新国立劇場 開場25周年記念公演
ジュゼッペ・ヴェルディ
アイーダ
Aida / Giuseppe Verdi
全4幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
2023年4月11日(火)14:00開演
上演時間:約3時間50分(第1幕45分 休憩25分 第2幕45分 休憩25分 第3幕35分 休憩20分 第4幕35分)

 

 

新国を代表する豪華プロダクション、ゼッフィレッリ演出のアイーダ。周年記念などで上演されてきました。6回目の上演で、過去では2回のファンティーニのアイーダが出色、ラダメスは開放的テノールのクピードが印象に残っています。ここ2回の上演は歌手陣が全体的に弱めでフラストレーションが残る上演でしたが、今回はまずまずの出来栄え。

 

リリコ、レッジェーロのファルノッキアがアイーダに挑戦ということでしたが、結果的には成功していたのではないでしょうか?かなり好みが分かれると思いますが、フレーニのアイーダを受け入れることができる方であれば、きっとファルノッキアも気に入られるはず。勝ちて帰れや終幕での繊細な表現、声はリリコではあるものの、劇性の表現自体はしっかりしており、ヴィブラートで強い声だけのアイーダよりずっと素晴らしいものになっていました。

 

アロニカはいつも出し惜しみの印象、この日も第1幕から第2幕までは声をセーブ気味、第3幕から喉を解放しはじめてからの響きは力強いもの、でもなんだか中途半端な印象は過去と変わらず。アムネリスのアイリーン・ロバーツは初めて聞く名前で、最初はかなりヴィブラートがきつくどうなのかなと心配になったのですが、押し出しがあり、声が必要以上に太くなく(かつてのセメンチェクなどは太いだけのような・・)、感情表現が豊かで前に声が飛ぶので聴き応えありで結果的には合格点。期待以上だったのがアモナズロの須藤、過去聴いた中ではベスト、この声域が一番響くのでしょうね。若干粗野な表現がこの役処に嵌っており、ポジティブサプライズとなりました。

 

伊藤の国王は品格もあり良いのですが、もう少し声量が欲しいところ。このエジプト王は、トゥーランドットの皇帝(テノール)と同様、かつてから強過ぎる歌手は登用しない傾向がありますね。ランフィスの妻屋も健闘、この役は先日のマイスタージンガーのポークナーのカナバスのようは地の深い声が正直欲しいですが、加藤宏隆などが合うと思うのですが、如何でしょうか。

 

新国合唱は流石のレベル、この日も聴かせてくれました。ベテランのカルロ・リッツィ、歌手に寄り添いながら音量コントロール長けた指揮者ですが、アゴーギクが少なく、たたみ込みもないので、やや安全運転系に感じることも多いのが正直なところ。この日は指揮者も良く見える席だったのですが、上手いなと感じるところもありましたが、特に金管やコントラバスの使い方はおっと思わせるところもありました。平均点が高い指揮者ということなのでしょうね。東フィルも初日の表現はあまり良くなかったですが、この日は健闘していたのでは?

 

直近2回の新国アイーダは正直ストレスが残ったのですが、この日はファルノッキアのアイーダと須藤のアムナズロの出来が良く、豪華な演出、そして及第点のその他歌手などが相俟ってよく楽しむことができました。もう一度21日に観る予定で、楽しみにしています、では。