北朝鮮に実の娘さんを拉致された父親の気持ちは、わしは北朝鮮に実の娘を拉致されたわけではない父親だが、分かる。
 なぜなら元嫁、義父母、そのほかくそべんごしやさいばかかんなど、そろいもそろってわしの意を汲まぬ者達がわしの実の娘や実の息子三人を拉致したも同然だからだ。
 そこに違法行為がなければ、そこに殺人未遂がなければ、そこに飲酒運転がなければ、わしは貧乏だからという理由だけで便宜的に引き剥がされたのであれば、拉致も同然なんて、憎しみを込めた言い方はしない。
 嘘、違法行為、彼女らがそれらを幾重にも編んで引き剥がし、わしの精神的ケアもなんらおこなわず、わしを攻撃した反省もなくそうしているからには、わしは怒りと無念と…拉致された父親と同じ気持ちになるのだ。

 さてこの国に、わしのような無理やり嘘までつかわれて引き剥がされた父親、乃至母親はおそらくとてもたくさん居る。子供を引き剥がすことが職業法律家たちや面会交流をさせるNPO法人などの仕事になってしまっている…食い扶持や生きるうえでの建前になってしまっているから、若者たちが結婚に怯えるほど大勢いる。

 こんな日本国において、いったいぜんたい、誰が 「拉致はいけません!」と声を上げられるというのだ??

 日本国内も、存外北朝鮮と変わらない部分がある。片親親権制度はまさにそれで、我々には北朝鮮を侮蔑して嘲笑う資格は無いのである。

 わしは、北朝鮮の拉致問題に声を上げるよりは、いまここにある国内の拉致問題に喘ぐので手一杯なのである。


 しかし逆に、わしは何故、北朝鮮の拉致問題に対して、声を上げたことは無かったのだろうか?これには一考の余地がある。

 わしは北朝鮮の拉致問題に対して声を上げたことが無かった。それよりも先に為さねばならぬことがあるという気持ちでばかりいた。
 わしは日本人の、人気商売をやりたい身としては、香港、チベット、ウイグルの問題に対して文を綴ったほうであろう。むろん、それよりも自転車考のほうが忙しいと言わんばかりであるのは文字数から言って明らかに表明しているのだが、北朝鮮の拉致問題については、一切触れてこなかった。
 何故?

 おそらくわしは北朝鮮に同情していたのである。もしも横田めぐみさんが生きていて、無理やりだとしても北朝鮮に人生を得て、経て、結婚までして、もはや北朝鮮人になっていたのだとしたら…。貧しくて孤立しがちで軽蔑されがちで中国にもロシアにも挟まれていてほんとうは自由と誇りとを発揮したいのにできない北朝鮮に横田めぐみさんが同情し、そこに生き続けているのだとしたら…。
 わしはそうおもうと、なんとも言えない気持ちになった。もしわしが拉致されたなら、そういう生き方をしていたかもしれないからだ。


 国内にも実子拉致問題はある。多数ある。横田さんたちはそこに着目して声明を上げたことがあったろうか?


 拉致は良くない。
 わしは声を上げられる。
 拉致は、国内だろうと国外だろうと良くない。

 わしはそのようになら、ふつうに声を上げられるよ。