お久しぶりです。嶺です。
スペインにいるとよく聞かれる質問がある。「スペインと日本の指導の違いって何?」だ。
私は指導の勉強の仕事をしている訳ではないので、正確な返しは出来ないが、こっちで指導者の勉強をしている方たちと関わったり、遠征の仕事などでスペインのチームの練習を見て感じた事がある。
自分主観の見方ではあるが、書いて見たいと思う。
大きな違いは3つあると思う。「文化」「目標」「身体能力」だ。ここで言う「文化」「目標」「身体能力」は全て指導という観点から見ている。
まず、「文化」に関してはスペインと日本では大分違いがある。例えば選手に関して言えば、日本では高校に入れば三年間はサッカーをする環境が保証される。クビなんてない。その環境は全ての年代で同じで、中学や大学も移籍なんてない。また監督も一緒で、今年結果が出なくてもクビはない。選手達は監督の戦術に合わなければ試合に出れない三年間を過ごす事になる。
ただ、スペインは違う。選手も監督もクビがある。先日エスパニョールのU-16の試合を見たが、そこで試合に出ていた選手は去年バルセロナに所属していた選手だった。年齢の若さは関係ないのだ。そこは実力社会で成り立っていて、日本とは違い、競争がある。監督に関して言えばプロ一緒である。やはり結果重視でビジネスと一緒である。日本の高校でも、コーチを外から呼んで強くして、子供達を呼ぶというビジネスモデルを作ろうと思えば出来るが、日本の教育という部分では好ましくないだろう。
二つ目はの「目標」はチームとしての目標である。スペインの街クラブのほとんどがトップチームを持っている。育成年代ではトップチームに上がる選手を育てるのを目標にしているチームがほとんどだ。
トップチームと同じ戦術を育成年代の全世代で行い、その中で突出した選手が上に世代に行ける。更に言えば、結果を出せば今のチームより規模の大きいチームに行く事も出来る。
日本ではほとんどの街クラブがトップチームを持っていない。なので先日行われた育成年代の国際大会で、日本のチームで確固たる戦術を持っているチームは無かったように思う。また、相手に対する対応力も低い。スペインのチームは例え身体能力で負けていても、組織で対応出来る戦術的知識があった。日本は個人で負けるとそこから面白いように崩されてしまう事が多かった。
ただ、日本では、トップチームがないチームほど個人を重視する為、チームに一人突出した選手が出やすい。戦術で劣る為に、最後はその一人の個人技に頼らなくてはいけない。それが高校からプロに上がる時に高校出身が多い理由なのだと思う。
最後の「身体能力」は、"日本人は小さくて弱く、外国人は大きくて強い"という違いではない。日本人は指導する時に日本人の特徴を伸ばすような指導をするべきだと思う。例えば先程述べた国際大会で、アフリカのアスパイアが育成年代の全てのカテゴリを制した。正に自分達の身体能力に合った戦術を行っていた。特に両サイドのウイングのスピードと、センターバックとボランチの体の強さは際立っていた。
日本人の特徴は俊敏性だと思う。それは全面に押し出すべきだ。スペインのチームとやった時も、日本人の俊敏性は格段に上で、スペイン人は守備のしつこさに苦労していた。前線からしっかり追えば日本のチームは大崩れする事はないと思う。ヨーロッパ相手にも十分戦える。
ユースの鹿島アントラーズなど、国際経験が多いチームはもう既に実戦し、ヨーロッパ相手にも戦える事が分かっている。日本が強くなる為には全ての年代で世界基準の指導をしなくてはいけない。その点で日本人の特徴を理解する事は必要である。
三つの違いを述べた上で、日本はスペインの指導の全てを真似する事はできないと私は思う。日本は日本的な文化の中でのサッカーの指導を行うべきで、現在の方向性は間違っていないと思う。現に高校や街クラブ出身の突出した選手が海外で多く活躍している。(長友、香川、本田、岡崎、内田、長谷部など…)
彼らは各カテゴリーで違った戦術を課せられ為、対応力もある。海外で活躍出来る要因だ。
しかしながら問題もある。代表では違った戦術で育った選手が集まる為に戦術を浸透させるのに時間が必要である。ザッケローニ監督がよく言葉にしている問題である。スペインではポゼッションサッカーを全ての選手が理解しているし、イタリアでも伝統的なカテナチオという戦術がある。ブラジルもイングランドも選手が変わっても共通理解がある。しかし、日本にはない。その為にザッケローニ監督は固定メンバーで戦う事が多く、一人の選手が抜けると機能しなくなる事が多々ある。
代表に目を向けると課題が残るが、代表クラスの選手は戦術を見て理解するくらいの戦術理解度を身に付けなくてはいけないということである。戦術理解度という部分では向上が必要かと思うが、日本の指導方針自体は間違っていないと思う。日本にも素晴らしい指導者が多い。
スペインには戦術理解度を高める指導が多く、日本は個人を高める能力が高い。スペインのいいところを日本の指導に当てはめていくという作業が、これからは必要なのだと思う。