俺は僕の頃からずっと、自分自身に厳しかった。
瘡蓋を剥がす癖を治したし、爪を噛む癖をやめた。その調子で、痒いからって掻くことを許さないし貧乏ゆすりも許さないし、ゆらゆらしない、ごろごろしない、いつもなにか求め、気を引き締め、目的以外の癖とおぼしきものは片っ端から消してきた。ひとたび仰向けで布団に入ると寝返りを打つことさえも許さなかった。
でもここいらで自分自身のすることを、どんなちいさな癖でも褒め尽くしてみようと思った。
自分自身をあますところなく肯定してみようと思った。
弁護士や民生委員を名乗る者たちに嫁はすっかり洗脳され、三つ子の大変さに乗じてオレの監護権と親権を強奪した、カネのためなら飲酒運転と不倫を不問に伏すような悪党どもが、それらの行為について裁判官のお墨付きを獲得しようかというところ。
こんな状況においてもオレは殺人犯にならないでいる。他人も自分も殺さずにいる。
当たり前のことを、どんな危機的状況においても継続できるのは、非凡なことだ。
オレはオレを褒めよう。
素晴らしいぞ。
偉いぞ。
オレは自分自身のすべてを肯定する。
もちろん、人生初の感情だ。