要望をいただいたのと、少し息抜きをしたい関係もあってブログにまとめます。(講座へのアンケートも書かないといけないのですが←)

 

※前半【1】【2】は前置きです。ライフハックのみに興味がある方は【3】以降からお読みください。そして、この記事は自分の感情的な部分の記述が長いです。ライフハック部分だけに興味がある方は【3】【4】の①等の太字だけ読んでください

 

【1】ADHDという障害について。(※ご存知の方は読み飛ばしてください。自分は専門家ではないので誤った記載があるかもしれません。)

 自分はADHDという発達障害を持っています。既にご存知(当事者)の方には説明不要と思いますが、ご存じない方にざっくりとこの障害の特徴を説明すると①とにかく集中力がない(特に単純作業は地獄)②ケアレスミスがもの凄く多い③モチベーションが低い(先延ばし癖がある)④ワーキングメモリの機能が低い⑤順序立てて計画を立てられない(その上仮に立ててもその通り実行もできない)等といった特徴がある障害です。

 それくらいなら、誰でもあるよね?と思ったアナタは半分正解で、半分間違っています。

 上記①~⑤のような特徴や苦手意識を持つ人は少なくありません。実際のところ発達障害の定義自体を疑問視する声も医学界ですらあるようです。自分はADHDを障害障害とアピールする風潮は好ましいとは思っていません。

 実際にはこういった特性は白黒はっきり分かれるものではなく、グラデーションのようなもので、日常生活に支障が出る程度に顕著な場合に障害と診断されるような曖昧なものです。確定診断に至らないが、本人は困難を感じているいわゆるグレーゾーンと言われる方も多いです。

 ただ、脳の一部の機能の働きが弱いことや、知能指数の偏り等、一定の客観的(物理的)な判断指標もあることからこういった脳の特性を持っているために生きづらさを感じている人が一定数いることは確かなようです。

 そこで、自分としては「障害」と診断されなくても①~⑤のような点に困難を感じているのであれば、やはり何かしらの対処をしておいて損はないと思います。

 このブログではグレーゾーンの方も含めてADHD傾向の方へ、上記のような点に苦手意識を持っていた(いまだに持っていますし、克服できたとは言えません)自分が少しでも「普通」になろうとして取り組んできたことをご紹介したいと思います。

 ただ、ADHDと一口に言ってもその傾向は個人個人異なるもので、個性豊かです。自分も他の人のライフハックを試してみて上手くいったこともあれば、あまり効果を実感できなかったものもあります。それぞれの方が自分なりの対処法を見つける一助になればと思い参考になればという思いです。

 

【2】精神論ではどうにもならないことはある。

 自分としては、まずこの認識を持っていただきたいと思っています。

 受験業界には「他の人はもっと頑張っている」だとか「1日~時間はやるつもりじゃなきゃダメだ」とか「根性と気合があれば勉強ができる」だとかそういった精神論で語る人は少なくありません。

 そう言う方は実際にそのような気持ちを持つことで成功してきたのでしょうし、その叱咤激励をモチベーションに変えられる人もいるかもしれません。それ自体を全て否定しようとは思いません。

 しかし、少なくとも私(あえて我々と言ってもいいでしょう)は違います。先天的に、脳の機能の一部が世の中の9割近い人よりも劣っています。(詳細は割愛しますが血流不足や脳内物質の不足という物理的要因が原因です。)

 このように、努力ができるかどうかには先天的な素養が大きく影響しています。「才能なんて関係ない!努力すれば超えられる!」という言葉は努力できるか否か自体が才能依存であることを見過ごしています。

 「じゃあどうすれば努力できるんですか?」←「本気になってないからです!」

 大変失礼ですがこれでは自分にとっては何の解決にもなりません。そんな精神論は我々には何の意味もありません。(もっとも、こう言う方々もよくよく聞いてみれば自分が努力するために工夫をしていることが多いですが。)

 努力や集中ができないことは、自分の気持ちが弱いからではない。まずはこの認識を強く持ちましょう。後述しますが、気持ちの問題だと考えて、自分を追い込むことはこれらの困難を克服しようとすることにプラスに働くことは多くなく、むしろマイナスに働いてしまいます。怠惰だから悪いとは考えるべきではないです。(そう考えると話はそこで終わってしまいます。)

 対策はとにかく、物理的に、構造的にしましょう。以下では自分が取り組んできた対策を、有効だったと思う順番で紹介していきます。

 

【3】集中力を高めるには

 とにかく何かが気になって勉強が続かない。気付けばスマホをいじったり、漫画を読んだりしてしまう。「こんなことをしていちゃいけない…。」分かっていてもやめられない。気付いたら全然関係ないことを妄想して心ここに非ず。そんな自分と日々戦っていきましょう。

 

①診断を受けられるならADHDの診断を受けて自分に合う薬を処方してもらい、飲む。

 この後いくつかのライフハックをご紹介しますが、残念ながら薬を飲むことが最も劇的かつ即効性のある対処法でした。(ただ、副作用がかなりキツい薬が多いですし、合う人と合わない人がいます。)

 可能であればこれが最も手っ取り早い方法と言えるでしょう。

 

②視界に入るものをできるだけ少なくする。

 デスクの上には、「今使う物」だけを置きましょう。自分は短答演習なら多くても短答の問題集と、逐条式のテキスト、○×用のシャーペン、マーカー、定規、時計など。論文の問題演習ならシャーペンと六法。これだけです(これでも多すぎるくらいなので、シャーペンと問題集だけのことも多いです)。

 「参照できるように…。」と基本書、演習書、判例集等は置きません。視界に入らない本棚に入れておきます。必要な時だけ引っ張り出します。

 スマホは金庫の中です。音楽プレイヤーはイヤホンだけ付けておきますが、ポケットの中等視界に入らないようにします。

 加工ができるなら自宅の勉強机をブース状にするのもいいと思います。とにかく、視界に入るものを減らします。

 ADHD傾向の人は整理整頓が苦手な人も多いと思います。自分もその例に漏れず、気づくとデスク周りは台風の後のように散らかってしまいます。できれば1日の終わり、作業の合間に散らかったものを全て取っ払いましょう。(最悪視界に入らない状態にすればいいので整理整頓しなくてもいいので、自分の後ろ側にまとめてポイします。)

 

③音楽(インスト)を流してノイズをシャットアウトし、勉強モードのスイッチにする。

 一般には音楽は聴かない方が勉強効率が上がると言われています。しかし自分は、鳥の鳴き声、近所の子供の声、果ては風の音まで全てが気になります。自分の好きな音楽を流してできるだけ勉強するときはいつも同じ環境になるようにしていました。

 自分の場合、歌詞が入っている曲を聴くと文章が頭に入ってこなくなってしまうので聴く音楽はだいたいインストの曲にしていました。

 勉強モードに入るトリガーとしては、ガムを噛むことやミンティアを食べることも有効でした。

 

④とにかく手を動かす。

 当たり前のようでいて、気づくと忘れていることの一つですが、自分は手が止まっているときは基本的に勉強とは別のことを考えているか、勉強の内容が頭に入っていません。

 インプットをするときも、問題を解くときもとにかく手を動かします。理由は単純で手を動かしていないとすぐ眠くなってしまうのと、文章であればどこを読んでいたか分からなくなってしまうからです。

 とにかく大事そうなところや覚えておきたいところにはマーカーで線を引きます。記憶するためではなく、眠くならないため、どこを読んでいるか認識するためにマーカーを引きます。これをしないと1頁も読んでないのに気づいたら30分も経っていたなんてことが日常茶飯事です。30分ぼーっと眺めてるくらいならところ構わずマーカーで線を引きながら文字を追ったほうがまだマシです←

 一応線を引くときに大事そうな部分かそうじゃないか考えているだけでも、どうでもいい(余談ですが自分は勉強中に突然、クトゥルフ神話のことを考え出したりすることがあります。)ことを妄想することが減らせます。

 

計画は立てない。立ててもできるだけ大雑把に。

 これも、一般には計画は立てたほうがいいと言われると思います。

 しかし自分の場合、まず計画を順序立てて考えるだけでかなりの時間を浪費します。更に計画を立てたところでどうせ守ることができません。その上、目の前のタスクに向かっているのに「これが終わったらあれをやらなきゃ」「ああ、~時までにやるつもりだったのにできなかった計画を修正しなきゃ…」雑念だらけです。

 こんな自分が計画を立てることにどれほどのメリットがあるでしょうか。無いです(反語)。そういうスマートな勉強は要領がいい人がやることです。要領の悪い自分はせいぜい「今日はこの科目をやろう」「答案を何通か書こう」これくらいで十分です。

 目の前に置いてある「今やるべきこと」をひたすら片づけていきます。勉強は仕事と違って納期までに全ての作業を終わらせる必要はないです。優先順位だけ決めておけば「いつまでに何をどんな順序でやる」といったことを考えなくてもどうにかなります。(どうせ過去問演習は何周もするわけですし…。)

 これがスマートなやり方でないことは百も承知です。しかし、残念ながらスマートに計画を立ててやろうとすることは自分にとっては作業効率を下げるだけで、ほとんどいいことがないわけですから計画は立てない方が効率的だと割り切ります。

 

⑥1日にやる科目を増やさない。

 ⑤とだいたい同じですが、やる科目を増やすと現在やってる科目とは別に「さっきやったあの科目のここが気になる…。」「次の科目は何をしよう…。」とか考え始めてしまいますし、②との絡みで机に複数科目の教材が散らかったりします。

 あまりいいことがありません。せいぜい1日2科目にします。(ただ、同じことばかりやっていると飽きてしまうので同じ科目の中でやることのバリエーションはいくつか用意しておいてもいいと思います。)

 あとは勉強場所を変えて(自分は机が二つあって一つが民事系用、もう一つが公法系、刑事系用です。)特定の科目をやってるときには他の科目が浮かんできにくいようにします。

 同様に問題演習でその学習のテーマや課題を設定するときも増やし過ぎないようにします。自分の場合、意識して一度に設定し消化できる課題の量はせいぜい2,3個です。それ以上の課題やテーマに気付いたとしてもそこは流します。意識が分散してどれも改善できない事態になりかねません。

 

⑦疲れ、眠気を感じたらすぐ瞑想や昼寝をとる

 コンディションが悪いときに無理して勉強を続けても、非効率的なので体調が悪いときや、疲れた時はすぐ休みます(ただでさえ脳が疲れやすいしメンタル弱いので。)ただし、昼寝は遅い時間にしてしまうと、夜の睡眠の質が下がるので夕方以降は瞑想することにしていました。

 瞑想は様々なライフハック本で集中力を高めたりメンタルを調整するために共通して推奨されていた(医学的にも信憑性が高そうでした。)ため取り入れています。

 

⑧時間認識力を上げる

 上に上げた「今やるべきもの」の他に自分が机に常に置いているものがあります。それは時計とタイマーとストップウォッチです。

 ADHDは時間認識能力が低いので、常に時間の経過を意識するものを置いておく必要があります。(これも実をいうと時間の進みを気にして注意散漫になることはあるのですが、試験本番でも時間を気にしてしまう状況に置かれるのでその対策も兼ねています。)

 時計は特に語ることはないのですが、タイマーは60分(短めに設定した論文の時間制限、インプットが長くなり過ぎないようにする時、短答を60分でどれだけ解けるか用)15分(答案構成用、休憩用)を用意します。

 ストップウォッチは青(勉強している時間を計る用)、赤(サボっている時間を計る用)の二つを用意します。

 (ぶっちゃけると自分は注意欠陥がひどいので当然、しょっちゅうタイマーとストップウォッチのスイッチを押し忘れるのですが、それはそれで無意識的にサボってることを自覚できるので、ないよりマシくらいに思っています。)

 

…他にもありますが、だいぶ長くなったので集中力を上げる方法はこの辺で終わりにしておきます。次はモチベーションを上げる方法について書いていきます。

 

【4】モチベーションを上げるには

 やる気が出ない。やらなきゃいけないのに先延ばししてしまう。作業に対する抵抗感が強く逃げたくなってしまう。そんな自分と日々戦っていきましょう。

 

①“できない”自分を責めない。

 これが一番大事です。合言葉は「反省はするけど後悔はしない」です。自分は専業受験生ですが一日8時間を超えるほど勉強できる日はほとんどありません。本当はこの倍くらい勉強したいと思っています。しかし「勉強時間が増えない自分はダメだ」と思ってしまうと結局のところメンタル的に落ち込んでしまい、8時間の勉強すらできなくなってしまいます。また、無理して身の丈に合わない量の努力をしても長続きしません。

 自分が尊敬するプロゲーマーの著書に「毎日10年間継続できる努力がその人にとっての適正な努力量」といったような記載がありました。自分はそれを参考に考えた時「自分ができるのは1日6,7時間が限界だな。」と思いました。

 他の人が10時間、20時間勉強していて凄い、働きながらでも勉強してて偉いとか思うことは多々あります。でもそれはその人ができるだけであって、自分をネガティブにとらえる必要はありません。大事なのは自分が継続的に、メンタルバランスを崩さず最大の(適度な)パフォーマンスを継続できる努力の量はどれくらいかということだけです。

 また、仮に最終的な目標が1日15時間だったとしても、気の持ちようだけで1日5時間しか勉強できなかった人が突然15時間勉強できるようになるとは思えません。自分は、専業受験生になった当時軽い鬱状態だったのもあって、4時間程度の勉強すらままなりませんでした。

 そこから少しずつ勉強時間を増やせるように慣らしていって、今7,8時間は頑張れるかな…といった程度です。

 どうしてもやりたくない。辛いと思ったときは思い切って完全にオフにしましょう。メンタルに不調を起こしてしまうよりは長期的に見れば1日や数日サボった方がいいことが多いです。

 

②心理的なハードルを下げる(目標は低ければ低いほどいい)。

 「~をやらなければいけない」と思ったときに抵抗感が強い場合、そのハードルをできるだけ下げます。

 自分は最大限ハードルを下げる時「今日は机に座ったら勉強は終わりでもいい」くらいまでハードルを下げることもあります。次のハードルは「本を開く」です。その次のハードルは「5分だけ問題を解く」です。段々と机に着くのが習慣になり、勉強することへの抵抗感が弱くなってきます。論文のフル答案を書こうと思って嫌だなあと思ったら答案構成をすることにします。答案構成をするのに慣れてきたら、フル答案を書くことへの抵抗感が薄れてきます(せっかく答案構成したんだから文章にしてみたいと思えたら儲けものです。)。

 小さな達成感を積み重ねていきましょう。大きな目標を掲げて挫折してモチベーションを下げるくらいなら、机に座るだけの方がマシです。

 ADHD傾向の人はやり始めることへの抵抗感が強い反面、一度始めると、かえって止まらなくなる傾向にあります。(これを比喩してある書籍ではADHDが進み始めるのに時間がかかるが、止めるのが大変なタンカーに例えられています。)

 とにかく、ほんの少しでいいから動き出すためにハードルを下げまくりましょう。

 ちなみに、人間が一日にできる意思決定の回数(力)は有限(睡眠で回復する)なのだそうです。

 結局のところハードルを下げて習慣化することでこの意思決定の回数(それにかかる力)を減らすことができ、重いタスクに取りかかることができるようになっていきます。

 

③頑張った自分への小さなご褒美を用意しておく。

 自分は1時間くらい勉強したら炭酸飲料(日替わりでいろんな炭酸飲料を飲んだりするのを楽しんでいました。)を飲むことや漫画、雑誌を1冊だけ読む(読み始めると最後まで気になってしまうことがあるので長編のものは避け、せいぜい3巻で完結するようなものを選んでました。)のを自分へのご褒美にしていました。

 ADHD傾向の人は脳の報酬系の機能が弱い傾向にあります。(詳細は割愛しますが、ざっくりいうと試験に合格したときの喜びといった遠い未来の報酬をイメージすることが難しく、目の前の楽しみといった短期的な報酬の方に目を奪われるということです。)

 小児ADHDの行動療法のひとつにトークンエコノミーというのがあります。ADHDの子供が好ましい行動をした場合や、自制できた場合などに親や教師などがコインやシールをあげて、それが貯まったらお小遣いやお菓子をあげるといったことで、短期的な報酬を与えてそれをモチベーションに最終的な目標までに小分けにした作業をこなさせるというような方法です。

 成人の場合は、自分自身でこういったご褒美を用意しておくことになります。嗜好品でもいいと思いますし、15分以内程度で終わる息抜きでもいいと思います。

 

④できるようになったことを書きだしてみる。

 自分はこれはかなり大事なことだと思っていて、論文の自己添削をするときってできなかった部分だけを書きがちなのですができるようになったことも挙げるようにします。

 これによって自分の成長を実感することができて自己肯定感が高まりますし、良かった点や定着度を認識できることで成長できます。

 失敗から学ばないのは論外ですが、自分は失敗と成功両方から学ぶことができる人が一番成長できるのだと思います。

 日記を作って毎日通信簿をつけるのもいいと思います。(自分は長続きせず、最近怠っていますがかなり効果的だったと思います。また再開したいです)

 

⑤血糖値コントロールを試してみる

 これは、効果を実感できたかというとはっきり分からないのですが、いくつかのライフハック本に共通して記載されていたことなので取り入れています。大雑把にいうと食事の際に糖質を若干少なめにして、食事の合間にナッツ類等のGI値が低い食品を摂取することで血糖値の波を小さくすると、タスクに取り組む力が高まる。というような話です。

 気になった方は調べてみていただければと思います。

 

【5】終わりに

…以上が、ざっと自分が取り組んできたライフハックというか勉強法というか…になります。

 ライフハック本から取り入れたものから、それをアレンジしたもの、ほぼオリジナルに近いものが入り混じっています。

 この他にも試して上手くいかなかったものや、忘れてしまったものがいくつもあると思います。

 自分は仕事をしていた時なんとかしてADHDを克服したいと思い、試せるものはとにかく手当たり次第に試しました。そして、残念ながら完全に克服することはできませんでした。

 今でも「普通に」努力ができないか調べたり、他のADHDの人の工夫を参考にしたり、試行錯誤する日々です。おそらく一生ああでもないこうでもないと頭を悩ませることになるのだろうと思います。

 それでも上記のような取り組みで少しずつできることが増えてきているなと実感することがあり、予備試験合格はそのうちの一つでもありました。

 この記事が、自分と同じような苦手意識を持っている方に少しでも有益であることを祈ります。

 もし、「こんな方法、おすすめだよ!」ってものがあったらぜひコメントお願いします。試してみます!!