目。若手女形の踊りが清々しく気持ちの良い舞台でした。

 

夜の部は義経千本桜、仁左衛門のいがみの権太です。張りこんで(笑)1階席の良い席で観たのですが、大正解。過去数度観た仁左衛門のいがみの権太の中でも屈指の名演でした。表情の豊かさ、男の可愛さ、情けなさ、様式美も素晴らしいバランスで表現、口跡も圧倒的。仁左衛門の振りとなる木の実の場面から上演するのが常ですが、これは初めて観る人にも親切ですし、何よりユーモアもたっぷりで面白味もあります。少し壁に当たっている感のある千之助、小金吾を軽妙かつ、立ち廻りでは良く動いていました。梅花の母およね、味わいあり。この舞台は観て良かった。

 

最後は松緑の狐忠信。踊り的な動きに軽みがなく体型的に苦しいのか、バタバタ感が目に付いてしまいました。助演も東蔵・時蔵以外はイマイチで残念。いがみの権太との差が歴然としていたと言わざるを得ないでしょう、では。