おねがいダーリン

四十崎 緋衣のの葉


(二人)おねだりしてみてほしいの


(のの葉)ダーリン

あなたは私の言うこと全然聞かない

あれほど やめてって言った 煙草もお酒も

毎日二箱七缶一日たりとも欠かさず

肝臓やられてお釈迦になっても

看病してあげないんだから


ああ言やこう言う てこでもきかない

あなたのハートは 真っ黒です


(四十崎)言いたいことは 言わないし

(のの葉)行きたいとこから やりたいことまで

決めてる癖して だんまりさん

(四十崎)ねえ そんなの馬鹿みたいじゃない?

そう じゃない? じゃない? じゃない

{(のの葉)言いたいことあるなら

さっさと言えば?}


(四十崎)いつも思わせぶりな感じで

察してほしい感じで

わざと口にしないのずるくない?

(のの葉)馬鹿じゃないの?


(四十崎)おねがいダーリン 見て聞いて

欲しいのは 形のないもの

馬鹿にしないわ 見て聞いて

覗いてよ 瞳の奥の方

真っ直ぐ見つめて おねだりしてみてほしいの


ダーリン

私は あなたの気持ちを全然知らないわ

あれほど 健気に見つめてきたのに

今では すっかり知らんぷり

(のの葉)知らんぷり?

(四十崎)ていうか それって 胡座《あぐら》

かいてるだけじゃないんですか ぶっちゃけ


舌先三寸 あなたのおかげで

私のハートは ボロボロです


(のの葉)つれない時は つれないし

(四十崎)そっちが中々言い出さないから

いっつも私が舵取《かじと》りじゃん?

(のの葉)ねえ なんだか馬鹿みたいじゃない?

そう じゃない? じゃない? じゃない?

{(四十崎)そんなことしてて楽しいの?}


(のの葉)どこか 足元見てる感じで

値踏みされてる感じで

(四十崎)なにそれ

(のの葉)駆け引きやら勝ち負けじゃなくない?


(四十崎)そういう めんどくさいことしてるから

めんどくさいことになるんだよ


(のの葉)寡黙なダーリン ねえ 聞いて

切なさは 飾りじゃないのよ

よそ見しないで 逃げないで 触ってよ 心の奥の方

一瞬のことじゃない おねだりしてはくれないの?


言葉に出来ない臆病さは

強《したた》かさではないのよ

(四十崎)ほんとそれな

(のの葉)甘えてないで 口に出してよ


(二人)もう ちゃんとこっち向けったら


(四十崎)おねがいダーリン 見て聞いて

欲しいのは 形のないもの

馬鹿にしないわ 見て聞いて

覗いてよ 瞳の奥の方

(のの葉)寡黙なダーリン 寝てないで

暴いてよ 私の素顔を


(四十崎)おねがいダーリン

(二人)そばにいて

触らせて 心の奥の方 まっすぐ見つめて

おねだりしてみてほしいの


おねがいダーリン