終夜

9/29(日)~10/27(日)

霧がかすむ夜。母の火葬を終え帰宅した、精神科医の男とその妻。 帰宅とともに前妻との娘からの電話が鳴り響く……
まともに取り合おうとしない男。それを責める妻。 そこへ、男の弟とその妻が訪れる。
同じ家に泊まることになった、不仲の兄弟。 家族の確執、喪失した青春、性的倒錯。 時間はジャズの調べと共に過ぎていく。
終夜、母の遺灰が見つめるなかで、 男女四人が迎える朝は―――――

風姿花伝プロデュース第一弾『ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる』(演出:上村聡史)で、数多くの演劇賞を受賞したスウェーデンの名匠ラーシュ・ノレーン83年の怪作、日本初演。

ラーシュ・ノレーン
演出
上村聡史
出演
岡本健一 栗田桃子 斉藤直樹 那須佐代子
この日はストレートプレイへ。シアター風姿花伝は女優の那須佐代子が主宰する劇場で、大江戸線落合南長崎駅から15分ほど歩いたところにあるビルの2階にある目白の120席ほどの小劇場。スウェーデンのノレーンという作家の作品。ストーリーは上記の通りで不条理劇ではなく、夫婦、親子、金銭欲、自己顕示欲、それいて一人だけではこころに渇いた風が流れる、最小限のセットで基本は小道具だけを使って進んで行きます。決して難解ではないのですが、中に入り込まないと、合計3時間を超える言葉の強烈な応酬についていけないかも。
 
最初は栗田桃子の演技が騒がし過ぎて、なんて感じていましたが、これがこの役柄というかキャラクターなんですね。新国のシェイクスピアシリーズで好きになった岡本健一は、この人の空気を纏いつつ、客観的にキャラクターを立たせる矛盾を見事に両立させていたように感じました。斎藤直樹は長身のスマートな見た目ですが、後半では妻の心が自分から離れたことでの苦しみを熱演、那須は清楚で従順な妻の変貌ぶりを大げさでなく、自然に演じていました。客席と舞台が数十センチで、前から2列目だったのですが、4人の俳優の汗や呼吸がそのまま伝わってきます。画面や中規模の劇場で見ていた人がここまで眼前にいると少しおかしな思いもしました。では。