色々酷い出来です。自己評価はDかE。

①は概括的記載は問題になりませんね…。

そのほか捜索差押の要件をしっかり押さえられていなかったことや、包括差押えについて「必要な処分」を書けなかったです。ボロボロ。

 

R3司法試験 刑事系科目第2問 (刑事訴訟法) 再現答案

[設問1]

第1.   ①の差押えについて。

1.     ①の差押えは本件住居侵入強盗という犯罪があると思料するとき(刑事訴訟法(以下略)189条2項)にする捜査であり、財産権、プライバシーという重大な権利利益の制約を伴う強制処分(197条1項但書)にあたる。

2.     強制処分法定主義(197条1項但書)、令状主義(憲法35条)の趣旨は、重大な権利利益の制約を伴う処分について、公平中立な第三者的立場にある裁判官の事前の審査を経ることで、捜査の司法的統制を確保することにある。

3.     そこで、捜索差押(218条1項)令状の効力の及ぶ範囲は、被疑事実と関連性のある公訴の提起追行に必要な証拠で、裁判官が事前に予定していた範囲であると解する。

4.     本件捜索差押許可状(以下「本件令状」という)において「本件に関係ありと思料される~」とする概括的記載があるが、捜査の流動的発展的性格から、「その他本件に関係すると思料される一切の物」といったような概括的記載も具体的例示に付加されたものであって、被疑事実と関連性が認められる範囲であれば許容されると解する。

 本件令状では「名簿~付属の充電機」という具体的例示があり、これらの物品であって本件住居侵入強盗と関係あると思料される物にに令状の効力が及ぶことは特定されていると考えられるから、このような記載も許容できる。

5.     本件令状の効力は丙組幹部丁の名刺に及ぶか。

(1)   まず、捜索すべき場所は甲乙がアジトとしており、乙名義でAビル21号室が借りられていたから、本件令状は乙の管理処分権が及ぶ同室を捜索「場所」として発布されたといえる。

(2)   また、捜索差押の対象者は乙であるところ、本件令状に基づき丁の名刺を差し押さえることができるか。

(3)   たしかに、丁は本件令状の対象者である乙とは別人である。しかし、本件住居侵入強盗には氏名不詳者が関与していたとみられること、甲が乙の背後には警察と敵対し捜査に一切協力しない指定暴力団である丙組が存在する旨の供述をしていること、本件犯行の手口は事前に電話で現金や、同居者の存在を確認した上で強盗に及ぶなど計画的かつ悪質なものであることから暴力団による組織的関与も伺われることから、捜索場所であるAビル21号室から発見されたこと「丙組若頭丁」と記載された丙組幹部丁の名刺は本件被疑事実と関連性があり、公訴の提起追行に必要な証拠であるといえるから、本件令状の効力が及ぶ。

6.     また、名刺は容易に処分隠匿が可能な証拠であり、差押えを認めなければ丙組の組織的隠ぺいなどによって丙組及び丁の関与を明らかにすることが著しく困難になると考えられるから、差押えの必要性もある。 

7.     よって①の差押えは適法である。 

第2.  ②の差押えについて

1.     乙が、「USBメモリの中身を調べずに全部持って行くのですか。パスワードは全部『2222』にしていますから、この場で確認してください。」と申し出ているのに、白黒2本のUSBメモリ合計2本をいずれもその内容をその場で確認することなく差し押さえたのは違法ではないか。

2.    まず、USBメモリは「電磁的記録媒体」に該当する。また、甲がアジト(Aビル21号室)には強盗のターゲットとなる人の氏名と電話番号が入った名簿データが保存されているUSBメモリがあり、その名簿にはVの情報もあるのではないかと述べていることから、同室から発見された白黒いずれのUSBにもVに関する情報が記録されている可能性がある。

3.     ここで、USBメモリには膨大な情報が記録可能である。その中には被疑事実と関連性のない情報が含まれる場合もあり、プライバシー等保護のために原則として内容を確認して差し押さえるべきである。

 もっとも、その場で確認すると捜索差押の目的、ひいては捜査の目的を達成することが困難になるような、特段の事情がある場合には内容を確認せず差し押さえることも許容される場合がある。 

(1)   まず、上述のようにUSBメモリには膨大な情報が記録されていることからその場で全ての情報を確認することができない場合がある。

(2)   また、USBメモリはその情報量に比して容易かつ迅速に内容を消去したり改変ができるほか、物理的に破壊するなどして破棄隠匿のおそれが高いものである。

 更に本件では丙組の組織的関与が疑われるから差押えの必要性が高かった。

(3)   なによりも、本件では甲の供述によれば、USBメモリには8ケタという複雑なパスワードがかけられており、一度でも間違うと初期化され証拠が隠滅されてしまうおそれがあった。

(4)   捜査官がそのパスワードを入力することは困難である。また、乙はパスワードは全て「2222」である等と申し出ているが、甲の供述するパスワードの桁数と異なることから、乙が証拠の隠滅を目的として虚偽の番号を申出ている恐れも十分にあった。

(5)   このような状況下では、白黒いずれのUSBにVに関する情報が記録されてるか、その場で確認することは著しく困難であり、パスワードの解析、解除等のできる設備の整った場所で内容を確認しなければ捜査の目的が達成できない特段の事情があったといえる。

 よって、本件では例外的に内容を確認せずに両方のUSBメモリを差し押さえることも適法である。

[設問2]

第1.  小問1

1.     本件メモ1は公判廷外における「書面」であるから伝聞証拠(320条)に該当し、証拠能力が認められないのではないか。

2.     320条の趣旨は伝聞証拠は知覚、記憶、表現、叙述の各過程に真実に反する情報が介入しやすく類型的に誤判のおそれがあることから、反対尋問等による信用性のチェックがない場合には証拠能力を否定することにある。

3.     したがって、伝聞証拠に該当するかは立証趣旨(要証事実)との関係で内容の真実性が問題となるかを基準に判断すべきである。

4.     本件メモ1の立証趣旨は甲乙間の本件住居侵入強盗に関する共謀の存在である。なお、共謀も罪となるべき事実であるから証拠能力があり適式な取り調べを経た証拠によって証明することを要する。

5.     では、本件メモ1は上記立証趣旨との間で内容の真実性が問題となる伝聞証拠に該当するか。

(1)   本件メモ1のないようは「V」は被害者V、「K町3-45」はVの住所、「夫と死別、一人暮らし、息子は県外」はVに同居者がおらず、V実際の生活状況と一致する記載である。また「S銀行2000万円 タンス預金500万円」は電話でVが相手方に伝えたVの財産と一致するし、「台所の食器棚」もタンス預金の隠し場所を意味する。更に「催涙スプレー、ロープ、ガムテープ、後ろ手」という記載も本件住居侵入強盗の手段と一致する。

(2)   また、甲が乙からVに関する情報や犯行に使う道具などについて印字された紙を見せられて説明を受けたと供述していることから本件メモがその印字された紙であると考えられる。

(3)   これらに照らせば、本件メモは上記のような記載内容のメモが存在し、甲が乙から本件メモを示して犯行の指示を受けたということをもって甲乙の共謀の存在を推認することができるから、内容の真実性が問題とならない非伝聞証拠であると解することができる。

よって、本件メモ1の証拠能力は認められる。

第2.  小問2

1.     小問1と異なり、小問2では甲が捜査段階において本件メモ2について全く供述をしていないから、上記の論理で非伝聞とすることはできない。

2.     そして、「乙から指示されたこと」として、概ね本件メモ1と同様の記載がある本件メモは共謀の存在を立証するために内容の信用性が問題となる伝聞証拠にあたる。

3.     そこで321条以下の反対尋問に変わる信用性の状況的保障がある伝聞例外該当性が問題となる。そこで321条1項3号の伝聞例外に該当しないか検討する。

(1)   まず、甲乙の公訴は併合審理されていないから、甲は被告人ではない。

(2)   同条項の「供述不能」は例示列挙であり、列挙事由と同程度に供述を得ることが困難であれば、供述不能に該当すると考える。

 本件では、甲は丙組からの報復等を恐れて、遮へい措置などをとってもなお乙や丙組の関与について「何と言われようと証言しませんし、今後も絶対に証言することはありません。」と述べており、誘導尋問などによっても証言をえることは著しく困難であったと認められるから列挙事由と同程度に供述不能であったといえる。

(3)   次に「犯罪事実の証明に欠くことができない」といえるかにつき検討すると、主観的要素である「共謀」については被告人等の証言以外に証拠が存在しない場合も多く、実際に小問2では小問1と異なり、甲の供述が得られないことから本件メモ2以外に共謀の存在を認定するための証拠はほぼ存在しない。

 したがって本件メモ2は共謀という犯罪事実の証明に欠くことができないといえる。

(4)   また「特に信用すべき状況」(絶対的特信状況)の有無は外部的状況によって判断すべきであるが、記載内容を外部的状況の資料として考慮することは可能であると解する。本件メモ2は共謀の有無という甲にとっても不利益な内容を甲自ら記載したものであって、絶対的特信状況が認められる。

よって本件メモ2は321条1項3号の伝聞例外として証拠能力が認められる。

4.     なお、甲は公判廷で上記のように述べていることから、乙及び丙組の関与を一切否定する趣旨とも考えられる。とすると、本件メモ2は甲の公判廷における証言とは実質的に異なる事実認定に結び付く自己矛盾供述ということもできるから、328条の弾劾証拠としても伝聞例外を認める余地がある。

5.     また、「乙から指示されたこと」と記載されていることから、再伝聞になるかとも思えるが、乙供述部分については本件メモ2の伝聞例外が認められれば小問1と同じ論理で存在自体から共謀を認定できるため、再伝聞とはならないと解する。

 

以上