三流魔法使いの日替わり日記

三流魔法使いの日替わり日記

適当魔法使いの鼠野太僧と、鼠の使い魔ネズミ子の掛け合い形式で、あれこれ発信していきます

 セイレーンとアマビエ






太僧:

 そういえば、セイレーンって、西洋の妖怪いるだろう?


ネズミ子:

 何ですか?

 藪から棒に……。


太僧:

 いやさ、ちいかわと言う可愛い絵とは裏腹に結構内容がえぐいアニメがあってな?

 あれの映画で、セイレーンが出てくるのよ。


ネズミ子:

 はあ……。

 それでセイレーンがどうしたんです?


太僧:

 うん、いちいかわのセイレーンが、どっちかと言うと、セイレーンと言うよりもアマビエだと思ってな?


ネズミ子:

 そうなんですか?


太僧:

 ああ、禍福をもたらす存在で、セイレーンのような一方的な害悪じゃない。


ネズミ子:

 すみません、私はどちらにも詳しくないんですけど……。


太僧:

 うん?

 セイレーンはともかくアマビエは日本の妖怪だろう?

 まあ、良いや。

 じゃあ、ちょっと説明しよう。


セイレーン

太僧:

 まずは、セイレーン。

 美しい女性の頭或いは上半身に、鳥または魚の下半身を持ち、美しい歌声で船乗りを誘惑する魔物。

 ……サイレンの語源でもあるな。


ネズミ子:

 ……曖昧過ぎません?

 上半身の件はともかく。

 鳥か魚の下半身って……。


太僧:

 そうだな。

 まあ、こいつは岩礁に注意しろって言う教訓譚が元だ。

 海の真ん中に魚や鳥が集まっている場所は、良い漁場であることもあるが、岩場になっていてj座礁の危険もあるってな。


ネズミ子:

 それで、魚や鳥と言うわけですか……。

 女は?


太僧:

 大量の鳥の鳴き声やざわめきが、女の歌声に聞こえたんだろうと思うぞ?


ネズミ子:

 いやいやそうはならんでしょ?!


太僧:

 あのな?

 海の上で、何日も禁欲生活をしていたオッサン達だぞ?

 そのくらいの聞き間違えはおかしくないさ。


ネズミ子:

 そんなものですか?



アマビエ

太僧:

 次いで、アマビエ。

 これは、妖怪にしては詳しい詳細があるぞ?

 1846年5月に、熊本県の沖に夜な夜な光の玉が現れ、役人が調査したところ、アマビエ或いはアマビコなる毛むくじゃらで下半身が魚の妖怪に会ったらしい。


ネズミ子:

 1846年って、鳥山石燕様の時代よりも大分後。

 徳川家慶公の時代ですね?

 あまり、記憶にないですね。

 天保の大改革の時期で騒がしかったですし、九州の妖怪目撃譚とか、話題にはならなかったのでしょうか?


太僧:

 と言うよりも、アマビエは、多分日本と交易を持とうとした西洋人じゃないかと思う。

 スペインとかだと、アマービレって人名は普通にあるし……。

 ただ、鎖国中だからな。

 不安にさせないために、役人達が言葉を濁したんだろう。


ネズミ子:

 なるほど、長い航海をしてきた西洋人なら髪も髭も相当伸びていたでしょうね。

 当時は、話題にならずに少し時間が経って、目撃者達の記憶が曖昧になってから広がったせいで、恐怖心から異形として定着したと……。


太僧:

 だろうな。

 海の妖怪と言うイメージが先行して、人魚とかも混ざっただろうし……。


ネズミ子:

 それで、そんな存在が、何故疫病封じに?


太僧:

 ああ、アマビエはしばらくの豊漁とその後に疫病が流行ることを予言したらしい。

 後、自分の姿を写した紙を持っていると疫病にならないとも伝えたと言うが……。


ネズミ子:

 どう考えても、偶々その後豊漁と疫病が流行っただけですね。


太僧:

 そうだな。

 加えて、役人は報告のために見た目を絵に描いただろう?

 その役人が疫病に掛からなかったんじゃないかな?


ネズミ子:

 偶然が重なったんですね……。


太僧:

 いや違うな。

 豊漁の後の疫病ってことは、処理しきれなかった魚とかを棄てていたんだと思う。

 江戸時代の田舎だと、腐った魚と疫病に関係があるなんて、分からなかったから。


ネズミ子:

 漁村の関係者ほど、病に掛かりやすいんですね?

 逆に役人は、漁村に定住していない可能性が高いですし……。


太僧:

 そういうことだ。

 絵を持つことで疫病に掛からないんじゃなくて、絵を持っていた役人が、疫病に掛からなかったから、アマビエの絵を持つと病気にならないと前後が入れ替わったんだろうな。


ネズミ子:

 なんかな……。

 厄除けって聞いていたのが肩透かしです……。


太僧:

 なに、鰯の頭も信心からって言うじゃないか。

 ……まあ、それくらい信心深い(用心深い)人間なら、普段から健康に気を遣っているだろうけどな。



余談(ちいかわ)

太僧:

 話を戻して、アニメのセイレーンは人魚と一緒に暮らしていて、その人魚を食べると不死になるらしい。


ネズミ子:

 ああ、八百比丘尼(やおびくに)ですか。

 それで、アニメのセイレーンをアマビエに、連想したんですね。


太僧:

 まあ、あれもな……。


ネズミ子:

 そうですね。

 タンパク質やミネラルが不足しがちだった他業種の人間に比べ、魚介類を食べる機会の多かった漁師や海女が健康で長生きだっただけです。

 伝聞と共に、大袈裟になり妖怪になるとは……。


太僧:

 うん、魚が食べたいな。

 夕飯は魚にしよう。


ネズミ子:

 良いですね!

 お寿司行きましょうよ!


太僧:

 いやいや、今日はパンガシウスをムニエルにでもしようと思うから。

 寿司はなし。


ネズミ子:

 主様のケチ!