2021年10月9日(土)12時開演

国立劇場開場55周年記念
令和3年度(第76回)文化庁芸術祭主催公演
近松徳三=作
通し狂言 伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)  二幕七場
                国立劇場美術係=美術

序   幕   第一場   伊勢街道相の山の場
            第二場   妙見町宿屋の場
            第三場   野道追駆けの場
            第四場   野原地蔵前の場
            第五場   二見ヶ浦の場
二幕目   第一場   古市油屋店先の場
            第二場   同         奥庭の場

 

福岡貢         中 村 梅  玉
藤浪左膳/料理人喜助  中 村 又五郎
油屋お紺        中 村 梅  枝
油屋お鹿        中 村 歌  昇
奴林平         中 村 萬太郎
油屋お岸        中 村 莟  玉
徳島岩次実ハ藍玉屋北六  片 岡 市  蔵
藍玉屋北六実ハ徳島岩次  坂 東 秀  調
今田万次郎       中 村 扇  雀
仲居万野        中 村 時  蔵
                 ほか

 

伊勢音頭は油屋店先の場だけ(仁左衛門、勘九郎)で、通しでは観たことがありませんでした。梅玉は襲名披露で初役で福岡貢を勤め、前回での国立劇場での通し公演でもこの役を勤めていたそうです。けれん味のない品格ある貢であり、変な力が一切入っていない晩年に差し掛かった梅玉の芸でした。存外に良かったのが、左膳と喜助の2役を演じた又五郎、最近引き締まったのか顔も精悍で、出番は少ないものの喜助の気風の良さが爽やかでした。万次郎の扇雀、言葉の響き、イントネーションは上方の香りがさっと舞台に流れました。お紺の梅枝、若い頃は顔の長さが目立っていましたが、年齢を少しづつ重ねて、一寸台詞廻しが泣きが入り過ぎと感じはしますが、伝統的なうりざね顔の女形になってきたと思います。歌昇は幼少期以外では初の女形で、悲しくもおかしみのあるお鹿で出演、苦戦していた様子ですが、舞台を盛り上げていました。秀調・市蔵のベテラン、味わい深い、舞台を質を上げるのはこのような役者でしょう。万野の時蔵、期待が大き過ぎたのか、一寸いじわるな面が出過ぎていたのが少しだけ残念。万野もどこか貢さんに恋している風情が少しだけスパイスとして入っていれば、、というのは贅沢でしょうか。1階席はそれなりに入っていましたが、2階席、3階席は空席も目立ちました。油屋店先の場での色々な台詞の意味が通しで観ることでよく理解できました。今後この演目を観る時の楽しみが増えました、では。