2022年2月23日(水・祝)13:00 シアターコクーン

法策 後に 天日坊 中村 勘九郎
人丸お六 中村 七之助
地雷太郎 中村 獅童
猫間光義 市村 萬次郎
観音院/赤星大八 片岡 亀蔵
北條時貞 中村 虎之介
傾城高窓太夫 中村 鶴松
越前の平蔵 小松 和重
お三婆/鳴澤隼人 笹野 高史
久助 中村 扇雀

歌舞伎の挑戦という意味では、古典の中での進化も当然あるのですが、大雑把に形態という意味では、明治・大正・昭和初期の新作歌舞伎、猿之助のスーパー歌舞伎、海外ものの歌舞伎化(シェイクスピア、中国ものなど)、それに加えてコクーン歌舞伎ということになるの思います。その中で今後も継続していくのではと一番感じるのが串田演出のこのコクーン歌舞伎。斬新でケレンもあり、ストリートプレイの演劇要素がふんだんに散りばめられ、直接感情に訴えるテーマによる演目選定・創作。勘三郎が残した遺産の中でも筆頭に挙げるべきものだと思います。勘三郎が亡くなり、もうこのテンションでは無理かと何となく感じていましたが、勘九郎・七之助が見事に継承し、発展させてくれているのでは素晴らしい。三人吉三、昨年の夏祭浪速鑑も良かった。

 

さて、今年は天日坊、10年ほど前にも上演されたそうですが、それは観ていませんでした。河竹黙阿弥の若き日の出世作とのこと。天一坊に近い内容で、みなしごの方策がふとしたことから、ご落胤の証拠となる品を見せられ、保有していた老婆を殺し、そこから流転の人生が、、、というストーリー。俺は誰だぁ!誰なんだぁというアイデンティティを希求する物語、勘九郎は熱く演じていました。亀蔵や笹野の演技やギャグに感心・大笑いしつつも、昨年の夏祭のような感動までには至らない。コロナ禍で上演時間を短くするために、ただでさえ原作から半分の長さにカットしていたものを、更に30分短くしての上演ということで、物語の展開が流れなかった面があったのかもしれないですね。あと演技動作としては、いつもの串田節が効いていましたが、舞台装置、背景などが制約があったからなのか、(高いレベルの要求ではありますが)物足りなかさがありました。過去にあまりの名作に接しているので期待値が高まり過ぎているのかもしれません。でも、上述のように面白かったんですよ、では。

 

天日坊(てんにちぼう)
演出・美術の串田和美と脚本の宮藤官九郎によって練り上げられ、大好評を博した『天日坊』が10年の沈黙を破りついに幕を開ける!

 串田和美と十八世中村勘三郎が平成6(1994)年にスタートさせた「渋谷・コクーン歌舞伎」は、古典歌舞伎を現代に通じる新たな解釈を取り入れた斬新な演出で話題作を生み出してきました。第十八弾となる今回は、平成24(2012)年に上演され大きな反響を呼んだ『天日坊』。
 幕末より長らく上演されていなかった河竹黙阿弥の隠れた名作を、コクーン歌舞伎として現代に蘇らせ注目を集めた話題作。自らの運命を探し求め邁進する天日坊の姿は、観る人の胸に刺さり、感動を与えました。

 ふとしたきっかけから将軍頼朝の落胤になりすまし鎌倉を目指す法策(後の天日坊)。旅の途中で盗賊・地雷太郎とその妻お六と出会い、思いもよらぬ自分の運命を知る…。
 狙うは天下!若者たちは壮大な野望と純粋な希いを胸に疾駆する。彼らの人生を賭けた大勝負がはじまる—。
 個性豊かな俳優陣の熱演を、存分にご堪能ください!

 俺は誰だあっ!