2023年4月13日(木)11:00 ~

隼人と染五郎のブロマンス的で幻想的でもある舞台かと想像していたんのですが、猿之助は原作を尊重しながらも、古典の約束事・パロディなども織り交ぜ、若手の出演者それぞれにスポットライトを当ててかなり上手くこの陰陽師の世界を歌舞伎化することに成功していました。10年前のものは観てはいませんが、かなりテイストが変わり、より歌舞伎らしくなったのでしょうね。

 

主役の隼人は序幕、つまり開演してから1時間は登場せず、染五郎は更にその後で出番も少な目。隼人は妖しげな清明の空気感を纏わせなかなかのもの、30歳近くなって成長したものです、10代後半からしばし可能性を感じて贔屓にしていたので感慨深いものです。染五郎は前面に出てこないので一寸損な役だったですね。

 

目立ったのは壱太郎の滝夜叉姫と興世王の右近、右近はある意味美味しい役で、ひょっとしたら一番出番が多かったのかもしれませんが、口跡が明確で声量もあり、ここ暫く見ていなかったですが、出色の出来栄え。壱太郎も緩急ついた演技で、こちらも歌舞伎らしい女形でありつつ、動きも機敏で大いに気に入りました。巳之助、福之助も出番が多く大健闘。全体を猿之助が狂言回し的に支え、ギャグも入れつつ、最後はなぜか道満として宙乗りをするという、外連味もたっぷりな演出でした。もう少し染五郎を観たかったのですが、他の役者、特に右近が良かったので満足できた公演でした、では。

 

 

新・陰陽師(しんおんみょうじ)
花形俳優が魅せる新たな「陰陽師」の世界
 時は平安時代。故郷である東国の民のために朝廷に反旗を翻した平将門は、興世王らと関八州を掌握します。朝廷はこれを放っておくまいと、将門の旧友である俵藤太に将門討伐の勅命を出します。藤太は、帝の寵愛を受ける桔梗の前を恩賞に所望し、それを条件に、東国へ向かうことを決意。そこへ、妖術遣いの陰陽師・蘆屋道満が現れ、将門を討つためにと藤太に1本の鏑矢を贈りますが、道満のその姿からは、いかにも怪しい雰囲気が漂います…。この鏑矢を手に東国へ赴き将門を討った藤太ですが、打ち落としたはずの将門の首はどこかへ消え、行方が分からなくなってしまいます。
 さて、この一件で将門の祟りを案じるのは、都で評判の若き陰陽師・安倍晴明と友人で笛の名手である源博雅。ある日二人は、糸滝と名のる娘に出会います。博雅がひと目で心奪われた美しき彼女の正体は、実は将門の妹・滝夜叉姫で…。怪異の続く京の都で、渦巻く陰謀。将門の蘇生を企む者たちに、大蛇丸らの加勢を得た安倍晴明たちが立ち向かいます。
 平安時代に実在した陰陽師・安倍晴明。彼を主人公に夢枕獏が描いた伝奇小説「陰陽師」は多くの人々の心を掴み、一大ブームを巻き起こしました。コミックをはじめ、映画、テレビドラマとさまざまなジャンルでも取り上げられたこの人気小説をもとに、平成25(2013)年、新開場した歌舞伎座で初めての新作歌舞伎として上演されたのが『陰陽師』「滝夜叉姫」です。このたび、新開場十周年を記念して次代を担う花形俳優が顔をそろえ、新たな「陰陽師」の世界が誕生します。歌舞伎ならではの演出や工夫が凝らされた、壮大なスケールでお届けする注目の新作にご期待ください。