俺は静かに後ろを向いて傅いた。

地面を強く睨みながら。

「・・・・あらぁ、唇から血が出てるわよ。どうしたのかしら・・・ねぇ?」

「───ッ・・・・」

悪魔が俺の頭を上から強く踏み潰した。

「痛がりもしないのね、可愛げのない」

痛みなんか感じない。

そんなもの、とうの昔に捨てたから。

「そんなに嫌なら契約書を破ればいいのよ?」

くすくす笑って悪魔は俺のポケットに入っていた契約書を取り出し、

俺の手の中に入れた。

「ただし、貴方の妹がどうなっても知らないけど。」

俺は契約書を強く握り締めた。

こんなもの破り捨てられたらどんなにいいか。

だけど、こんな紙切れ一枚でメアリーは・・・・・

クソ、クソクソクソクソクソッ・・・・・・・

俺がこんな場所に連れてこなければメアリーは今笑っていたハズなのに!

何で俺はこんなに・・・・・。

「ここだぞ!」

城のような建物の長い長い螺旋階段を上って、やっとたどり着いたのは、

時計の針の秒を刻む音が大音量で聞こえる最上階の部屋だった。

その真ん中に大きな椅子が────

「メアリー!!!」

メアリー、メアリー、メアリー

ようやく見つけた、俺の只一人の家族。

一ヶ月前と全然かわらない、綺麗に伸びて、柔らかそうな髪。

ただメアリーの目の瞳孔は開ききっていて、

まるで本当に死んでいるかのようだった。

お人形のようにピクリとも動かず、ただただ座っている。

服も依然とは違う、絵本にでてくるお姫様のようなドレス。

そして小さな頭に乗っている・・・・・妖艶なティアラ。

憎らしい・・・。あのティアラさえなければ、メアリーは・・・

メアリーはティアラによって精神が飛ばされている、らしい。

黒ツインテールがいっていた。本当かは定かではないが。

俺はメアリーの手をとって、俺に引き寄せた。

「ごめんな、メアリー・・・ごめんな・・・・・・」

「久しぶりの再開、嬉しいわねぇ?」

俺の声を掻き消すように、後ろから声がした。


俺がしなければならない仕事は至ってシンプルなものだった。

それはこの遊園地のような場所の監視と悪魔の身の回りの世話。

ただ、俺にとって妹をあんな姿に追いやった憎むべき相手の

世話をするなんて、死ぬよりも残酷で、苦しかった。

それに、たまに『世話』とも言えない死ねるほど苦痛なものもある。

肉体的、精神的に追いやられる仕打ちをうけることもある。

俺は何度も死のうと思った。

だけど、俺は耐えられた。

なぜなら、俺には妹との面会が一ヶ月に一度だけ与えられているからだ。

そして、今日がその日だった。

「・・・・見回りも終わっただろ。早く妹のとこにつれてけ」

俺はいままで早歩きだった足を止めた。

「痛っ!」

すると黒いツインテールは今まで急ぎすぎていたのか、

自分の身体にブレーキをかけきれずに少し俺にぶつかった。

「もっとゆっくり歩いて!速いぞ!」

・・・・汚い

「いいから早く俺をつれてけ。」

「せっかちだな!まぁ、いいぞ!付いて来い!」

今度は俺が黒ツインテールに此れほどかと思うほどゆっくり付いていった。