ヴェルディ 歌劇ナブッコ
2013年5月25日(土)新国立劇場
【指揮】パオロ・カリニャーニ
【演出】グラハム・ヴィック
【美術・衣裳】ポール・ブラウン
【照明】ヴォルフガング・ゲッペル
【ナブッコ】ルチオ・ガッロ
【アビガイッレ】マリアンネ・コルネッティ
【ザッカリーア】コンスタンティン・ゴルニー
【イズマエーレ】樋口達哉
【フェネーナ】谷口睦美
【アンナ】安藤赴美子
【アブダッロ】内山信吾
【ベルの祭司長】妻屋秀和
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場の新演出のナブッコです。
ヴィックの演出はスカラ座のオテロが印象に残っていますが、
今回は東京での新演出ということで、この宗教が全面にでるオペラを
どのように扱うのか興味深々でありました。
唯一神は自然の力、人間の欲望は物欲(ショッピングセンターで
買い物に夢中になる人々)で表現されていました。
やや人が多すぎるキライはあったものの、
上記解釈を前提に観るとなかなか興味深いもので
解釈系の演出としては成功であったと言えるでしょう。
個人的には日本人がバビロニアの古代衣装を着て
不自然な演技を行うより、今回の演出の方が遥かに素晴らしいと思います。
さて演奏ですが、先ずはカリニャーニを称賛すべきでしょう。
初期のヴェルディのオペラに必要な生命力にあふれた指揮で、
やや煩くなるところはあるものの、東フィルに鞭を打ち、
あれだけ締まった音を出せる指揮者はそうそういないでしょう。
練習嫌いで有名だそうですが、細かいニュアンスを効かせる部分もあり
公演を重ねて演奏も深化してきたのでしょうか。
ナブッコのガッロ、新国津劇場の常連ですね。
登場のシーンはやや抑制的でありましたが、
後半の芯のある声での父親の哀しみが良く表現されていました。
コルネッティはふくよかな身体を少し持て余しているところはありましたが、
流石は迫力ある歌唱、低音と高音の響きが深さと鋭さを持っているところが
この人の強みでしょう、一方通常のソプラノとしての音域が意外に響かない、
メゾがベースのソプラノにありがちなところですが、
不満が出るほどではありませんでした。
フェネーナの谷口は確り聴くのは初めてだと思いますが、
なかなかの歌唱、ネームバリューある歌手に引けをとらない歌唱でありました。
ザッカリアのゴルニー、やはり低音はこれ位は響かないと、
ピッチがやや不安定なところもありましたが、存在感のある歌唱でした。
この演出の中で終始良心としての役割を演技でも確り果たしていました。
イズマエーレの樋口は情熱は良く伝わるものの、
やや叫び気味、日本人歌手にあり勝ちな歌唱スタイルで
この中では浮いていたのではないでしょうか。
女声は日本人歌手も相当レベルが高くなってきましたが、
男声はどうもしっくりくる歌手は少ないですね。。。
テノールでは市原太朗以外誰だろう?
合唱はレベルは高いのですが、いつもに比べてどうなのでしょうか?
男声がやや粗めに感じたのですが・・・。
絶対レベルは高いので満足感は十分ありました。
新演出のナブッコ、成功と言えるでしょう!
演出、歌手、オケのバランスが良い公演でありました。
カリニャーニの招聘は今後も続けて欲しいですね。
では。